ほかの本を読む楽しみ
本を務めているのは障害・マイノリティなどが中心と聞き、私自身もはじめはなんとなく暗いイメージを持って抵抗感を覚えていましたが、実際はいろいろな方がいて個性豊かでした。エネルギッシュでポジティブな方も多く、つらいこともありながら人と関わり、前向きに生きていく姿勢や、少しでも変えていこうと考える生き方は、話せば話すほど通ずる箇所があります。
書庫での会話や休憩時間にほかの本を読むことで、知らないことを知る機会ができました。それは私にとって大きな楽しみで、いつもできるかぎり予定を優先してヒューマンライブラリーに参加しています。ここで得た経験から私は「多くの社会問題はつながっている」と考えるようになりました。
さまざまな人と対話をしていくなかで「共感してあげられない」といわれることがあります。しかし、共感なんてしなくていいと私は思っています。無理に共感をしようとするからこそ、枠を相手に押し付けて、誤解したり度合いを見誤ってしまうのではないでしょうか。
多様性というのは「あなたと私は違う」ということだと思います。これだけさまざまな生き方をしている人がいるのだから、違っていいのです。「こういう人がいる」「こういう考え方がある」ということを、“ただ受け取る”ことが大事だと思います。必ずしも“受け入れる”必要はありません。そのうえでまた距離を取るという選択をすることもできます。それは友だちの話を聞いているときだって同じです。
自分と違うと感じる人にも、さまざまな側面があります。違うからといってすぐに線を引かずに、同じ場に一緒にいたり話したりしてみることで、共通点が生まれたり共通項を見つけられるのではないでしょうか。コミュニティは「あなたと私は同じ」ということから生まれます。多様性とコミュニティは実は逆の側面のある概念ですが、違うものを“ただ、いったん置いておくこと”が両立する一歩なのではないでしょうか。その一歩としてヒューマンライブラリーに足を運んでみるのはいかがでしょうか。