社会

女性リーダーを増やすなら、まず出産育児で退職・閑職に追い込まれない環境を

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 大手飲料メーカー・キリン株式会社の人事総務部の社内実験「子育てパパママ擬似体験」について、828日付の朝日新聞が記事で伝えた。

「子育てパパママ擬似体験」は、体験者6人が“共働きで小さい子供を育てている”設定で、勤務時間や残業回数や呼び出し電話への対応など“敢えて”制限のかかった状況で1カ月間、仕事をこなす――といったものだ。発案したのは、キリンビール・キリンビバレッジ・メルシャン3社で働く女性社員数名で、「将来の子育てへの不安」を抱えていたことから、働くママの擬似体験をすることで仕事と子育ての両立の大変さを実感・理解できたら、と思いついたという。この社内実験は、来年1月より本格的に導入されるとのことである。

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 かねてから、私はキリンに対して“女性の活躍に積極的”な企業イメージを持っていた。企業サイト内でも、「多様性の尊重」として、“女性の活躍推進”や“ワークライフバランス”に取り組んでいること、妊娠・出産・育児や介護を行う従業員へのサポートを充実させていることなどが紹介されている。

 しかし、公表されているデータによると、女性リーダー(管理職と総合職の役職者)の比率は、2006年に1.7%(40人)だったのが、2016年には5.0%(116人)まで増え、2021年までには女性リーダーの比率を12.0%(300人)まで伸ばす方針であるという。思わず目を疑った。目標値が、12.0%。現在わずかに5.0%……。思いのほか少ない。

 キリングループにおける女性社員の割合を、厚生労働省がまとめた女性の活躍推進企業データベースにて確認してみた。

 まずキリン株式会社・キリンビール株式会社・メルシャン株式会社の、<労働者に占める女性労働者の割合>は、正社員22.5%、非正規社員25.6%。8割方が男性の職場ということになる。正社員も非正規社員も、女性労働者の割合は2割強で、男性労働者の割合が圧倒的に高い。ちなみに<男女別の育児休業取得率>は、正社員で男性20.9%、女性100%となっているが、非正規社員のデータはない(すべて201512月末更新データ)。

 キリンビバレッジ株式会社での<労働者に占める女性労働者の割合>は、正社員(転勤あり)14.3%、正社員(転勤なし)33.3%、非正規社員28.3%となっていた。<男女別の育児休業取得率>は、正社員で男性20.9%、女性100%で、やはり非正規社員のデータはない(すべて201512月末更新データ)。先の3社と比べると女性労働者の割合は高いものの、それでも3割程度である。正社員(転勤あり)はいわゆる総合職ということになるだろうが、とりわけ低い。

 2015年12月時点で、4社とも正社員であれ非正規社員であれ、女性労働者の割合は3分の1にも満たない。しかし、企業には20代から50代まで広い世代の社員がいる。新卒採用情報を見ると、キリン株式会社は2016年度:男性46人・女性35名、2015年度:男性44人・女性39人、2014年度:男性47人・女性32人。キリンビール株式会社は2016年度:男性10人・女性0人、2015年度:男性8人・女性4人 、2014年度:男性8人・女性2人。キリンビバレッジ株式会社は、(男性) 2016年度:男性5人・女性6人、2015年度:男性8人・女性9人と、新卒採用では、男女差の開きがそれほどは大きくない。こうした中で、女性の定着率が低い(出産などを契機に多く辞めていく)ために、全体の男女比率が歪になるのだろうか。だとすれば、リーダークラスの女性を増やすには、新聞で紹介された「子育てパパママ擬似体験」のような試みによって、女性の定着率をまず高めることが確かに必須なのだろう。

中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

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