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近道を探す努力は惜しまない。「良妻賢母」にとらわれた半生から解放された『85歳のチアリーダー』滝野文恵さんインタビュー

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いい世の中になったよね

――もし今、滝野さんが30代の自分に会えるとしたら、どんな声をかけますか。

滝野 「働け」って言うかも。長い間、「良妻賢母」への思いが強かったんです。やっぱり戦中派だからかな。私の女学校の友達なんかは、「こんなに勉強したのに、家事や子育てばかりで生かせていない」と悩んでたんですけど、当時の私は「子育ては大事だよ」と女性が外で働くことに批判的でした。

父の会社で週二回働くことになって、その時も罪悪感を持ちながらやっていましたね。家事や育児の手を抜いたらダメだって思っていて、晩御飯が一品減ってしまうかも、鍋ものを出したら手抜きなんじゃないかとか。誰も文句を言っていないのに、私が勝手に思い込んでいました。

やっぱり昔の女性は大変だったと思いますよ。半数の女性が、できるもんなら離婚したいと思っていたんじゃないかな。勝手にそう決めつけていますけど(笑)。

男性は、女性が外に出て働くことを嫌がるし、夜に外出しようもんなら「俺の飯はどうなるんだ?」という感覚。一人で食えよって感じですよね。助けてほしいとは思わないけど、せめて自分のことくらいしてほしい。

50代で家を出てから一人で生活していますが、すごく気楽ですよ。食べたいときに、食べたいものを食べる。自分の分だけつくればいいんですから。寝たいときに寝ることもできます。30歳年下のお金持ちとなら再婚するかもしれません(笑)。ふふふ、都合いいでしょ。

でも時代は変わっていますよね。昔のように男は家に帰ったら煙草を吸って、何もせずにテレビを見ていたらいい時代じゃない。ジャパンポンポンの練習は月曜の夜、週に一度なのですが、最初のうちは夫が反対する人もいました。でも今は「自分でご飯たべてね」と抜けられるようになりました。いい世の中になったよね。

88歳で舞台からは引退?

――本の最後にジャパンポンポンの引退を考えていると書かれていて驚きました。

滝野 2020年に、ジャパンポンポンの25周年記念のチャリティーショーが行われている予定です。その時までには、ショーから引退しようと思っています。だって88歳よ、見たい?

――えー、見たいですよ。

滝野 私は見たくないな。これは私個人の美学です。練習は続けるかもしれませんが、舞台に立って人様に見せたくないんです。足も上がらなくなってくるだろうし、ぼけてくるだろうし。今だって、身体が固くなって、覚えが悪くなっているのを感じています。

こういうことをしていると、「100歳までチアをやってください」と言われてしまいますが、勝手に決めつけないでほしいですね。自分のしたいことをして、楽しく人生を終わらせたいんです。

でも、娘にはあんまり「そういうこと言わないほうがいいよ」と言われています。なにが88で引退だよ! まだまだいける! と88歳になった私は意外と思っているかもしれません(笑)。それは、その歳になってみないとわからないな。
(取材・構成/山本ぽてと)

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山本ぽてと

1991年、沖縄県生まれ。大学卒業後、WEBメディアにて勤務。退職後、インタビュー、構成などで生計を立てる。

twitter:@yamamotopotato

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85歳のチアリーダー