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”経血漏れ”が原因で自殺や解雇 “経血”は“鼻血”と同じと心得よ

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Photo by Mate Marschalko from Flickr

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 先月末、インドで13歳の少女が経血の漏れを教師から叱責され、自殺するという事件が起きた。

 2カ月前に初経が始まったばかりの少女は、教室で経血が漏れていることに気がつき、女性教師にトイレに行きたいと伝えたが、教師は男子生徒らもいる前で、少女が経血で椅子を汚したことを激しく叱責し、ナプキンの代わりに当てるようにと雑巾を渡した。その後、少女は校長室に連れて行かれ、校長からもたしなめられたという。

 4日後、少女は「もう死ぬしかありません。これまで私は怒られるようなことをしたことがあったでしょうか? どうしてこんなことで叱られるのかわかりません」という遺書を残して自殺した。

 「血の穢れ」を根拠とした月経不浄視は世界各地に見られるが、インドの農村部には、特に根強く残っている。月経中の少女は学校を休まなければならない地域もあるのだが、この少女が暮らすタミル・ナードゥ州のパーラヤンコタイは、都市化が進んでいるため、月経中であっても男子と机を並べて学ぶことができたのだろう。しかし、初経期の少女にとっては珍しいことではない経血漏れによって、命を絶つことになってしまった。

 同じく先月、アメリカで経血漏れが原因で解雇された女性が、生理現象を理由に解雇するのは人権侵害にあたるとして、「アメリカ自由人権協会(ACLU)」()の協力のもと、訴訟を起こしている

 女性は、「911」(警察、消防、救急の電話番号)の通信指令係として勤務していたが、2度にわたる経血漏れで椅子やカーペットを汚し、「高いレベルの衛生と、清潔できちんとした身なりを保つことに失敗した」という理由で解雇を言い渡された。

 仕事が忙しすぎて、または集中するあまりトイレに立てないということもある。たしかに、血液を含む経血は感染症を媒介する危険性があり、「衛生」的とは言えないが、そういう意味では鼻血と同じである。職場で鼻血を出したために解雇されたという話は聞いたことがない。

 4月には、『2017年ニューヨーク国際オートショー』で「ヒュンダイ」のコンパニオンとして働いていた女性が、経血でコスチュームを汚してしまい、解雇されている。派遣会社が彼女に伝えた解雇の理由は、「ヒュンダイ側が月経中の女性の起用を好ましく感じていない」というものだった。それが本当にヒュンダイの見解であるならば、今後はコンパニオンに閉経後の女性を採用するしかない。

 女性たちに月経中は働くなというのは、かなり無理がある。こういう要望がまかり通るようになると、仕事を得るためにピルで月経をコントロールすることが当たり前になってしまうだろう。

 以上の経血漏れ事件は、氷山の一角である。自殺はしないまでも、学校で経血漏れを経験し、恥ずかしい思いをした少女や、経血漏れが原因で仕事を失った女性が、全世界に大勢いるに違いない。好んで経血を漏らす人などいないのに、理不尽な話である。

 生理用品の性能は、国や地域によって差が大きいが、例えば日本では、1960年代に使い捨てナプキンが普及する以前、経血漏れはよくある粗相だった。生理用品の進化が経血、そして月経という生理現象を不可視化したのである。

 これについて、一部の布ナプキン信奉者が、「使い捨てナプキンの登場によって、月経という女性の身体的特性が否定された」と述べているが、それは言いがかりというものである。女性たちは長い間、経血を適切に処置する方法を切望し、それを叶えたのが使い捨てナプキンなのである。

 生理用品の進化によって、経血は不可視化されたが、月経がなくなったわけではない。よくある粗相たまにしかない粗相になったに過ぎない。たまにしかないため、過剰反応してしまうのだろう。経血漏れに対しては、当事者の女性も周囲の人たちも、血液であることには十分留意しつつ、淡々と処置すればいい。そう、鼻血と同じように。

)アメリカ合衆国の「権利章典」で保証されている「言論の自由」を守ることを目的とした団体。

田中ひかる

1970年東京生まれ。著書に『月経と犯罪――女性犯罪論の真偽を問う』(批評社)、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)、『生理用品の社会史――タブーから一大ビジネスへ』(ミネルヴァ書房)など。

田中ひかるのウェブサイト

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月経と犯罪―女性犯罪論の真偽を問う