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【第15回】トランス男子のフェミな日常「これも『おもてなし』?」

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 北海道や沖縄では「外国の方が運転しています」というステッカーがレンタカーに貼られている。そんな記事を先日「Japan Today」で見た(英語よ)

 外国人がレンタカーを借りて事故を起こすことが多いからとの理由で、絵柄はなかなかチャーミング。きっと純度100%の好意から生まれたものだろう。しかし、案の定というか、記事についているコメントをみると、この「おもてなし」を見て気分を害したり、レイシズムじゃないのかと指摘したりする声もあがっている。

 ステッカーを見て「不慣れなドライバーに親切にしよう」と思う人もいれば「事故ったときはこいつのせい」と思う人もいるだろう。泥棒が見たら「よし襲ってやれ」と記号になるし、日本で生活している外国人の優良ドライバーからすれば「おいおい、外国人=ヤバい運転ってことかよ」と腹立たしい。受け取る人によってメッセージはまったく変わってくる。

 私としては、不慣れなドライバーにはみんな「初心者マーク」を渡したら良かったのではないかと思う。どうしてことさら外国人を「わたしたち」とは違うもののように強調するんだろう。日本に暮らしている「わたしたち」の中には、すでにいろんなバックグラウンドの人がいるのに。

 別のところでは「介護中マーク」を普及させている人たちの記事も見た。妻を介護するために女性モノの下着を買いに行ったり、女性トイレに一緒に入らざるを得ない夫たちに好評だという。これがあれば変態扱いされずに済む、とのこと。ここでも「マークかぁ」と思わざるを得なかった。

 2020年の東京オリンピック。あるいは超高齢化社会やらグローバリゼーションやら。今この国は多様性について揺れている。異なった人たちをそれぞれ異なったように、きちんとおもてなしできるようにハッキリ目立たせる「マーク」はきっとものすごく便利なのだろう。しかしLGBTの運動をやっていると「目に見えないものへの想像力」やら、「人にはそれぞれ事情と尊厳があり、他の人とちがっているからといって困った人だとか、おかしな人だとか決めつけるべきではない」ことなどが重要なテーマになってくる。昨今は、LGBTが使いやすいトイレとしてレインボーのマークをつけたり、半男半女のアイコンをつけたりする向きもあるが、あまり好きじゃない。まるでこっち側とあっち側を分けられているみたいだから。

 以前、このコラムで「多様性を尊重するのには引き算の発想が大切だ」と書いたけれど、増えていくマークもまた、昨今あふれる足し算の発想なのだと思う。多様性への自覚を高める方法としてマークがあり、一方ではマークによって分かりにくくされるものもある。

 マークを作る運動もいいけれど、マークを不要にするためにはどうしたらいいかという議論ももっと増やしたい。

遠藤まめた

1987年生まれ、横浜育ち。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をもとに10代後半よりLGBT(セクシュアルマイノリィ)をテーマに啓発活動をはじめる。主にLGBTの若者支援や自殺予防に関わる。著書に「先生と親のためのLGBTガイド 〜もしあなたがカミングアウトされたなら」(合同出版)ほか。

twitter:@mameta227

サイト:バラバラに、ともに。遠藤まめたのホームページ

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先生と親のための LGBTガイド: もしあなたがカミングアウトされたなら