私は性暴力の被害者だけど、被害後の周囲の対応のおかげで、恋愛もセックスも嫌いではありませんでしたし、性的な娯楽コンテンツも嫌っていません。
性被害の現状は伝えたい。でも、腫れもの扱いされやすく、傷ついてかわいそうな人間、暗くて怒っている人間、真面目なことしか考えていない公的な人間というイメージに押し込められてしまうのが苦しい。私は自分が持つ“性被害当事者”以外のパーソナリティをもっと出していきたかったし、性被害というとどうしても暗くネガティブなイメージになり聞く方も身構えてしまうのも変えたかった。前向きで楽しい発信をしたかったのです。
娯楽コンテンツはあくまでエンタテインメントであり、知識をつける場ではありません。しかし現状では、そこ以外に性の知識を得る機会がないことが性暴力につながっているのではないかと考えました。
そして私はエロゲは好きですが、たとえポジティブな内容でも、セックスが大好きな人が発信する情報やAVなどの娯楽コンテンツの話題は身近に感じられないことも多くありました。
一口に性といってもジェンダーやセクシャリティ、セクシャルヘルス/ライツ(性の健康や権利)、恋愛やパートナーシップ、コミュニケーション、セックス、エロの文脈など、さまざまなものがあります。性は誰しもが密接に関わるもので、その生き方にも大きく影響します。
キラキラとラッピングされる性、セックス
性に関する情報にはもともとエロやセックス自体が好きな人が集まりやすい傾向がありますし、エンタテインメントなので過激になりやすいです。発信をしているなかには性の探求に人生を賭けたいという方、オープンで積極的な方も多くいます。
しかし私は恋愛やセックスはそこそこ好きではありますが、人生においてその優先度が特別高くはないし、オープンにしたいわけでも、そうした話題がほかの話より特段好きなわけではなく、過激な内容は興味深くはありますが抵抗もあります。
またエロの情報を楽しんでいる人の多くは、下ネタとしてテンションを上げて笑いにしないと性の話題を語れないのです。
エロの文脈でない女性向けのセックス、性の情報は、「愛されるためのセックス」「セックスでキレイになる」といったものがあふれています。また「子宮は高次元からのエネルギーを受け取っている」など、セックスや性を神聖視することで女性の自己肯定感を高めているものもあります。
もちろん恋愛にセックスが関わることは多いですし、子宮を含め、性に関わる心身の健康は大切です。触れにくい話題に関心を持ってもらい、前向きに伝えるために工夫したメッセージなのだと思います。人を追い詰めたり、間違った知識でないかぎりはさまざまな語りがあっていいと私は考えています。