連載

生理用品、隠したい?隠したくない? 月経の“恥ずかしさ”をめぐる問題

【この記事のキーワード】
生理用品、隠したい?隠したくない? 月経の恥ずかしさをめぐる問題の画像1

Photo by Lara604 from Flickr

 月経(生理)はシモの話であるせいか、普段あまり話題に上らない。しかし前回触れた「『汚物入れ』の名称をめぐる問題」や、「『月経』の呼称をめぐる問題」など、意外と論点に富んでいる。

 今回は、「生理用品購入時の『不透明袋』をめぐる問題」について考えたい。ナプキンやタンポンを買うとレジで「不透明袋」に入れられるが、これにも賛否両論あるのだ。

  「不透明袋」にもいろいろある。一時は、スーパーマーケットもコンビニエンスストアもドラッグストアも、生理用品を買うと、まずはそれらを小さめの紙袋に入れてから、他の商品と一緒に通常の「半透明」のレジ袋に入れていた。

 それはおそらく、今のようなポリエチレン製のレジ袋が登場する以前、スーパーマーケットでレジ袋として紙袋が使われていた時代の名残だったと考えられる。

 レジ袋が紙袋からポリエチレン製の袋に変わったのは、1970年代のことだが、この頃はまだコンビニエンスストアや現在のような大型ドラッグストアは登場しはじめたばかりで、生理用品を買いたければ、スーパーマーケットか薬局へ行くのが普通だった。

 余談だが、1961年に発売された元祖使い捨てナプキンの「アンネナプキン」の取り扱いは、薬局とデパートだけだった。これに対して、1963年に参入した大成化工(現ユニ・チャーム)は、当時日本で登場しはじめたスーパーマーケットにナプキンを卸したことが、成功への第一歩となった。

 レジ袋が紙袋だった時代は、生理用品のみならず他の商品も外側からは見えなかった。しかし現在のような半透明のレジ袋が使用されるようになったため、隠したい商品だけ紙袋に入れるようになったのである。

 いくつかのドラッグストアに問い合わせたところ、隠したい商品には、生理用品のほか、コンドームと育毛剤が該当するとのことだった。

 現在では、スーパーマーケットとコンビニエンスストアが、小さな紙袋に入れてから通常の半透明のレジ袋に入れ、ドラッグストアは隠したい商品を買った客には、「不透明のレジ袋」を使うという形が一般的である。「不透明のレジ袋」の色は黒だったりシルバーだったり、店によって異なる。

 さて、生理用品が当たり前に不透明袋に入れられる今日にあって、「『不透明袋』をめぐる論争」はいつも不要派から持ち上がる。単に「紙袋は資源の無駄なので要らない」という人もいるが、

「月経は恥ずかしいことではない。だから生理用品も隠す必要がない」というポリシーのもとに、不要論を唱える人もいる。

 たしかに月経という生理現象を恥じる必要はない。しかしだからと言って「生理用品も隠す必要がない」と思える女性はどの程度いるだろう。冒頭に書いたように、月経はシモの話でもあり、生理用品から経血という排泄物を連想されるのが恥ずかしいという女性も少なくない(私自身は「経血=鼻血」論を唱えているが、鼻血が恥ずかしいという人もいるだろう)。

 これについて、「同じ排泄物に関わるものでも、オムツを買うときは丸見えだ」とか「トイレットペーパーも丸見えだけど恥ずかしくない」という意見もあろうが、生理用品が外から見えると恥ずかしいという人は、おそらく生理用品をオムツやトイレットペーパーと同等には捉えていない。どちらかと言うと、下着に近い感覚なのではないだろうか。ショーツやブラジャーを買ったとき、透明の袋に入れられるということは、まずない。

 生理用品が入った紙袋がレジ袋の中に透けて見えることや、不透明レジ袋を持ち歩くことの方がかえって目立つから恥ずかしい、という意見もある。そういう人たちは、他の商品で生理用品を隠したり、マイバッグを持参したりしているようだ。

 たしかに不透明袋を持っていると、「何か恥ずかしいものを買った」と詮索されないとも限らない。その点、レジ袋を不透明袋で統一し、何を買おうと不透明袋に入れる某ドラッグストアの対応が、最も実際的である。

 店側が生理用品を不透明袋に入れることについて「月経をあからさまに表現することを憚る風潮を作り出している」という意見があるが、店側は、さまざまな価値観に対する最大公約数的なサービスをしているに過ぎない。生理用品を不透明袋に入れないことで文句を言う客もいるだろう。そういう客に対して「月経は恥ずかしいことではありませんから、生理用品も堂々と持ち帰ってください」とは言いづらい。

 かりにドラッグストアやスーパーなどが、「月経をあからさまに表現することを憚」っているとしたら、あんなふうに溢れんばかりの生理用品を陳列棚に並べたりするだろうか。

  「生理用品は隠すべきではない」という人や、「紙袋は資源の無駄なので要らない」という人は、レジでひと言「見えても構いません」と言えばいい。そういう人たちが増えれば、いずれ生理用品も他の商品と同様に扱われるようになるだろう。

田中ひかる

1970年東京生まれ。著書に『月経と犯罪――女性犯罪論の真偽を問う』(批評社)、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)、『生理用品の社会史――タブーから一大ビジネスへ』(ミネルヴァ書房)など。

田中ひかるのウェブサイト

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

生理用品の社会史: タブーから一大ビジネスへ