連載

教育無償化が争点のひとつとなっている選挙を前におさえておきたいこと。日本の女性は教育の恩恵を社会に手渡し過ぎている。

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まとめ

 日本の女性の高等教育の収益率は、先進国では極めて特殊な所に位置しています。OECDのレポートも指摘しているように (OECD 2017 P120) 、これは世界で最も高い高等教育の私的負担と、税制・労働市場の状況から引き起こされているものです。

 今回の選挙では、高等教育の無償化が一つの争点になっています。そもそも教育の無償化には教育の公平性や質の問題があります。さらに、学費よりも放棄所得の方が圧倒的に大きいので、学費を無償化しただけでは、日本は高等教育の私的負担について世界で最も高い国の一つのままであることに変わりありませんし、それでもなお政府負担は先進諸国の平均よりもだいぶ下のままです。現状を是正するためには無償化ではなく、無償化に必要な予算を超える額を使って、貧困層や不利な背景を持つ子供達が完全に無償で高等教育にアクセスできるための奨学金と給付金の拡充と、この連載で指摘してきた様々な女子教育の問題を乗り越えるためのインセンティブとなる奨学金と給付金の拡充を考慮すべきでしょう。また税制改革や労働市場改革にも乗り出す必要があります。

 とくに女性に関して言うと、私的収益率が低く、社会的収益率が高いにもかかわらず、政府は待機児童の問題にも、女性のひとり親の貧困問題にも、十分なリソースを割いておらず社会的収益を女性に還元していません。一体、女性が高等教育を受けたことによる社会的収益はどこに消えているのでしょうか?

 なぜこのような状況が放置されているか、一言でいえば、この状況を放置しても問題ないと政府や社会がたかをくくっていて、女性をコケにしているからではないでしょうか?

 私は自分に娘が出来たとき、こうした日本の現状からその子を守るために、二重国籍にしてあげようと考えて、結婚後に留学して、その国で子供をもうけようと計画してました。今年の1月に結婚し、この9月からアメリカの大学院の博士課程で教育政策の研究をしています。日本の失われた20年間や少子化対策における無策さから、女性を取り巻く環境はそう簡単には変わらないと判断して、「逃げる」という選択肢を取ったわけです。

 ただ、こうした「逃げる」という手段はあまり一般的ではないでしょう。残された道はコケにされ続けるか、戦うか、です。政府や社会と戦う手段は様々だと思いますが、やはり選挙というのは民主主義国家において最も重要な手段です。こうした状況を変えるために重要なのは声をあげ、行動で示すことでしょう。女性が不利益を被るということは、その家庭も不利益を被るということです。性別問わずみなで声を上げることが必要だと思います。自分に娘が出来たら、その子が20歳になって国籍選択を迫られた際に、誇りを持って親と同じ国籍を選んでくれるような日本になってくれるよう、微力ながら私も日本の教育団体の支援などをしていますが、そんな日本になるために一人一人の声が政治に届けられるよう、個々人が選挙にしっかりと向き合ってくれることを願っています。

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畠山勝太

ミシガン州立大学博士課程在籍、専攻は教育政策・教育経済学。ネパールの教育支援をするNPO法人サルタックの理事も務める。2008年に世界銀行へ入行し、人的資本分野のデータ整備とジェンダー制度政策分析に従事。2011年に国連児童基金へ転職、ジンバブエ事務所・本部(NY)・マラウイ事務所で勤務し、教育政策・計画・調査・統計分野の支援に携わった。東京大学教育学部・神戸大学国際協力研究科(経済学修士)卒、1985年岐阜県生まれ。

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幼児教育の経済学