社会

銃による死者1日92人〜銃大国アメリカのリアル

【この記事のキーワード】

5歳児が2歳児を射殺

 上記データの「殺人」に含まれない殺人事件もある。

 2013年、ケンタッキー州のある家庭。母親がほんの数分、目を離した隙に、5歳の男児がライフルで2歳の妹を撃ち殺した。ライフルは男児が誕生日のプレゼントとして受け取ったものだった。5歳児に妹を殺す意思などもちろんなく、ライフルで遊んでいる際の出来事だった。ライフルに弾が込められていたことなど5歳児が知る由もなく、親も気付いていなかった。この事件は不運な「事故」として扱われ、逮捕者は出なかった。

 だが、この事故で使われた子供用のライフル「クリケット・ライフル」を販売しているキーストーン社に注目が集まった。子供が家庭内で親の銃を見つけ、遊んでいるうちに兄弟姉妹や友人を撃ち、死なせてしまう事故はたびたび起きているが、「子供用のライフル」による事故は銃社会アメリカにもショックを与えた。同社は子供用の小型のブルーやピンクのライフルや、コオロギ(クリケット)の形をした射的などを販売している。事件直後は「子供用ライフル?!」と驚嘆の声も出たが、同社は現在もクリケット・ライフルの販売を続けている。

 日本人なら親が幼い子供に銃を与えることにかなり驚くだろう。同様に、筆者のように銃規制法が厳しいニューヨークなど米国北東部の、特に都市部の住人にとっても驚きだ。そこには米国内部における文化と歴史の大きな隔たりがある。

 アメリカはヨーロッパからの入植者が開拓した国だ。ネイティヴ・アメリカンを駆逐し、厳しい自然環境の中で野生動物と戦い、狩猟によって食料を得、大陸を切り開いた。のちには英国と戦って独立を勝ち取り、やがて奴隷制度を賭けて国が南北に分かれて激しく戦った。これらのどの場面にも銃が必要不可欠だった。銃はアメリカの歴史、伝統、誇り、愛国心を象徴するものとなった。

 ハンティングは今も伝統として行われ、親から子、子から孫へと受け継がれている。したがって子供も銃を手にする。女性も含めて大人は銃を複数所持し、気に入る銃があれば買い足し、または買い換える。銃の売買はひんぱんにおこなわれ、銃砲店だけでなく、量販店の店頭にも並ぶ。ネット販売もあれば、個人間での売買もおこなわれる。ある銀行が口座開設の景品として銃を付けたこともあった。大規模な銃の見本市も開かれ、イベントとして楽しまれる。

 州によっては歩道や店舗などでライフルを肩に担ぐなど、「他者から見えるように持ち歩いてもよい」とするところもある。周囲にとっては非常な脅威に映るが、当人は銃を愛好し、プライドとして持ち歩くのである。

 こうした銃の擁護派が銃所持の絶対的な拠り所とするのが、「人民の武装権」を保証する合衆国憲法修正第2条だ。

「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない」

 修正条項が制定された1791年当時、建国の父たちが現在の「アサルト・ウェポン」(強力な殺傷銃。後述)を想定していたとは到底思えないが。

1 2 3

堂本かおる

ニューヨーク在住のフリーランスライター。米国およびNYのブラックカルチャー、マイノリティ文化、移民、教育、犯罪など社会事情専門。

サイト:http://www.nybct.com/

ブログ:ハーレム・ジャーナル

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

ボウリング・フォー・コロンバイン デラックス版 DVD