「#MeToo」で声を上げる女性たち
ワインスタインの行動は業界では広く知られていた。女性たちとのホテルでの「ミーティング」の設定をするのは本人ではなく、秘書だ。過去に8度も被害者の女性との示談をおこなっている。女優たちは「ワインスタインに気を付けろ」と密かに忠告し合っていた。しかしハリウッドにおけるワインスタインの影響力があまりにも大きく、誰も声を上げることができなかった。
英国のベテラン女優エマ・トンプソンは、ワインスタインは「セックス中毒などではなく、捕食動物だ」とした上で、しかし、これはワインスタインのみの問題ではないと指摘。「力の平衡を欠くシステム」の問題であり、女性や、仕事を得なければならない立場の者など弱者は獲物になり続けると発言。
一連の騒動を見た女優のアリッサ・ミラノは、15日の午後に以下のツイートをおこなった。
「もし、性的にハラスメント、もしくは暴行されたすべての女性が “Me too”(私も)と書けば、問題の深刻さを人々に伝えることができます」
この呼びかけに数多くの女性、そして男性も続々と応え、瞬時にムーブメントとなった。
女優アナ・パキン「Me too」
女優デブラ・メッシング「Me too」
女優マーリー・マトリン「私は14歳、相手は36歳だった。私はろう者だけど、沈黙はあなたが私から聞く最後の言葉」
ミュージカル『ハミルトン』の男優ハビエル・ミュノス「Me too. ゲイの男性からの応答があるかはわからないが、しかし起こった。何度も」
翌日、女優のリース・ウィザースプーンは「ELLEウィメン・イン・ハリウッド・アワード」のステージで自身の体験を語った。「16歳の時に監督に暴行された」「そのことを語ることはほとんどせずにきたが、多くの勇気ある女性が声を上げている今、大きな声で語りたい」
ジェニファー・ローレンスも同じ演台に立ち、「プロデューサーから2週間で15ポンド減量せよと言われた」「女性プロデューサーに、私よりもっともっと細い5人の女性と一緒に裸で並ばされた」と、性的ハラスメントは女性からもなされることを指摘した。
17日、レイプ・サバイバーであることを公開している女優ガブリエル・ユニオンが朝のニュース番組に出演し、忘れられない恐怖と、声を上げることの重要さを訴えた。
エマ・トンプソンが言うように、自身の立場を利用して多くの女性を身体的、精神的に傷付ける男はハリウッドにまだまだいるはずだ。他の業界にももちろんいる。だからこそ影響力のある女優たちが堂々と体験をシェアし、警告を発することは大きな意味がある。その勇気に触発される女性たちも声を上げることが可能になるからだ。同時に「自分の体験を言えない人、準備ができるまで言う必要はない」と、傷が深過ぎ、語ることができない女性への思いやりも女性側から発せられている。
ハーヴェイ・ワインスタインという怪物の存在は無数の女性とハリウッドに計り知れないダメージを与えた。ワインスタインを業界から完全に葬り、ただし教訓は忘れずに記憶し、語り継ぐことが映画界に限らず、すべての女性の未来を変えるのではないだろうか。
(堂本かおる)
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