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PMS(月経前症候群)と日本人の不幸な出会い

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Photo by Historias Visuales from Flickr

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 PMS(月経前症候群)とは、月経前に現れる頭痛、腹痛、浮腫みといった身体的不調や、不安感、憂鬱などの精神的不調を指す。

 月経前に不調を感じる女性は多いが、当たり前のこととして長年放置されてきた感がある。それがここにきて急速に市民権を得つつあるのは、前回触れたように、PMSに効果があるとされる市販薬やサプリメント、グッズが登場しはじめたこと、つまりはコマーシャリズムと無関係ではない。

 テレビの健康番組なども、PMSを取り上げるようになってきた。しかし、頭痛や腹痛、浮腫みといった一般的な症状よりも、「死にたくなるほど落ち込む」とか凶暴化するといった極端な精神症状ばかりを重視する傾向がある(前回の『あさイチ』の例)。

 なぜ日本では、PMSの精神症状ばかりに関心が注がれるのだろうか。

 それは、PMSという概念が日本に移入された経緯と関係が深い。

 1950年代にイギリスで確立されたPMSという概念が、日本で認知され始めたのは1980年頃のことだが、その話に入る前に、明治時代以降、広く信奉されてきた「犯罪における月経要因説」について触れておきたい。

 日本では、明治時代に「血穢(出産や月経の穢れ)」に基づく慣習(物忌みや月経小屋など)が法令で廃止されると同時に、西洋医学に基づいた月経観が移入された。それは、“女性は月経があるがゆえに脆弱で不安定だ”という考え方で、女性の犯罪や自殺も月経時に多いとされていた。

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田中ひかる

1970年東京生まれ。著書に『月経と犯罪――女性犯罪論の真偽を問う』(批評社)、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)、『生理用品の社会史――タブーから一大ビジネスへ』(ミネルヴァ書房)など。

田中ひかるのウェブサイト

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月経と犯罪―女性犯罪論の真偽を問う