社会

米兵の妻に「夫は戦死も承知で入隊」~嘘に嘘を重ねるトランプとホワイトハウス

【この記事のキーワード】
米兵の妻に「夫は戦死も承知で入隊」~嘘に嘘を重ねるトランプとホワイトハウスの画像1

Photo by Diego Cambiaso from Flickr

 10月4日、アフリカのニジェールで4人の米陸軍兵士が約50人のISISに待ち伏せ攻撃されて亡くなる事件が起こった。うち3人はその場で亡くなり、ラ・デイヴィッド・ジョンソン軍曹(25)が行方不明となった。捜索の結果、軍曹は48時間後に遺体で発見されたが、事件から20日が経つ現在も詳しい経緯は発表されていない。

 遺体は17日にジョンソン軍曹の故郷フロリダ州に戻ってきた。米国大統領は米軍の最高司令官も兼ねるが、トランプはその日までに事件の経過説明も戦死兵に関する公式コメントも発せず、強い批判を浴びていた。批判をかわすためか、ジョンソン軍曹の妻で妊娠中のマイーシャ・ジョンソンさんに電話を掛け、「あなたの夫はどういうことになるか承知の上で入隊していたのだ」と、驚くべき無神経なセリフを吐いた。この件は瞬く間に大炎上するも、トランプとホワイトハウスは「そんな発言はしていない」と否定し、かつ嘘を塗り固めるために次々と新たな嘘を重ね、現在にいたるまで激しい非難を浴び続けている。

嘘(その1)

 10月初頭の事件直後、トランプ政権は何の公式発表も行わなかった。政府としての発表など待たずにあらゆることを自身の個人アカウントでツイートしまくるトランプも、この件についてはまったく触れず、あいかわらずNFLの選手が国歌斉唱時に跪くことへの不快感、廃止したくてたまらないオバマケア、ハリケーンによって壊滅状態となった米自治領プエルトリコへの支援を永久には続けられないことなどについてツイートを続けていた。だが、いちどきに4名の戦死はトランプ政権となって以来はじめてのことであり、かつ事態の詳細も発表されないことにメディアが苛立ち、批判が徐々に厳しくなった。

 10月16日、そうした批判に腹を立てたトランプは事件の詳細は語らないまま、「オバマは戦死兵の遺族に電話しなかった」と、いわゆる逆切れ発言を発した。いつものことながら、強引にオバマ元大統領への批判にすり替えたのだった。

 トランプはさらに、現在トランプのもとでホワイトハウス主席補佐官を務めるジョン・ケリーを担ぎ出した。ケリーは元将軍であり、やはり兵士だったその息子はオバマ政権下の2010年にアフガニスタンで戦死している。トランプはその件を持ち出し、「ケリー将軍に聞けよ。彼がオバマから電話を受けたか。オバマのポリシーなど知らんがね」とうそぶいた。

 ホワイトハウスはメディアからの「当時、オバマ大統領はケリーに電話したか否か」の質問は無視し、ケリー主席補佐官への直接の質問も封じてしまった。だが、オバマ夫妻が戦死兵の遺族を招く戦没将兵追悼記念日(メモリアル・デイ)の朝食会にケリー夫妻が招かれていたことがメディアによって報じられた。

 さらに現役時代のオバマ大統領は歴代大統領の中では際立って多くの時間を傷病兵の慰問に当てていたことを記した1年前の記事も出回った。記事ではウォルター・リード陸軍病院で義足の兵士とともにエクササイズするオバマ元大統領の写真が使われ、兵士のコメント「この日のことは死ぬまで忘れない」が添えられている。

嘘(その2)

 嘘をついた途端に「事実報道」によって旗色が悪くなったトランプだが、オバマ元大統領への謝罪はもちろんおこなわず、代わりに「オバマは頻繁に慰問しなかったと聞かされたんだ」と、名前のない他者に責任を負わせた。

1 2 3

堂本かおる

ニューヨーク在住のフリーランスライター。米国およびNYのブラックカルチャー、マイノリティ文化、移民、教育、犯罪など社会事情専門。

サイト:http://www.nybct.com/

ブログ:ハーレム・ジャーナル

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか (光文社新書)