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「女性はずるい」オードリー若林が性別役割分業志向を吐露、中谷美紀「私は無理」

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オードリー若林正恭

オードリー若林正恭

 1029日放送の『ボクらの時代』(フジテレビ系、日曜朝700~)のゲストは、中谷美紀(41)、オダギリジョー(41)、オードリーの若林正恭(39)。昨年キューバを5日間旅したことで新しい自分と出会ったという若林が、海外旅行経験が豊富で著書『インド旅行記14』(幻冬舎文庫)を持つ中谷と、キューバと日本の合作映画『エルネスト もう一人のゲバラ』(106日より公開中)で主演を務めているオダギリに、海外の話を聞きたいと思い指名したのだという。「ボクらが旅に出る理由」というテーマで繰り広げられる30分のトークからは、3人の人生観や結婚観、男女観といったものが浮かび上がったのだが、特筆したいのは性別役割分業志向についてだ。

 まず海外旅行、日本と他国の違い、仕事とプライベート(休暇も含め)の比重などについて語らった後、3者は日本の映画業界の話に突入した。単館系の映画館が軒並み廃業してきていることを寂しく思う中谷は「小さいうちに良い映画を見る環境にいないと、大人になった時にまた観たいという風に、なかなか思わない」と考え、オダギリに対して「映写機を持って全国各地の小学校を回ってみては」と突拍子もない提案を持ちかける。するとオダギリは、それなら中谷も同伴してほしいと言い出した。以下はその続きのやり取りである。

オダギリ「機械とか運んでほしいし」

若林「中谷さんに運ばせちゃダメでしょ」

中谷「でも今、男女平等なので」

若林「そこは呑むんですね」

中谷「レディファーストとか大好きなんですけど、ドアとか開けていただくとすごく嬉しいんですけど、あ、でもこうやってこの瞬間喜んでいる自分っていけないなってつい思うんです」

若林「本当に平等じゃなきゃいけないっていう」

中谷「そこが今ね、悩みどころなんです、今一番考えてるテーマなんですよ。レディーファーストなのか、平等なのかって」

 どうやら中谷は、レディーファーストな対応をされると嬉しく感じるものの、それでは男女平等だといえないのではないかと悩んでいるようで、彼女のストイックな内面を感じさせた。

 中谷の発言を「すごい」と賛美した上で、自らの女性論を切り出した若林は、こう言う。

若林「でも中谷さんって本当、すごい……ずるくない人ですね、本当に。あの女性のね、レディーファーストの感覚でいったら、女性がちょっと不利なことに関しては、そこは『男女平等じゃないんですか』って言うけど、女性が得していることに関しては『得もやめてくれ』っていう人ってあんまいないじゃないですか」

 どうやら若林の目に、女性は“女性に不利なことには男女平等じゃないと不満がるくせに、女性だけが得することには疑問を抱かない、おいしいとこ取りをしようとしている”というように映っており、若林は女性に対して“ずるい”という思いを抱くことがあるらしい。だからこそ、レディーファーストと男女平等の狭間で揺れる中谷の言動がより美しく響いたのであろう。

 さらに若林は、モンゴルを旅行したことがきっかけで、“男女で役割が分かれている暮らし(いわゆる性別役割分業)”を理想的と考えるようになり、“専業主婦との結婚願望”が芽生えたことを打ち明ける。既婚者であるオダギリは、若林の意見に概ね同意を示す。だが、中谷の反応は違っていた。

若林「モンゴルにもこの間ひとり旅行って、で、遊牧民のゲルっていって、さっきのその、男女の話じゃないですけど、力のかかる仕事は男がやってて、女性はずーっと働き者らしくてチーズとかヨーグルト作ったりとか、料理したり洗濯とかしてるんですよ。で、分業システム……人間が生存していく上で一番いいんだろうな、バランスが……とかって思っちゃったんですよね、それで。で、分業っていいんだって思った途端に、すげー結婚したくなったんですよね」

中谷「つまりは専業主婦と結婚したいってことですよね」

若林「んー、(専業主婦)のほうが、なんか、いいんだろうな、そら、1人で生きていくより、って思ったんすよ」

オダギリ「僕も、なんか、すごい(若林の)言ってることは、(自分も)同じような感覚があって、なんか、それを(女性に)どう思われるんだろうと思って。さっきからの男女平等の話からすると」

 若林が意外なほどスパーンと自らの秘める女性嫌悪(ミソジニー)を含んだ主張を放つのに対して、オダギリは奥歯に物が挟まったような言い方だ。そして中谷は「自分は遊牧民男女のような性別分業はできない」と反論する。

中谷「おそらく、人類の構造としては、それこそおっしゃる通り男性が力仕事して女性が家のことするのが、おそらくふさわしいんでしょうね。でも、私の個人的な特性として、じゃあ旦那さまが働いてきて、で、そこからいただいたお小遣いで家事をして節約をしてっていうことは……できない」

オダギリ&若林「アハハハハハハ」

若林「いや、そうだと思いますよ、そら」

中谷「俺が稼いできてやったんだって言われて、なんかハイハイって言ってかしずいていくのがちょっと私の性格上無理」

オダギリ「言い方変えるとできます? 俺が稼いでやったんだじゃなくて、言い方ちょっとぬるくしたらできます、じゃあ?」

中谷「無理です」

若林「アハハハハ」

オダギリ「それでもダメ?」

中谷「私、多分、専業主婦に向いていない」

若林「共働き……だと、周りに亭主関白の友達いないですよ」

中谷「でも亭主関白じゃなかったとしても、よそのご家庭とか友達のご家庭見ていると、どこかでやはり女性が何かをしてくれることを期待してるんですよ、男性って」

若林「あ~はいはい」

オダギリ「それはありますね」

中谷「ちょっと食器洗ってくれたり、お風呂に入れてくれたりっていうのがあったとしても、それだけで『俺は育児に参加してる』とか『家事をやってやってる』みたいな感覚が絶対あるんですよ。男としては亭主関白じゃないおつもりなんですよ、男性としては。でも女性側からすると『ちょっとやったくらいで』って思うんですよ、どうしても」

 女性である中谷の意見に対して、若林とオダギリは耳を傾ける姿勢を持ち、相槌を打った。3人が集まって対話をするという番組の形式上、対談者の話に耳を貸さないという選択肢はそもそも存在しないだろう。しかし、たとえばプライベートで、中谷のような大女優ではない“自分より立場が高くない女性”がそのような意見を提示したとしても、果たして同じように耳を傾けるのか……そこがひとつ、疑問であった。彼らが神妙に肯いているのは、そもそもトーク番組だし、中谷美紀大女優だし……という前提ありきなのかもしれない、と。もちろん男女関係なく自分より下の立場の者の意見を聞けない人はいるが。

 また、中谷は「俺が稼いできてやったんだって言われて、なんかハイハイって言ってかしずいていくのがちょっと私の性格上無理」と言ったが、それが「無理」でない女性は今、中谷と同世代~下の世代で、どれだけいるのだろう。「性格上」というのなら、おとなしく従順な性質の女性ならば「無理ではない」のか。外で働きたくない女性ならば、夫が働き世帯収入を稼ぐことで自分が家にこもるなり趣味に没頭するなり出来るのだと納得するのだろうか。これは「性格」の問題なのか。男女平等の教育を受けてきたはずが、社会に出て働き、結婚というタイミングで「男女は役割が別なのだ」とすんなり納得し、「夫にハイハイ言ってかしずく」ことが自然にできるものなのだろうか。

 若林の性別役割分業志向および専業主婦との結婚願望を聞いて、人類の構造上は男が仕事・女が家事がふさわしかったとしても、個々人の性格や特性を踏まえると必ずしもこの限りではない、と冷静に分析する中谷。他方、若林の意見に同意しつつも、中谷に「言い方ちょっとぬるくしたら(どうか)」と尋ね、女性の機嫌を取ることで面倒なことをやってもらえるならば……といった甘い思惑が窺えなくもないオダギリ。結婚のメリットを「家事担当者を得る」ことにあると捉えている様子の若林。三者三様だ。しかし彼ら全員、「男女で家庭を築いた場合、家庭内の家事担当者は、女性であるのが常識」と考えていることは共通だろう。

  女性が家事をしてはいけないわけでも、男性が家事をしなければならないわけでもなく、そこは家庭ごとにルールがあるものだ。しかし社会の常識、つまり「ルール」が、<本来ならば家事は女性がやるべきもの>と定められていることで、女性が社会で輝くだのなんだのと政府が謳ってもままならないという弊害がすでに出ている。男女で働き方を変えなければならない理不尽も生まれる。力仕事にふさわしくない男性も力仕事をしなければならず(“力”仕事に限らないが)、力仕事をしようとする女性は規範を逸脱した存在になる。そうした不平等なルールを崩していくことと、若林が「ずるい」と感じるような女性の“得”(しているように見える部分)をなくしていくことは、おそらく同時に達成できるだろう。レディーファースト問題に関しても、「女性だから親切にする」のではなくて誰にでも分け隔てなく親切を与え合うことが出来れば良いのではないか。遊牧民ではなく、ほとんどがオフィスや店舗で働き生活を営んでいる現代日本社会の私たちにとって、性別役割分業が「一番バランスがいい」のかどうか、もはや検討段階ですらない。

中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

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