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生理を理由に、無実の女性が殺人犯に仕立て上げられた「甲山事件」

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Photo by James Loesch from Flickr

 月経(生理)のある女性の大多数が経験している月経前症候群(PMS)。

 PMSには頭痛、腹痛、浮腫みといった身体的な症状のほかに、不安感、憂鬱などの精神的な症状も見られる。日本では精神症状の方が注目されがちで、「暴言を吐く」「暴力を振るう」「集中力を欠き仕事ができなくなる」といったことまでが、PMSの症状としてカウントされている。しかし、精神科のカテゴリーでは、日常生活にまで支障をきたすような症状はPMSではなく、月経前不快気分障害(PMDD)という別の概念で捉えられるようになってきており、治療法も確立しつつある(1)。

 いまだほとんどのメディアが、多くの女性に見られるPMSと、重篤な精神症状が現れるPMDDを混同して伝えているのだが、月経と精神不調を安易に結びつけることは、女性はもちろん社会に対しても不利益をもたらす。

 今回は、偏った月経観を放置しておくとどんなことが起こるか、という話をしたい。

 以前この連載で、海外からPMSの概念が入ってくるまで、女性の精神不調は「月経前」ではなく「月経中」に起こるとされていた、と書いた。女性の犯罪や自殺も月経中に起こることが多いと信じられており、この考えに基づいて捜査や司法判断が行われていた。その中でも最も象徴的で恐ろしい事例が、「甲山(かぶとやま)事件」である。

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田中ひかる

1970年東京生まれ。著書に『月経と犯罪――女性犯罪論の真偽を問う』(批評社)、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)、『生理用品の社会史――タブーから一大ビジネスへ』(ミネルヴァ書房)など。

田中ひかるのウェブサイト

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生理用品の社会史: タブーから一大ビジネスへ