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紗栄子の<女性・母親かくあるべし>に縛られない自由な表現が共感呼ぶ「救われました」

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紗栄子Instagramより

 紗栄子(30)が116日深夜に更新した公式Instagramに、共感のコメントが複数寄せられている。

 自分で作ったというハヤシライスの写真を載せた紗栄子は、キャプションに「別にお料理するの好きではないし、子供達のいない東京は毎日外食して会いたい人に会うんだって思っていたのに。 これ言うのちょっと恥ずかしいけど、初めてかも。自分のためだけにご飯作ったの。w」と書いて、料理好きではないことをカミングアウト。

 すると、コメント欄には、「わかります」「わたしも面倒」「家庭あるけどわたしも好きじゃない」「何だかホッとした」「主婦なんてそんなもんだよ」「ひとりの時間は大事」といった共感の声、さらには「包み隠さず話してくれて嬉しい」「その言葉に救われました」「正直者のさえちゃん可愛いすぎます」といった調子だ。ハヤシライスの投稿に寄せられたコメント数は119日時点でおよそ290件となっており、その大多数は女性と見られるユーザーからのコメントである(ただしスパムも含まれた数だが)。

 人がSNSUPする写真や文章が「正直な気持ち」や「事実」を表していることのほうが稀では……と意地悪なツッコミを入れたくなってしまうが、しかし紗栄子の「別にお料理するの好きではないし、子供達のいない東京は~」という言葉が、<女性・母親かくあるべし>に一切縛られていない自由な表現であることは間違いない。

 しかも紗栄子は、小学生である2人の息子をイギリスでの寮生活に送り出したことで「育児放棄」などと根拠なきバッシングを受けていた。いや、それよりもっと前、ダルビッシュ有と結婚生活を送っていた頃から、彼女が「いかにダメな妻・母親であるか」粗探しする視線はあっただろう。そうした視線はあらゆる女性タレントに向けられており、ブログなどに料理写真をUPすれば「アピールがうざい」、外食風景をUPすれば「子供がかわいそう」なんて謎の叩かれ方をしてきた。そして、芸能界を離れた一般女性にも同様のジャッジは下される。女という生き物は、料理上手であるほうが偉いことになっているのだ。

  男性に“理想の女性(あるいは妻)の条件”を尋ねるアンケート調査は珍しいものではないが、そうした調査結果の上位には必ずと言っていいほど「料理上手(料理好き)」がランクインする。女性に向けた“恋愛や婚活や家庭円満をうまく進めるためのポイント”でも、「料理上手・料理好きはモテる、男ウケがいい、夫の両親にも好かれる」「彼の胃袋を掴め!」といった趣旨のアドバイスは鉄板である。

 それに伴い、女性であるにもかかわらず料理が好きではない、しない、あるいは下手であることは欠陥だとされる。これは日本だけに限定的な話ではないのだろう。

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 テレビでも、とりわけ“女性”と“(家庭)料理”は関連性の強いものとして扱われる。バラエティー番組にゲスト出演した女性タレントが玄人はだしの料理の腕前だと公言すると歓声が上がるし、料理嫌いや失敗ネタを暴露すると司会者から「お前そんなんで大丈夫か~?」とダメ出しされたりイジられたりするのが定番なのだ。スポーツ選手でも文化人でも関係ない。女性アスリートについて書かれた新聞記事や雑誌記事で、「実は料理が趣味という普通の女性らしい一面も」などといった料理にまつわる記述をしばしば目にする。

 しかし「普通の女性」は料理好き・料理上手であるわけではない。千差万別だ。だからこそ紗栄子が、「別にお料理するの好きではない」と書いた、ただそれだけのことが、顔も知らないどこかの誰かを勇気付けることにつながるのである。

 料理“くらい”出来たほうがいい……そんなふうに言う人もいる。しかし、地域によって多少差はあるだろうが、今の時代、“出来上がった料理”を提供する店は数多く、多種多様に存在する。カフェやレストランや居酒屋やファーストフードやラーメン屋といった飲食店、出来合いの総菜や弁当やパンを販売するスーパーやコンビニやデパ地下。デリバリーサービスも盛んだ。自宅ポストにはどこかしらの店のデリバリー案内のチラシが常時舞い込んでいる。24時間営業の店も少なくない。味や栄養や分量、そして経済的な面も踏まえれば、毎日外食することは不健康で不経済で不健全だと見る向きもあるが、個々人がどのメニューを選ぶか次第だろう(毎日カレー、ラーメン、カツ丼のルーティンだったら確かに栄養素がだいぶ偏るかもしれない)。

 “わざわざ料理をしなくても食事にありつける状況”が整えられているのは、何も独身男性のためだけではない。どんどん利用していいのだ。手料理が好きじゃなくても死なない、というか女性失格ではない。紗栄子はリッチウーマンであるけれども彼女が自由の翼を手にしているとしたら、それはお金の力によるものだけではないだろう。前述のように<女性・母親かくあるべし>といった圧力から心が解放されれば、それ以前よりも確実に自由になれる。料理や育児だけではなく、美容や恋愛関係についても同じことが言えるが、そうした方面でも紗栄子がステレオタイプを壊し続けてくれたら、女性たちはきっと心強い。

中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

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Sweet(スウィート) 2017年 12 月号