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中谷美紀もオダギリジョーも、「休むこと」「仕事がすべてではないこと」に気付いている人たち

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『PRESIDENT WOMAN 2017年12月号 VOL.32』

『PRESIDENT WOMAN 2017年12月号 VOL.32』

 放送中の連続ドラマW『片想い』(WOWOW)で、主人公の性同一性障害の女性を演じている中谷美紀(41)が、「PRESIDENT WOMAN(プレジデントウーマン)12月号」(プレジデント社)のスペシャルインタビューで、ワーク・ライフ・バランスについて語っている。

 中谷は1993年、17歳の時に月9ドラマ『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系)で女優デビューし、以来、20年以上に渡って第一線で活躍し続けている。そんな彼女が、仕事とプライベート、それぞれをどのように捉えているのか。

 先月ゲスト出演した『ボクらの時代』(フジテレビ系)のトークで、男女平等とレディーファーストとの狭間で葛藤があると語るなど、ストイックな面が窺える中谷。今回の「プレジデントウーマン」のインタビューにおいても、7年前より糖質制限を行っていて炭水化物と砂糖をなるべく控えていると語っており、肉体管理に多くの注意を払っているようだ。白米は口にしない、低GIそばは食べるそう。運動も欠かさないようにしているとのことである。

 そんな中谷美紀の仕事観には、芸能界という特殊な世界で孤高を保つ彼女の姿が見える。中谷は、このように語るのだ。

「プライベートで大事にしているのは、ひとりの時間と友人と過ごす時間。ひとりでいるの、大好きです。それ以外の日は、仕事とは関係のない友人と交わり、仕事の話をいっさいしない時間をつくっています。オフの日まで仕事のことを考えると、自分の人生が侵食されるような気がしてしまうし、いったん切り離すことでまた仕事を楽しめるようになる」(※太字強調は筆者による)

 仕事とオフの境目をはっきり設けていることがわかる。「芸能人」「女優」と聞くと特別で特殊な仕事というイメージを抱くし、実際一般の仕事とは色々と事情が違うことが予想されるし、才能や運がありさらに努力も出来る人でなければ成功しないであろう。しかし、そんな厳しい世界で成功した女優もまたひとりの人間であり、女優業もまた“労働”である以上(契約上は労働者でないにしても)、休息は絶対に必要だ(もちろん芸能人であれ一般の仕事であれ、オフの日でも仕事のことが気になって仕方なくそんな自分に満足している人もいるかもしれないが)。あるいは、一旦ドラマや映画の撮影に入ると、連日連夜仕事続きの過密スケジュールでゆっくり休むことができなくなる、という業務内容だからこそ、オフの日はとにかく仕事を忘れリラックスすることが大切なのかもしれない。

 そんな中谷も、20代の頃は仕事に忙殺される日々が続いていたそうで、そんな時にドラマ『R-17』(テレビ朝日系/2001年)で共演した桃井かおり(66)からハイペースで仕事しすぎではないかとの指摘を受け、「休むのよ」と助言されたことで自分の休みたいという気持ちに気づいたのだという。同時に、「休むということをそんなにはばかる必要はないんだな」と楽な気持ちにもなったとも。

 現在は「オン・オフを切り替えるための『しない』2カ条」として「1プライベートでは仕事の話をしない 2無理に人に合わせない」を心得、「インプットとアウトプットの時間を半々にするというのが理想的」「40代に入り、これまで以上にワーク・ライフ・バランスを大切にしていきたい」と語る中谷。オフタイムでのインプットを大切にしているからこそ、仕事では妥協をせず、多くの人が圧倒するような演技を見せてくれるのだろう。

 これに近いことを、オダギリジョーも語っている。オリコン系Webサイト「OLIVER」におけるスペシャルインタビューで、仕事観について「自分の中では、自分の人生を一番に考えるので、仕事じゃない面も重要だと思っています。仕事は人生の中で一つの要素でしかない」ときっぱり。

「大げさな話、今の仕事を辞めて、アルバイトで生きていけるのならば、それでもいいと思っています。仕事なんてどうでもいいと思うんです。人生において、もっと楽しくてもっと重要なことは他にたくさんあると思っています」

「映画が好きで、それを仕事にしている面もたしかにありますが、ただ仕事だけが人生じゃない。人間の喜怒哀楽は仕事だけがもたらすものではないでしょ。確かに資本主義社会で生きて行くことはお金を稼がなければならない訳で、やりがいのあるプライドの持てる仕事につくことは大切なことなのは分かります。でも、僕にとっては仕事よりも人生を豊かにしてくれるものが他にあると思っているだけなんです」

 ただ、こうした仕事観を持つに至った背景には、「20代をあまりに働きすぎ」たことがあると言い、働き盛りといえる3040代に現状の価値観を持つに至ったことが「良いこととも思え」ないとも。20代で仕事ではなく別の「楽しいこと」に思いきり打ち込んでいたら、オダギリの仕事観もまた違っていたのかもしれない。

 もちろん、中谷やオダギリは芸能人という立場であり、一度の仕事期間(ドラマや映画や舞台の出演)で大きな収入を得られるため、長期休暇を取っても生活に支障が出ないがゆえの「ワーク・ライフ・バランス」。世間一般の労働形態や経済状況と異なることは留意しなければならない。しかし、「休みたい」というのは、何らかの義務を負っている人間の大多数が抱いている本音ではなかろうか。会社員も公務員も自営業も、育児中の人も、介護中の人も、勉強や部活や人間関係に忙しい子供たちも。義務を負っている状態が長時間続き、休息が少なければ心身は疲弊する。心身が休みを欲しているのにもかかわらず、休むことが叶わず、長時間働いたり育児をしたり部活動を続けたりする状況を強いられれば、心身は蝕まれていくのだ。長時間労働、ワンオペ育児、ブラック部活動など、働きすぎ・頑張り過ぎによって人が疲労困憊しているという(前々からあり、ようやく目を向けられるようになった)社会問題は、「休むこと」や「休みたい」という気持ちを「悪」と見なす風潮が根強かったため、長い間表面化しなかったともいえる。私自身、「寝る間も惜しんで」「熱があるのに」頑張ったことをプラスに受け取られ、無理せず休むと「みんなに迷惑がかかる」「1日休むと取り戻すのに3日かかる」とマイナスに受け取られる風潮を、肌身に感じて育った。

 「休むということをそんなにはばかる必要はない」し、「仕事は人生の中で一つの要素でしかない」。勤勉はひとつの美徳だが、すべてではないのだ。

中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

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