社会

年収800万超の<子なし世帯>増税案が意味すること

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Photo by Dmitry Ryzhkov from Flickr

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 幼児教育・保育の無償化や待機児童問題など、子育て支援の在り方が検討されている。11月17日には、政府が<年収800900万円を上回る、子供がいない世帯>を対象に増税案を検討していることが明らかになった。複数の報道によると、政府は“各種控除の見直しにより高所得層が増税となる一方、低所得層は減税とし、子育て世帯も負担が重くならない仕組みを目指す”とのことで、今後は世論の反応を見つつ制度設計を進める方針でいるという。

 どのような増税案が検討されているのかというと、(1)まず会社員らが対象の「給与所得控除」を引き下げ(控除額を下げる)、(2)代わりに納税者全員が対象の「基礎控除」は引き上げ(控除額を上げる)。この2つを行うことで、年収800900万円を上回る世帯だけが増税となる。ただし年収800900万円を上回る世帯であっても子供のいる世帯は対象外で、年収800900万円を上回っている上に子供のいない世帯だけを増税する。つまり、高額所得者に「子なし税」が課されるということになる。

 「給与所得控除」とは、会社員や派遣社員やパートやアルバイトなどの給与所得者が“必要経費(仕事をするにあたってかかるお金)”を収入から差し引かれる(控除=ある金額から一定の金額を差し引く)こと。控除される金額はその年の「収入」に応じて算出される。どういう必要経費を引くのかと言うと、まず誰でも「これくらいは必要経費としてかかっているだろう」と想定される割合が「基礎控除」として引かれ、さらに保険料に関するものや医療費、シングルマザー・ファザーや障害者(寡婦・寡夫控除、障害者控除)、配偶者が扶養内である場合の扶養控除……などがある。これらを収入から引いたものが「課税所得」だ。課税対象になる(所得税をかけられる)のは「収入」ではなく「課税所得」であり、「課税所得」の金額に応じて「所得税」が決まる(課税所得×所得税率=所得税)。「所得税」からさらに「税額控除」が差し引かれたものが、最終的に納める「所得税納付額」となる。

 政府が今回検討する増税案では、給与所得控除額を縮小することで、同収入であっても控除される金額(課税されずに済んでいた金額)が減り、結果的に会社員らの納める税金額を増やすことができる。ただし“子育て支援”の観点から、年収800900万円を上回る世帯のうち<子供のいる世帯>は対象外にし、<子供のいない世帯>のみ増税案の対象にしていこう、ということになるのだが……(ちなみに<子供のいる世帯>とは具体的に何歳までの子供がいる世帯を対象とするつもりでいるのかは、今のところまだ明らかになっていない)。

 「給与所得控除」の対象となるのは、高収入の会社員だけではなく、パートやアルバイトなど何らかの雇用形態で勤務先に雇用されている人全員であり、個々人によって給与収入額にかなりの差が生じているのは明らか、低収入の給与所得者にとって(1)の増税案はただただ負担になるのは目に見えている。そこでもうひとつ検討されているのが、(2)納税者全員が対象の「基礎控除」の引き上げで、現在38万円の基礎控除額を50万円に引き上げよう、という案が出ているという。これにより、「基礎控除」では対象となり「給与所得控除」では対象外となるフリーランスや自営業の人は減税できる、とも考えられる。

 しかし<子供のいない世帯>のみを対象とした増税案、つまり子供の有無で課税に線引きがなされるという提案は、個々人のライフスタイルに干渉することになる。選んだライフスタイル、あるいは止むを得ず置かれた状況によって、増税対象にされてしまうということだ。産まない(=国策に貢献しない)ならば、より多くを納めよ、と読めてしまう。産まない選択や産めない状況への罰則のようにも受け取れるうえ、不妊治療中の世帯を軽視した提案でもある。

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

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