社会

心身の回復にかかる時間、回復するか否かは誰にもわからない。生活保護は心と命とを支える社会保障である/『助け合いたい』さいきまこ×『失職女子。』大和彩対談・後篇

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さいき生活保護もそのひとつです。最後の最後にこのセーフティーネットがあるというのは、命の支えというだけでなく心の支えでもあります。病気や事故、そのほかの理由で働けなくなることは誰にでもあるし、それは自己責任ではないと早く気づいてほしいんです。誰にとっても自分事なんだ、と。なのにいま、社会保障の予算はどんどん削られようとしています。このままだと、いざ自分が支えてもらおうとした時にどうなっているか……。安定していると思われていた団塊世代も年金は不安定、長寿の親の介護と非正規雇用の子どもの扶養を抱えている。今後、老後破綻で生活保護が必要な人がますます増えるでしょう」

大和団塊世代が一斉に生活保護を受給しはじめて、受給者がマイノリティでなくなったら、社会の偏見なども少しは変わっていくかもしれませんね。ところでさいきさん、今回は『助け合いたい』というタイトルですが、これは家族同士で助け合うという意味なんでしょうか?」

回復しなくても生きていていい。

さいき自民党の改憲草案では、憲法24条に『家族は、互いに助け合わなければならない』の一文が加えられることになっています。こうなると虐待を受けた子どもが親の扶養義務を背負わされたり、経済的に不安のある家族がそろって共倒れになったり……今回描いた家族もあわやそうなるところでしたが、そんなことが強いられるようになる可能性があります。それでも、多くの人たちは家族で助け合いたいという気持ちがあると思うんです。ただそれは先立つものがあってこそ可能なので、ないなら社会保障制度で文字どおり『保障』してもらうしかないですよね」

ーーそれによって心身が回復して、また働けるようになったほうがいいですよね。

さいきはい、一時的に休んで、回復して、働けるようになればそれはすばらしいことです。でも、生活保護=回復のためのツール、ではないんですよ。実際に受給されていた女性が『回復する人もいるけど、回復しない人もいるし、そういう人はずっと生活保護で支えてもらっていい』というのを聞いて、私もハッとしました。生活保護は回復が目的なんじゃなくて、生きつづけることが目的のツールなんです」

大和そう考えると、生活保護の意味合いがまったく変わってきますね。生きること自体を、保障する」

さいき生活保護の本来の意義って、実はここにこそあるんです」

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三浦ゆえ

フリー編集&ライター。富山県出身。複数の出版社に勤務し、2009年にフリーに転身。女性の性と生をテーマに取材、執筆活動を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズをはじめ、『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)、『失職女子。~私がリストラされてから、生活保護を受給するまで~』『私、いつまで産めますか?~卵子のプロと考えるウミドキと凍結保存~』(ともにWAVE出版)などの編集協力を担当。著書に『セックスペディアー平成女子性欲事典ー』(文藝春秋)がある。

twitter:@MiuraYue

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