父親の会社が倒産。お嬢様から一転、うつ病すれすれの生活に
彼女が日本語の勉強や学業で優秀な成績を収めていたのは、もちろん彼女自身が勉強家で努力家だったという要因が大きい。さらに、金銭的にも恵まれていたため、アルバイトなどは一切する必要がなく、学業に勤しみながら趣味のお洒落も楽しむことができていた。彼女の父親は会社経営者で、アミはお金の苦労を一切したことがなかったのだ。
だが、そんな彼女の生活は、父親の会社が倒産したことにより一変する。予兆は、アミが大学を卒業する頃にすでにあったそう。会社の経営が危ないらしいと感じてはいたが、これまで苦労知らずだった彼女は、そこまで深刻には考えていなかった。
大学卒業後は、日本に留まり、日本で就職することを決めた。当時付き合っていた東京在住の彼氏と離れたくなかったことも大きく、彼女にとって大事なのは彼の近くにいることで、就職先はどこでもよかったそう。
就職してしばらくすると、父親の会社は倒産。時を同じくして付き合っていた彼氏とも別れた。別れは悲しかったが、さらに辛かったのは、両親が倒産のいざこざやすれ違いなどの理由で離婚してしまったことだ。
家族はバラバラになり、アミはこれまでの自分を責めた。大学まで親にすべてを頼りっぱなしで、遊んでばかりいた自分がすべて悪いような気がしたという。「バチがあたったんだ」そう思ったそう。アミは追い詰められ、一時はうつ病になりかけてしまった。
専業主婦だった母親を支えよう。私は男性に金銭的に頼りたくない
そんなアミを救ったのは、当時会社の同期だったひとりの男性だ。彼は穏やかで、アミの不安な気持ちを察して、いつも側にいてくれた。
彼の助けを得て一念発起した彼女は、ずっと好きだった化粧品関係の会社に転職をすることに決めた。転職を決めたのには、いくつか理由がある。ひとつ目は「もっと稼げる仕事をしなければならない」と思ったこと、ふたつ目は「男性に金銭的に頼りたくない」という思いが強くなったことだ。
彼女が「稼げる仕事がしたい」と思うようになった理由は、母親だった。成功した経営者の妻だった彼女の母は、これまでまったく働いたことがなかった。ゆえに離婚が成立した後も、すぐに働き口が見つかるはずもなかった。
「私自身に変なプライドがあって、母親の生活水準を下げたくないんだよね。だから母親の暮らしを支えるためにも仕送りはずっとしてる」
アミはこれまで自分が支えてくれた両親が離婚したことに、責任の一端を感じている。冷静に考えたら、自分がどんな行動をしていても離婚は止められなかったかもしれないとわかっていながらも、母親には償いをしたいという思いが常にあったのだ。