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生活保護「健康的で文化的な最低限の生活」のレベルをもう下げないで

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Photo by Jim Rush from Flickr

 今月10日、政府は生活保護受給世帯の子供の進学支援として、来年度より大学や専門学校の入学時に一時金を支給する方針を固めたことが報じられた(生活保護世帯の大学進学、一時金支給へ 政府方針)。

 これに対し実業家の堀江貴文氏は「既存の大学の枠組みを残すための税金の無駄遣い。優秀な学生には返さなくて良い本当の奨学金がすでに支払われる枠組みがあるんだから、優秀でもない学生がわざわざ行くところではないのに補助金だすとかマジおかしい」と投稿し、賛否両論が寄せられた。

 その後も堀江氏は、「税金で高等教育をあまり役に立たない人に施すのは間違ってると思う」「既存の教員や天下りの給与確保策だよね。それをなんか弱者救済的な文脈で語るのはおかしい」「本気で税金の無駄を無くそうと思ってるだけ」などと持論を展開していた。

 確かに成績優秀者が受け取れる給付型奨学金は存在するものの、その枠はごくわずかだ。奨学金のほとんどが、返済の必要な貸与型であり、大学を4年間通った場合、卒業時に数百万単位の借金を背負うことになる。また「賃金構造基本統計調査」によれば、大学・大学院卒の賃金は、男性で約40万円、女性で約29万円、高校卒の賃金は、男性で約29万円、女性で21万円と、いずれも大学・大学院卒のほうが高い。

 「給与型の奨学金があること」は、必要としている人がその制度をすべて利用できるということではない。また、大学は成績優秀者のためだけの教育機関ではないし、何を持って「役に立つ」を決めるのかも不明だ。生活保護を受給している家庭の経済事情を理由に、大学に進学できない子供に対して、入学金の一時金を支給することは、「税金の無駄遣い」と批判するようなものではない。経済的に困窮している世帯の子供の大学進学の機会を奪うことは、貧困の再生産に加担していることになるのではないか。

 生活保護は、5年に一度見直される生活保護基準の検討がいままさに行われている最中だ。

 すでに大きな話題となっているが、厚生労働省は128日に、来年度から食費や光熱費などの生活費にあてる「生活扶助」の基準を見直す案を発表した。この案の通りに基準が見直された場合、都市部のほとんどの世帯で大幅な減額になる。

 厚労省の資料によれば、複数検討されている新たな基準に従うと、例えば都市部に住む30代夫婦と35歳の子供がいる世帯の場合、現在の基準額148380円から144760円、あるいは143340円と、いずれも40005000円ほどの減額になる。同じく都市部の夫婦と小学生・中学生の子供がふたりいる世帯の場合、185270円から159960円あるいは179200円と2.5万円ほど減額されることになっている。

 世帯構成や居住地によっては増額の対象となる世帯もあるが、生活保護受給率の高い高齢者世帯でも多くの場合が減額の対象となっている。

 今回の検討は、専門家会議が調査した結果、生活扶助の金額が低所得世帯の生活費を上回っているケースがあることが判明したために行われているようだが、検討すべきは低所得世帯の所得が増えるような施策であって、生活扶助基準を引き下げることではない。

 さらに、生活保護を受給しているひとり親世帯に対する「母子加算」もまた、加算額が減額される可能性も懸念されている。「母子加算」の検討については、ひとり親世帯とふたり親世帯の固定的経費が比較されているが、そもそも「母子加算」は、ひとり親家庭が育児や家事、仕事を両立させるための負担が大きいことを考慮した制度のはずで、固定的経費を比較すること自体ズレている(このことはNPO人もやい代表・大西連氏も指摘している)。

 2014年に消費税が8%にあがり、さらに日本はインフレーション2%を目標とした金融緩和政策などを行っている最中だ。物価が上がっていくことを考えれば、むしろ生活保護費の増額を検討するのが筋なのではないだろうか。

 現在発表されているものはすべてあくまで検討中の案でしかない。生活扶助の新基準については専門家会議の中でも、大幅な減額となる世帯が出ることに懸念を示す委員がいることも報道されている。専門家会議は明日14日も開かれる予定だ。突然の事故や難病、家族の介助・介護等をきっかけに、今まで通りに働けなくなり、生活保護を利用する可能性が誰にでもある。生活保護は、国が「健康的で文化的な最低限の生活」をどのように考えているのかを、日本に住む私たちに示すものでもある。以後、どのような方向性で議論が進むか注目したい。
wezzy編集部)

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