社会

先行するトランスウーマン。メディアにおけるLGBTの扱い方を振り返る【SHIP10周年記念シンポジウム】

【この記事のキーワード】
先行するトランスウーマン。メディアにおけるLGBTの扱い方を振り返る【SHIP10周年記念シンポジウム】の画像1

Photo by Jaime Pérez from Flickr

※編集部注:本記事は、2017年9月18日に行われた「SHIPにじいろキャビン開設10周年記念シンポジウム『LGBTコミュニティ、この20年のあゆみ』」の講演を記事化したものです。

 性社会文化史を研究している三橋順子です。本日、私に与えられたテーマは「メディアにおけるLGBTの扱い方を振り返る」です。

 先程、風間孝さんが「府中青年の家事件」のお話をしてくださいました。私はほぼ同時期に新宿の女装仲間の親睦旅行を何度も企画しました。ゲイと女装者、杓子定規な公共施設と一般旅館を単純に比べてはいけないかもしれませんが、「新宿のニューハーフのお店の慰安旅行です」と、予約の際に言っても拒否されたことは一度もありません。それどころか、旅館で宴会をしていると、初対面の団体から「こっちに来てくれませんか」と声がかかる。「営業じゃあないんだけどなぁ」とぼやきながら仲間の何人かに行ってもらう、最後に私が出向いて一曲唄って「お捻り」もらって帰ってくる(笑)。どうも、当時の同性愛者とトランスジェンダーの置かれた状況には、違うものがあったように思います。それをこれからお話します。

メディアでの扱われ方はL/G/B/T内でも違う

 それではまず、ゲイに関する現在のメディアの状況について、お話します。

 日本では、2015年に渋谷区がパートナーシップ証明書の発行を決めたことを発端に同性婚の問題が浮上し、同性愛に関する報道も増えてきました。しかし、それまでは同性愛者の人数がトランスジェンダーに比べて圧倒的に多い(約100倍)にも関わらず、同性愛の報道はとても少なかった。同性婚絡みの報道でもレズビアン・カップルの写真が使われることが多く、ゲイ・カップルが結婚式をあげている写真はほとんど流れませんでした。

 なによりメディアに登場するゲイは、過剰に女らしいゲイ、いわゆる「オネエ」ばかりで、マッチョなゲイはほとんど出てきません。これはゲイ世界の現実と著しくかけ離れています。テレビの影響力はいまだに強いですから、世の中には「ゲイはみんな女っぽい」と思っている人たちがたくさんいます。はっきり言えば、女装したゲイでないとテレビに出られないというのが現在の日本の状態です。

 例えばマツコ・デラックスさん。マツコさんはジェンダー・アイデンティティは男性だと言っています。マツコさんがどんな格好をしようと自由ですが、あえて言えば、マツコさんは「ゲイがトランスジェンダーを擬態している」と言えるでしょう。繰り返しますが、それは悪いことではありません。問題は、なぜトランスジェンダーに擬態しないとゲイはメディアに出られないのか、ということです。

 さらにレズビアンの場合、マッチョなゲイ以上にほとんどテレビに出てきません。タレントさんとしては、今日のパネラーである牧村朝子さんほとんど一択の状態ですね。あとは一ノ瀬文香さんくらい。

 国民的人気があった女性歌手・佐良直美さんが1980年にレズビアンだとスキャンダルになり、急速にテレビから姿を消えたという出来事がありました。ご本人は後に、メディアから消えたのはこのことが理由ではないし、ご自分がレズビアンであることも否定していますが、リアルタイムでこの事件を知っている人たちは「佐良直美ほどの歌手でも、レズビアンだとテレビに出られなくなるんだ」という印象をもったはずです。その呪縛は今でも解けていないということです。

 カミングアウトをしないので「いないことになっている」だけで、芸能界に男性的なゲイやレズビアンのタレントさんはいるはずです。ただ、カミングアウトすると仕事がなくなると思っている。だから「ゲイ疑惑」や「レズビアン疑惑」をかけられると事務所が必死になって否定する。「疑惑」って言い方、いったいなんなのでしょうね。悪いことしているわけじゃないのですけど。

 バイセクシュアルは、メイプル超合金のカズレーザーさんや壇蜜さんが「バイセクシュアルです」と言っていますが、どの程度の実質性があるのかよくわかりません。疑うのはよくないのですが、しばしばバイセクシュアルがゲイやレズビアンのカモフラージュに使われることがあるので、確定的には言いにくいのです。

 そんな中、トランスジェンダー、特にトランスウーマンは活躍している方がたくさんいらっしゃいます。大御所のカルーセル麻紀さん、はるな愛さん、中村中さん、佐藤かよさん、能町みね子さん。そこに最近KABA.ちゃんが加わりました。トランスウーマンのタレントさんが人材豊富なのに対して、トランスマンはとても少ないです。テレビに出てくるのは杉山文野さんくらいでしょうか。

 なぜ、トランスウーマンが、マッチョなゲイやレズビアン、バイセクシュアル、トランスマンに比べてメディアで圧倒的に優勢なのか? これは一時的に形成されたものではなく、歴史的に形成されたものであり、日本文化の深層に繋がるものなのだと私は考えています。その歴史をこれからご紹介しますが、論理的には、拙著『女装と日本人』などで「双性原理」という概念を使って説明しているのでご参考ください。

1 2 3

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

女装と日本人 (講談社現代新書)