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「若者の恋愛離れを心配」に物申す! 恋愛は結婚のためのツールか?

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Photo by radiant guy from Flickr

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 少子高齢化の進行が危ぶまれる中、しばしば同時に論じられる「若者の恋愛離れ」。12月12日に配信された朝日新聞の「若者の恋愛ばなれ?」という記事で、マーケティング会社社長の牛窪恵氏は、『最近は男女を問わず「恋愛は面倒」という声が多く』なっており、その最大の理由は『常にスマホでネットや人とつながっている「超情報化社会」になったこと』だと発言している。

 牛窪氏の名前は、テレビや雑誌などで拝見したことがあった。恋愛や若者文化についてコメントする女性、という印象だ。牛窪氏はマーケティングライターとして様々なトレンドを分析するほか、『ホンマでっか!TV』(フジテレビ系)や『ワイドスクランブル』(テレビ朝日系)など様々な番組でコメンテーターを務めているので、ご存知の方も多いだろう。

 さて私は20代の若者でも常にスマホで誰かとつながっているタイプでもないが、わりと「恋愛は面倒」と感じて生きてきた。そんな自分自身の感覚と、牛窪氏のいう「若者の恋愛離れ」とが結びつかず、その論をもっと詳しく知りたくなった。

 そこで手にとった『恋愛しない若者たち コンビニ化する性とコスパ化する結婚 』(牛窪恵著/ディスカヴァー携書)は、若者の恋愛離れについて分析した1冊である。刊行は20159月。牛窪氏がインターネットリサーチで2029歳の男女=若者の恋愛志向を調査したのも2015年であり、私も調査対象年代に入る一人ではある。

 「はじめに」で、牛窪氏は、「恋愛スルー」の若者が増えているが若者の多くは結婚を望んでいること、だが現代は恋愛結婚が圧倒的多数を占めている現状があること、「恋愛スルー」の若者が増えるとやがて結婚しない・できない者が世に溢れるであろうこと、そして「この状況を放置すればさらに未婚・少子化は加速する(中略)これは彼ら若者だけでなく、日本全体が真剣に、早急に向き合わなければならない課題だろう」と、問題提起している。

 その問題意識を踏まえて、さまざまなデータを引用しつつ、また自身がこれまでに若者を対象に行った調査や取材、有識者の見解などを盛り込み、多方面から若者の恋愛離れを分析していく。その結果、「若者の恋愛意欲における転換期が90年代半ば~00年代にあった」。牛窪氏はこの転換期を「恋愛レボリューション」と命名したうえで、恋愛革命の要因を以下の5つにあると捉えた。

1)バブル崩壊と長引く不況
バブル崩壊後の長引く不況と格差社会において、非正規雇用や低収入の若者は恋愛意欲を失いやすく、その傾向は女性より男性に多く見られる。

 2)恋愛不良債権の露呈とリスク回避
現代はあらゆる「恋愛リスク」が露呈して、若者はリスク回避すべく恋愛から遠ざかっている。恋愛リスクとして挙げられているのは、セクハラ、パワハラ、ストーカー、DV、デートDV、リベンジポルノ、冤罪、妊娠、デキ婚、シングルマザーの貧困率の高さなど。また「自己責任」という言葉の存在、「悪目立ち」を避ける志向も、現在の若者が恋愛から遠ざかる要因になっているのではないか、とある。

 3)超情報化社会と行き過ぎたコミュニティ志向
超情報化社会の影響で、恋愛のときめきが失われ、アダルトサイトも普及し性のセルフ化が進み、またSNSの普及で恋愛が衆人環境に置かれるようにもなり、若者は恋愛から遠ざかった。

 4)男女平等社会と男女不平等恋愛
男女平等社会と男女不平等恋愛との狭間で若者が揺れている、という話。不況などの社会的閉塞感によって男性は「草食化」していること、男女平等といわれながらも男性は仕事や就職のプレッシャーを受けやすく、逆に女性は逃げ道(結婚や留学や非正規労働など)を含めた幅広い選択肢があってのびのび生きられる、と牛窪氏は綴る。また、男女平等と言われて育ったのに、恋愛では告白やデート代の支払いは「男がすべき」という価値観がはびこっていたり、彼女の前では男らしくふるまうことを求められたりすることに、納得していない男性もいる。

5)超親ラブ現象(親子仲良し)と性のセルフ化・嫌悪化
長引く不況の中で育った現代の若者は親と仲が良く、親が子離れできていなかったり、子供が過度に親を気遣っていたりして、それが若者の恋愛を遠ざけているとの分析だ。また、両親の夫婦関係に男女不平等さを感じ、恋愛や結婚に魅力を見いだせない若者もいる、という。

 昨年、国立社会保障・人口問題研究所が発表した「第15回(2015年)の出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」では、未婚者のうち男性の7割近く・女性の6割近くが異性の交際相手を持っていないという結果が出ているので、牛窪氏が20代を過ごしたバブル時代に比べ、ほんとうに現代の若者は恋愛から遠ざかっているのだろう。

 しかし、仮に牛窪氏のいうように、(1)~(5)の要因が組み合わさって若者の恋愛離れを引き起こしているのだとしたら、私は特に(4)に目を向けたい。そこにはバブル期から続く<恋愛のルール>があり、そのルールこそが恋愛やそれに付随する性行為を不自由にしているように思えてならないからだ。簡単にいえば、恋愛の性別役割分担である。

 男女は対等だけれども、クリスマスプレゼントやディナーは男性が奮発し、プロポーズも男性から。頼りがいがあり、守ってくれる甲斐性のある男性が良い。女性は“現実的”だから真面目で堅実な男性と家庭を築きたい。そうした言葉の端々に、ここでいう恋愛は結婚を前提としたものであり、夫婦共働きであっても基本的に指針をリードするのは男性であるという価値観がどれだけ強固なものかが窺い知れる。一方で、だからこそ「圏外婚(圏外だと思っていた相手との結婚)」や「逆転婚、格差婚(女性のほうが年収や社会的地位が高い)」などをブルーオーシャンだとしておすすめしている。そういう海へ漕ぎ出せば案外マッチングがうまくいき、“結婚”という目的を達成できる可能性が高まる、ということだ。

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

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