社会

枕営業が「女の武器」ではなく性暴力なのはなぜか

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「嫌です」といえる環境にあるのか

 内閣府の調査では、モデル・アイドル等の勧誘等により契約をした人のうち、契約後、契約時に聞いていない、あるいは同意していない性的な行為等の写真や動画の撮影に応じるよう求められた経験がある、と答えたのは197人中53人で26.9%。そのうち、求められた性的な行為等を実際に行ったのは17人で32.1%というデータがある。求められた行為をおこなった理由としては、「お金が欲しかったから」が35.3%と一番高いが、「契約書・承諾書等に書いてあると言われたから」「多くの人(事務所、マネージャー、撮影スタッフ等)に迷惑がかかると言われたから」がそれぞれ、29.4%、23.5%と続く。

 また、モデル・アイドル等の勧誘を受けたり、モデル・アイドル等のアルバイトの募集広告を見て応募した経験がある人の中で、契約なしに、同意していない性的な行為等の写真や動画の撮影をされたと回答した人は2,575 人中60人で2.3%だった。

 契約の有無にかかわらず、契約時に聞いていない又は同意していない性的な行為等の写真や動画の撮影に応じるよう求められたことについて警察に相談したことがあると答えたのは、わずか5.6%だった。

 これらをもってして、芸能界、地下アイドル界に性暴力が蔓延しているとはいえないだろう。だが少なくとも冒頭で紹介したうめさんの例が、決して特別なものではないことが、報道やデータからも見て取れる。

 芸能界は、業界外の人間には内情がよく分からない不透明な世界だ。アイドルやモデルになりたいという夢をもった人やまだ売れていないアイドル・モデルは、そうした世界に飛び込んでいく。右も左も分からない中では、マネージャーなどの事務所側の人間に頼るしかなく、そこには大きな権力の格差が生じるのではないだろうか。

 実際にこのような事件が起こっている以上、ファンとの接触や露出について、あるいは事務所側からの要求について、「ここまではやりたいけど、これはいやだ」というアイドル側の希望をきちんと聞ける環境が整っているとは思えない。有名女優の過去のグラビア写真などを”お宝写真”とする風潮があるが、私は、あの類の写真をみると胸が痛む。もちろん彼女らが望んでそうした仕事をしているのであれば何も問題はない。だが様々な報道を見る限り、彼女は本当にやりたくてこれをやっていたのだろうかと疑問に思わざるをえないからだ。

権力の差を利用した枕営業は性暴力だ

 ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによるセクハラが告発されてから、たびたび「枕営業」という言葉をテレビなどで見かけるようになった。『バイキング』でも先日、セクハラ問題について取り上げた際にMCの坂上忍とおぎやはぎ小木以下のようなやり取りをしていた

小木「これ僕の意見じゃないんですけど。セクハラを受けたことで売れた人たちもいるじゃないですか、女優さんは。訴えた人の中でもそれで売れた人ってたくさんいると思うんですよ。それを訴えたところで、どっちが悪いって」
坂上「それはダメでしょ。合意の上で、利害関係が一致してる」

 芸能界に身を置く彼らの発言を聞いていると、枕営業はある種「下積み時代の苦労の一環」、もしくは芸能界でのし上がっていく際の「女の武器」のように捉えられているのではないかとさえ勘ぐってしまう。

 枕営業であれ、グラビアやAVの出演であれ、すべてが「本人が望まずにやらされているもの」ではないだろう。だが、したくない露出、望まない性的行為の強要があるのも確かだ。被害を訴えている人がいるのにもかかわらず、そうした声を受け止めることなく、「自己決定権を尊重すべきだ」というのは、一見個人の権利を尊重しているようにも見えるが、業界内の問題を温存し、不利になりやすい立場の人たちに「個人の責任」を押し付けることになるのではないだろうか。

 権力の差を利用する形で持ちかけられた枕営業は、売れるための苦労のひとつなどではない。性暴力だ。アイドルやモデルになりたいという夢を利用した性暴力の現状がきちんと明らかになり、一刻も早く解決へと向かうことを心から願う。
もにか

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