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「#女性専用の街」を欲する性犯罪の現実と、保守的な女性観の危険性

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Photo by nathan williams from Flickr

 Twitterで「#女性専用の街」というハッシュタグが流行っている。この流行は、先週から始まった。

 あるツイッターユーザーが、「女性専用の街があったら、夜の9時でも買い物に行けるし、深夜早朝の勤務もできる。気を引き締めなくても、後ろを気にしなくてもいい。足音、自転車の車両の音、バイクの音に振りかえらなくてもいい」といったツイートしたことがきっかけだ。

 当初このツイートには、女性ユーザーから賛同の声が数多く寄せられたが、一方でこれに「男性差別だ」「現実的でない」と憤る声も増加し、議論が交わされている。

 紹介したツイートの趣旨は、女性がいかに普段から性暴力に対して不安を抱いているのか、をわかりやすく示したものであって、実際に女性専用の街を作ろう、という提案ではないだろう。実際、「平成28年度犯罪白書」によれば、強姦の認知件数は平成27年度で1167件、強制わいせつは女性が6596件、男性が159件となっている。これはあくまで認知件数であり、実際にはそれ以上の被害がある。つまり性暴力は日常的に、しかも女性をターゲットにしたものが数多く行われている、ということだ。

 「#女性専用の街」は現実逃避的な空想かもしれないが、論点は「性暴力に怯えない暮らしをしたい」である。しかし「インフラ整備はどうするのか」等、実現可能性を問う類の批判に、「#女性専用の街」賛同側が「労働力として一部の男性を街に入れる」「テクノロジーが進化することで問題は解決する」といった応答をしたことから、論点が「思考実験としての『女性専用の街』」にずれてしまった。実現可能か荒唐無稽な妄想か、という議論や、こうした設定をモチーフにしたSFの話に移行してしまったのである。批判に対する応答の中で、「男性を女性に都合よく利用する」ようなツイートもみられた。

 結果として、本来の論点であった「女性がいかに普段から性暴力の不安を抱いているか」という問題がうやむやになってしまったように見える。

 性暴力の問題を軽視する傾向は、昨年のハーヴェイ・ワインスタインのセクハラが明るみになったことや、はあちゅうによるセクハラ告発を引くまでもなく、いまも強くはびこっているものだ。これを受け止めない態度こそが、論点をずらしているのだろう。まずは現実を直視し、日本が社会としてこの問題を認識することだ。

保守的な女性観を強化しないで

 一方で「#女性専用の街」の流行に対しての違和感もある。

 「#女性専用の街」のツイートの中には、無条件に「女性だけの街は素晴らしい」と考えているようなものがある。男性に対する敵対視や警戒心が強くなりすぎたあまりだろうか、男性嫌悪の反動として「女性は安心安全であり、優しい生き物だ」という、保守的な「女らしさ」を強化するような価値観が根付いているように見えるからだ。

 これでは結果的に、「母性のある女性が、育児や家事などケア労働を担うべき」という「女らしさ」を押し付ける、保守的な価値観に与することになりかねない。求めていることは「女らしい女」の地位向上ではなく、「人間」として公正に扱われることなのではないだろうか。

参考記事:いちいち「女性の活躍を応援」しないで、人間として扱ってください。白紙になった総務省「ICT48

 「女性にだって悪い奴はいる」「男性にだって暴力をふるわない人はいる」のは自明だ。この当たり前のことを忘れて、「男は」「女は」で性質を決め付けてはいけない。単純な「男性は悪で、女性は正義」という構図、そして「女性は清く正しいもの」という価値観を強化したところで、女性に利することはひとつもないのだ。女はみな清廉潔白な生き物でいなければいけないのかといえば当然答えはNOである。そして性別だけで信用に値する人間かどうかを決めることは出来ない。

 だからといって、女性だけの街で性暴力被害に怯えずに暮らしたいという願いを否定するものではない。先のデータにあるように、性犯罪の被害者のほとんどが女性で、その加害者は男性だからだ。女性のみで構成された集団内にいれば、少なくとも男性による性暴力には怯えずに暮らせるのかもしれない。ただしあくまでもそれは、空想だ。私たちは老若男女共存し、同時に「犯罪者」「悪人」とも共存している。今すべきなのは性別に依拠した中傷合戦でもなく、痴漢など性暴力の犯罪を“解決すべき社会問題”として認識を共有することではないだろうか。

 「#女性専用の街」には、ミソジニー(女性蔑視)に満ちたツイートも数多く投稿されており、こうした事実が、まさに性暴力や性差別がいかに軽視されているかを示している。wezzyでは性暴力が軽視される状況を変化させるべく、理解を促していきたい。
(wezzy編集部)

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