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『きみが心に棲みついた』吉岡里帆のうるパチ瞳の裏に潜む“腹黒いあざとさ”がいかに魅力的か

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『きみが心に棲みついた』公式サイトより

『きみが心に棲みついた』公式サイトより

 今回は『きみが心に棲みついた』(TBS系)に主演する吉岡里帆さんについて。『カルテット』(TBS系・2017年)では魔性の女を演じて強烈な印象を落下し、どん兵衛のCMで男性の心を奪取。今“飛ぶ鳥を落とす勢い”という言葉がふさわしい女優さん。あのウルウルした瞳で見つめられたら、まあみんな言うことを聞いちゃいますよね。ただ、今回のドラマでの役柄はあの“可愛さ”を封印しちゃっています。

“下着メーカーの材料部に勤務する会社員・小川今日子(通称・キョドコ、吉岡)は、母親に愛されず育ち自己肯定間が極端に低い彼女は、大学生時代に好きだった星名漣(向井理)に精神を支配され、就職後もまだ引きずったまま。そんなある日、星名が今日子の上司として姿を現し、動揺を隠せない今日子。星名とは正反対の健全そうな熱血編集者・吉崎幸次郎(桐谷健太)に惹かれていくものの、星名から逃げることは出来ず……今日子の苦闘の日々が始まった……”

 恋愛モノの常連・向井さんを始め、桐谷さんやムロツヨシさんが出演する“新感覚のラブストーリー”とは、なんて楽しいドラマが始まったんだろうと期待してしまった私が甘かったかもしれません。

 終始、挙動不審な吉岡さん。表(公衆の面前)と裏(今日子の前)で態度の変わるサイコパスのような向井さんの演技……第1話を見て、あまりにも不思議だったので原作漫画を読んだところ、このドラマはラブストーリーではなくちょっとしたサスペンスだと解釈。

 ドラマ内の怖さを伝えるのなら、見逃してほしくないのが今日子と漣の関係性。経験がないのであくまでも一般知識でしか話せませんが、DV被害者の多くが「彼は悪くない」「いつかわかってくれる」「彼は私がいないとダメ、私もそう」という思考に陥るといいますよね。まさに今日子がその状態で、二人は負のループのような依存関係。

 誰からも愛されることなく育ち、コンプレックスの塊だった今日子。挙動不審でいつも誰かの機嫌を伺っている。そんな心の隙を突くかのように登場したのが、容姿端麗でスマートな漣。嘘の優しさを見せて今日子を自分の支配下に置き、男子学生の前で裸にさせるなど、卑劣な命令を下します。今日子はひどい仕打ちを受けているとわかっているのに逃げられませんでした……。

 数年ぶりに再会しても漣の行動は変わりません。今日子が片思いする吉崎との仲を潰そうとしたり、タチの悪い行為はエスカレートしていくばかり。社内人事も今日子が出世しないようにコントロールするなど、バレたら懲戒スレスレ……。

「醜いな、おまえ、ホント醜い」

と、言い放った後に、雨の街中へ今日子を放り出す。

「キョドコのくせに」

と、今日子を睨みつける。

 そのサディスティックかつ腹黒人格の漣に、向井さんの演技が、まあハマっていること。好感度ダダ下がりだと思いますけど、見ていると内心、「もっとやれ」と応援したくなるほどにクセになるのです。

「(省略)私、やっぱり変われません。頑張っても頑張ってもダメなんです、あの人(漣)を卒業できません。(中略)私……醜いんです」

 漣から酷い仕打ちを受けても、こんなふうに自罰的なスタンスの今日子。気の毒な存在ですが、視聴者が応援したくなるタイプでもなく、むしろイラつかせるタイプ。そのヒロインを演じているのが吉岡さんなわけで……グラビア出身でスタイル抜群、可愛さもエロさも持ち合わせている無敵の女性ですが(男性に声を揃えて「吉岡里帆が可愛い!」と言われたら、ぐうの音も出ませんね)、だからこそこんなに弱くて醜い役を演じるなんて意外性があります。

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スナイパー小林/小林久乃

文筆家、編集者、エンタメ&テレビドラマ評(コラム)からの愛酒家。出版社2社で女性ファッション雑誌、情報誌の編集部員を経て、まんまとフリーランスに。ライターの先生や地方で講演と楽しいおしゃべり仕事もしてます。静岡県浜松市出身。アラフォーで正々堂々の独身を誇る…。

@hisano_k

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