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電車内の防犯カメラ設置は痴漢抑止、証拠、テロ対策にもなる? 可能性を専門家に聞く

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卜沢:これによって鉄道会社も利益を上げられる、ということでしょうか?

阿部:首都圏の鉄道マーケットは年間約3兆円で、平均客単価が200円です。5人に1人が着席割増料金で200円多く払い、残りの4人は変わらないとすると、平均客単価が40円、現行の20%アップします。それにより、年間6000億円の増収です。鉄道会社に「すごいビジネスチャンスじゃないですか!」と私たちは呼びかけているんですが、なかなか(苦笑)。

卜沢:鉄道会社が慎重になるのはわかりますが、これだけ誰もが困っていることを解決できる方法があるのなら、実現に向かってほしいですね。

阿部:鉄道会社だけで実行すると、「独占企業が暴利をむさぼるとは、けしからん!」といった批判が出ますが、東京都や周辺県が「都民や県民の生活改善や社会の効率アップのための施策」と説明して防波堤役になれば、スムーズに進みます。改善できるもののなかには、痴漢問題も含みます。

小池都知事の「満員電車解消」公約は?

卜沢:いま現在、鉄道会社が満員電車解消に向けて実際に取り組んでいることはありますか?

阿部:私が『満員電車がなくなる日』(角川SSC新書)を書いた10年前の時点で実施されていたのは、「両サイドの壁や扉に丸みを持たせ車体を膨らませた車両を導入し、輸送力を上げる」「扉の数を4箇所から6箇所に増やして駅の停車時間を短縮する」「クロスシートをロングシートに変えて立席スペースを増やす」……などがありましたが、多くは着席サービスを犠牲にしているので、やむを得ざる方策といっていいでしょう。

阿部:また、混雑を緩和する方策として、オフピーク通勤の奨励や女性専用車両などもありましたが、前篇であげた「5方策」という根本的な輸送力増強のほうが効果は大です。

卜沢:10年前からあまり状況は変わっていないということでしょうか?

阿部:莫大なコストを要する小田急の複々線化は構想から50年以上にしてようやく完成しますが、残念ながら、現にある線路を有効活用した輸送力増強の取り組みはありません。小池百合子東京都知事がせっかく満員電車ゼロを選挙時の公約で打ち出し、都の政策として乗り出す流れが生まれたのですが……

卜沢:私も小池知事の取り組みはいまどうなっているのか気になっています。2017年夏には「時差ビズ」を実施しましたが、具体的にどう動いているのかあまり見えて来ない印象があります。

「時差ビズ」が残した課題は?

阿部:時差ビズは何百社という企業を巻き込んで行われましたが、残念ながら十分な効果は上がっていません。一番満員電車が問題になっている田園都市線では、ピーク1時間の輸送力が4万人のところに8万人が乗っているので乗車率200%です。たとえば、20人出勤するサテライトオフィスを50箇所作ったとして1000人で、満員電車にとっては焼け石に水です。在宅勤務も、満員電車を解消できるほどの人数にするのは容易ではありません。

卜沢:もっと大きな規模の取り組みが必要なんですね。時差通勤の取り組みについてはどう思われますか?

阿部:時差出勤をして8万人のうち4万人が朝6時台の電車に乗ったら、6時台の電車が超満員です。鉄道会社は都知事の政策であれば動くので、東急やメトロは、ポイント制度にしてピーク以外にシフトした人は実質値引きをし、早朝には臨時列車を設定しました。時差ビズは、鉄道会社からすると、売り上げは減りコストは増えるばかりです。民間企業に慈善事業を求めても、社会的持続性がありません。それより、5方策やICカードによる座席購入を実施すれば、さっきお話ししたように、みんなwin-winの関係になれるということを、なんとかして小池知事にお伝えしたいです。

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卜沢彩子

1987年生まれ。子どもの頃からの度重なる性被害経験を、2009年から実名・顔出しでサバイバーとして発信。個人やNPOで支援・啓蒙活動をつづけている。2016年に複雑化した社会問題を解決するためにA-live connectを開業。恋愛・性をはじめとした人間関係やコミュニケーションに関する相談や講演活動、記事執筆、SEX and the LIVE!!プロジェクトの運営など場作りを行っている。英才教育を受けたオタク。和柄とねこが好き。

twitter:@ayakourasawa

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Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2017年 10/17 号 知られざる小池百合子