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でたらめな子育てサイトに引っかからないための2つのコツ

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Thinstock/Photo by BrianAJackson

※この記事はメタモル出版ウェブサイトに掲載されていた森戸やすみさんの連載「小児科医ママの子どものケアきほんの『き』」を再掲載したものです

 子どものいる方は、家事に子育て、人によっては仕事も並行してやっているから、時間がいくらあっても足りません。だから、子どものケアについての情報収集はスマホでするという人は多いでしょう。そして、スマホで検索して上位に出てくるものを参考にしてしまうかもしれません。

 ところが、検索すると上位に表示されるのは、でたらめな記事の多い子育てサイト・ママ向けサイト・健康サイトなどです。正しい情報から順に表示されるわけではありません。

特にコラムサイトをまとめたキュレーションサイトには、間違った情報があまりにもたくさん掲載されています。情報を精査するなどのコストをまったくかけずに、センセーショナルな記事でPVを稼げば、儲かるからでしょう。

 では、おかしな子育て情報に引っかからないようにするには、どうしたらいいでしょうか。ネット検索しないというわけにはいかないでしょうから、わかりやすい2点をあげてみます。

1☆誰が書いたのか/取材・監修を依頼しているかをチェック

 たとえば、よく「母乳にはお母さんの食べたものがダイレクトに出る」、「粉ミルクを飲んでいるとIQが低くなる」などという記事があります。しっかり読んでみると、専門家に取材も監修も依頼していなくて、根拠を示してもいない主観だけの記事だったりします。

 これらのサイトの多くには、「ママ(パパ)ライターになりませんか?」というような募集がよく掲載されています。つまり、ライターとしての経験を積んでいない人が記事を書いているわけです。それでも記事の内容が、子育て体験記やお出かけスポットなどのことならいいかもしれません。

 でも、健康に関わる記事は、アルバイト感覚で気軽に書いてはいけません。うっかり「予防接種は受けずに、感染症になった子から移してもらおう」というような記事を書いてしまって、どこかの子が合併症に苦しんだり、後遺症が残ったりしたら誰が責任を持つのでしょうか?

 ですから、まずはどういう人が書いているのかを確かめましょう。素人のライターさんが、ネットの情報や画像を拾ってきてまとめたものだったら信用してはいけません。書いた人の署名があって、所属や経歴がきちんとあって、ライターさん自身が専門家であるか、または専門家に取材や監修の依頼をしていれば一考の価値ありです。が、それでも安心できません。

2☆誰に取材・監修を依頼しているかをチェック

 次に、その取材や監修の人選はどうかをチェックしましょう。その専門家は、その分野で多くの同業者から支持されているでしょうか? はっきりした根拠を提示しているでしょうか? 専門家の資格はあっても、根拠もなくただ極端なことを言っている人たちもいます。

 たとえば先日、あるママサイトに、医者が書いた本をもとに「赤ちゃんへのビタミンK投与」を否定するような記事が掲載され、多くの医療関係者や一般の方たちから批判が殺到し、記事が削除されるということがありました。

 出生後すぐの赤ちゃんにビタミンKを与えることは、とても重要です。ビタミンKは、胎内でお母さんからもらいにくく、母乳中にも少なく、赤ちゃん本人が作ることも難しいからです。乳児期早期にビタミンK欠乏症になると、8割以上の子が頭蓋内出血を起こします。こういったことは基礎研究・臨床研究でわかっており、ビタミンK製剤の効果が高いという国際的なコンセンサスもあるのです(※1)。ビタミンK投与などを真っ向から否定する医者がいたら新鮮に思えるかもしれませんが、あまりにも危険です。

 このように記事の内容によっては人の命にも関わります。他の専門家が言う以上の科学的な根拠を示せない突飛な意見には従わないようにしましょう。

 このような子育てサイトで、子どもに健康被害が出かねない記事を見つけ、運営会社に苦情のメールを送ったこともありますが、検証したり訂正記事を出したりすることはなく、あっさり記事が削除されるだけでした。

 そのほか、「さまざまな意見を載せる方針なので」と答えたサイトもありました。しかし、両論併記すればいいというものではありません。「一般的な根拠のある説」と、「極端な根拠のない説」を同等の正しさがあるように載せて、いろんな意見があると言い逃れするのはおかしなことです。 では、編集という職業がある意味は、メディアとしての責任はどうなるのでしょうか。

 「病院での出産、助産院、自宅、どれもチョイスだよね」ではないのです。現代では圧倒的に病院での出産が多く、自宅分娩の減少とともに乳児死亡率は激減しました。当然ですが、これは赤ちゃんが丈夫になったのではなく、医療が発達し、病院での出産で命を救えるようになったからです。助産院や自宅での出産について記事を書く場合には、どんなリスクがあり、緊急時にはどんな対応方法があるのかまで正確に載せないといけません。

 同様に、離乳食について「早ければ早いほどいい」「厚労省がすすめるように生後5~6か月頃からがいい」「遅ければ遅いほどいい」という説を同じ土俵に乗せてはいけません。以前、アメリカで離乳食を早く開始することが流行した結果、喘鳴を起こす子が増えたり、月齢が小さいうちは母乳やミルク以外のものはむしろ有害といったことがわかったりして廃れました。一方、1~2歳まで離乳食をあげずに母乳だけにすると、母乳性貧血や栄養不足になる危険性が高く、アレルギーの予防にもならないのです。ですから、確実に生後5~6か月からは離乳食が必要だという「事実」があるわけで、いろんな「意見(正解)」があるわけではありません。

 お子さんのアレルギーが心配なときに「離乳食を遅らせればアレルギーを防げる」という記事を見たら、信じたくなるかもしれません。予防接種を受けるなんて痛そう、同時に何本も打つなんてかわいそうと感じているときに「ワクチンはいらない」なんて記事を見たら、予防接種をしないでいることを正当化できそうな気がします。でも、願望と事実は違うものです。

 かわいいお子さんを守るために、突飛な説や目新しい説に惑わされず、ぜひ情報を選ぶ技術を身につけてくださいね。

(*1)http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/saisin_110131.pdf

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森戸やすみ

二児の母。一般小児科、NICU(新生児集中治療室)などを経て、世田谷区のさくらが丘小児科クリニック勤務。医療者と非医療者の間をつなぐような記事を書いていきたいと思っている。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、『祖父母手帳』などがある。

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