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性暴力被害ワンストップ支援センターが必要な理由 成果目標を達成してもなお残る課題

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Thinstock/Photo by lolostock

 今月1日、性暴力被害ワンストップ支援センターが富山県に開所した。専門の女性支援員2人が24時間365日、電話相談に応じる。県が主体となり設置・運営する同様の施設は富山県内では初めてのことだ。

 男女共同参画社会基本法に基づき2015年12月に閣議決定された「第4次男女共同参画基本計画」では、「行政が関与する性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター設置数」を2020年までに各都道府県に最低1カ所とする成果目標が設定されており、各自治体にセンターの設置を促している。

 しかし、今回設置された富山県のセンターは全国で42カ所目で、山梨、静岡、奈良、愛媛、高知には同様のセンターはまだ設置されていない。また、毎日24時間相談を受け付けるセンターは、同センターを含め11カ所しかないのが現状だ。

ワンストップセンターは24時間運営が必須では?

 「ワンストップセンター」とは、その名の通り性暴力の被害に遭った場合に「ワンストップ」で必要な治療や支援を受けられる施設のことを指す。2012年に内閣府が作成した『性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター解説・運営の手引』によると、ワンストップセンターの核となる機能は大きく2つに分けられる。ひとつめは「支援のコーディネート・相談」、そしてもうひとつは「産婦人科医療」だ。

 「支援のコーディネート・相談」とは、被害者の方の気持ちに専門的な知識を持った相談員が寄り添い電話や来所にて相談にのること、そして、必要な支援の選択肢を示し、必要な支援をきちんと受けられるように関係機関や団体につなぐことだ。

 「産婦人科医療」は具体的には、救急医療・継続的な医療・証拠採取等が挙げられる。

 「救急医療」とは、外傷がないかどうかの診察や治療のことを指す。性暴力の被害者は身体に外傷を受けていることがあるため、診察、そしてときには治療が必要となる。また、妊娠や性感染症の検査、緊急避妊薬(モーニングアフターピル)・性感染症治療薬の処方も必要となることもあるのだ。

 「継続的な医療」とは、継続的な経過観察や治療のことを指す。心身の負傷状況によっては、救急医療の後も継続的な治療や、場合によっては中絶手術が必要なことがある。

 「証拠採取」とは、後に警察に通報するときのために被害者の身体や下着などから加害者を特定できる証拠を採取しておくことを指す。

 ワンストップセンターには、これらの支援がそこに行けばワンストップで受けられること、そして24時間相談可能であることが望まれる。例えば、緊急避妊薬(モーニングアフターピル)は行為後できる限り早い服用が望まれる。遅くとも72時間以内の服用により81%の避妊率があるという結果が報告されているのだ。

 また、証拠採取・保全の観点からも、24時間運営が望ましいだろう。被害に遭った後、ずっと同じ衣服を身につけていること、保管しておくことは精神的負担が大きい。また、被害に遭った後、できるだけ早く身体を洗い流したいという気持ちになるのも当たり前のことだろう。被害者にできるだけ負担をかけずに、証拠をひとつでも多く残しておくためには被害後すぐに駆け込めることが望ましいのだ。

 催眠効果などのある薬(レイプドラッグ)を使用されている場合もある。このような、いわゆるレイプドラッグを使用した性犯罪については内閣府も特設ページを設置し、その危険性を周知し始めている。薬によっては、摂取後数時間で体外に排出されてしまうものもある。しかも、お酒に混入して摂取させられた場合などは意識の混濁や、記憶の喪失が飲酒によるものなのか、薬物によるものなのかの判断は素人にはほぼ不可能だ。そもそも、日本ではまだレイプドラッグというものの存在の認知が進んでおらず、「レイプドラッグを使用されたかもしれない」と思い至ることさえ難しいだろう。だからこそ、とりあえずセンターへ駆け込みさえすれば全てのことがそこで完結することが重要なのだ。少なからずセンターのすぐ近くの病院などでできる限り早く治療などを受けられることが必要ではないか。

各都道府県に1カ所ずつでは不十分

 さきにも述べた通り、内閣府は「行政が関与する性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター設置数」を2020年までに各都道府県に最低1カ所とする成果目標を設定している。しかし、各都道府県にひとつあったとしてもセンターから遠い場所で被害に遭った場合、すぐさま足を運ぶのは難しい。ましてや、被害後は心身ともに大きな負担がかかっている。自分で行き方を調べ、土地勘のないところまで足を運ぶのはさらに困難だ。

 2010年に出された国連の「女性に対する暴力に関する立法ハンドブック」では、女性20万人につき1カ所のワンストップ支援センターを設立すべきとしている。東京都の女性の人口がおよそ700万人なので、東京だけでも35カ所のワンストップセンターが必要ということになる。つまり、2020年の設立目標である各都道府県に最低1カ所とする成果目標を達成してもまだ不十分なのである。

 また、運営体制についても24時間365日相談を受け付けているセンターは全国で11カ所しかなく、夕方に閉まってしまうセンターも少なくない。警視庁の発表によると、都内で発生した強制性交等は、全体の約51%のケースが午前0時から午前7時までの間に発生しているという統計結果もある。残念ながら、設立数、運営体制ともに不十分であるというのが今の日本のワンストップセンターの現状だ。2015年に内閣府が、男女5000人を対象に行なった調査によると、異性から無理やりに性交された経験のある女性のうち、警察に連絡・相談したのはわずか4.3%だった。そして、どこ(だれ)にも相談しなかったという人の割合は67.5%にものぼった。この調査ではまとめられていないが、異性から無理やりに性交された経験のある女性だけでなく、同性の被害から、あるいは男性の被害者も存在する。

 昨年は、セクシュアル・ハラスメントなどの性暴力への関心が高まった一年であった。性暴力被害の実態を社会が理解していくだけでなく、より具体的に支援や制度を拡充させていくことも同時に行わなければいけない。課題は山積している。
(もにか)

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