社会

EM菌が各地で「環境教育」として使われていることの問題

【この記事のキーワード】
EM菌が各地で「環境教育」として使われていることの問題の画像1

Thinstock/Photo by OSORIOartist

 今月12日、愛知県南知多町の公式ツイッターアカウントが、EM菌(後述)を使って川をきれいにすることを推奨する投稿を行っていた。

 ツイートの中で紹介されている資料でEM菌のことは「食品加工などに利用される安全で役に立つ乳酸菌や酵母菌といった微生物を集めたもので、様々な汚れをきれいにして、ものを腐らせる菌を抑え働きを持っています」と説明されている。南知多町はこのEM菌を、役場本庁(環境課)や役場各サービスセンターなどで無料に配布し、河川の浄化に利用してほしい、としている。

 EMとは「Effective Microorganism(有用微生物群)」のことで、琉球大学農学部教授だった比嘉照夫が命名したものだ。「EM研究機構」ではEMは「土壌改良/害虫抑制/ヘドロの減少」など様々な効果があることが紹介され、さらに比嘉照夫は「甦れ!食と健康と地球環境」という連載の中で、「(EMには)C型やB型肝炎のウイルスを完全に消滅し得るという事例が多数、確認され、エイズはもとより、ヘルペス、インフルエンザ等々のウイルスに対しても万能的な力を発揮」していることや、外部被曝・内部被曝にも有効である、といった記事を多数執筆している。

 結論から言えば、EM菌は「疑似科学」いわゆるトンデモである。すでにインターネット上に多数、EM菌の問題は指摘されているため、詳細は以下に紹介する記事に譲る。

なぜEMEM菌)はインチキでニセ科学と言われるのか
ニセ科学とつきあうために
自然水系へのEM投入から「環境教育」を考える

 南知多町がこのEM菌を利用し始めたのはつい最近のことではない。自治体のHPで確認できる限りでは、平成18年に発行されている「広報 みなみちた No.725」の環境特集「きれいな川や海を未来の子どもたちに」で、「EMで川をきれいに」という謳い文句と共に、EM発酵液なるものの作り方や、EM活性液を無料配布していることが説明されている。

 なおこちらのサイトによれば、2005127日に開かれた愛知県の企画環境委員会で、中村友美議員(現・民進党)が、EM菌を使った水質浄化を推奨する中で、南知多町の取り組みを言及していたようだ。

 上述のサイトを見ればわかるように、EM菌は南知多町だけではなく、全国の自治体で利用されている。さらに国会でもEM菌の推進を提唱していた議員がいたようだ。さらに、例えば新潟県見附市では、2010年に「市内全小中学校でEM菌によるプール清掃開始」を行うことを自治体HPに掲載。このページには「今後、小学校では環境教育の一環として、児童が米のとぎ汁を入れた2リットルのペットボトルを家から持ち寄ってEM菌発酵液を作り、それをプールに投入して、来年6月ごろのプール清掃を行う予定です」とあり、疑似科学であるEM菌が、「環境教育」としても利用されていることがわかる。プールを洗浄することを目的にEM菌を使用することや、積極的に教材として使用している幼稚園や学校は見附市だけでなく、全国各地に存在している。

 インターネット上では、EM菌を信じている保護者が、学校にEM菌の活用を推奨していることがわかるブログ記事なども見られる。おそらくこうした人びとは、善意で自治体や学校にEM菌の活用をおすすめしているのだろう。しかし、本当に川や子どもの使うプールを綺麗にしたいと思うのであれば、科学的に実証されている確かな手法を用いるべきだろう。目的は水質浄化であって、EM菌の利用ではないはずだ。信用性の低いEM菌に税金が使われていることも問題だろう。

 なによりEM菌が「環境教育」として活用されていることに懸念を覚える。福島第一原子力事故の際に私たちが痛感したのは、高度に科学的な問題をすぐさま、正しく理解し、的確な判断をすることの難しさだ。放射能に限らず、私たちは日常生活の中で正確に理解できているものなど、ほぼないに等しいだろう。必要なことは、全ての物事を完璧に理解するのではなく、少なくとも怪しいもの、トンデモなものにダマされないためのリテラシーを手に入れることであり、自治体、学校などの機関こそ、その要のひとつであるはずだ。大人の私たちですら間違えたり、ダマされてしまうものを、学校で「教育」された子どもたちが信じ込んでしまっても仕方ない。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

もうダマされないための「科学」講義 (光文社新書)