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菅田将暉の父親の「家族本」でどうしても看過できない野良妊婦問題

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 長男の妊娠が判明した際は病院を受診し妊婦健診も受けたそうだ。しかし次男と三男のときは「病院に行かず市販の妊娠検査薬で判定して、私がおおよその出産予定日を算出しました」と菅生氏は綴る。次男は菅生氏が算出した予定日から二週間遅れて誕生したそうだが、足から出て来て初めて、逆子だったため予定日を大幅に過ぎても生まれて来なかったのだと気付いたという。母子ともに健康だったことは非常に幸運だったといえるだろう。

 たしかに妊娠出産は病気ではなく、医療機関に体を管理されることに嫌悪感を抱く人もいる。しかし妊婦健診を受けずにいて、無事出産できればそれでいいが、もしも急変したら一大事だ。妊婦健診をせずかかりつけ医を持たない妊婦は“野良妊婦”と揶揄されることもあるが、野良妊婦が突然、痛みを感じて医療機関に搬送され「飛び込み出産」するケースは、社会問題として認識されている。それまでの経過がまったく不明な状態の妊婦が異常を来たしても、周産期医療の現場は対応しきれない。

 この問題はドラマ『コウノドリ』(TBS系)のファーストシーズン第一話でも扱われた。物語の舞台であるペルソナ総合医療センターに、未受診の妊婦が救急車で搬送された。胎児は何週目か、母体に疾患がないかなど基本的な情報がゼロの状態で診療しなければならないだけでなく、母体が何か感染症を持っている可能性もあるため病院は院内感染を防ぐ対応にも追われる。母子ともに無事を保てる保証はなく、母体も、胎児・新生児も危険にさらされる。ドラマで扱われたケースでは、母体は破水しているが胎児は逆子のうえ酸素が供給されない状態になっており、緊急手術となった。

 どれだけ「自分の体は、自分がよくわかっている」と自信をもっていても何が起きるかわからないのが人生だ。お産は自然なことであり昔は病院がなくても産んでいた、ともいうが、医療の介入がなければ母子の死亡率も高いままだっただろう。

 もちろん自らの意思で“野良妊婦”になる女性ばかりではなく、そうならざるを得ない女性もいる。妊娠に気付かない、妊娠を誰にも言えない事情がある、経済的に困窮している、健診の必要性を理解していない……など様々な理由がある。そうした女性たちを責めるつもりはなく、彼女たちには何より社会のサポートが不可欠である。

 今やコンサルタントでタレントというだけでなく、「菅田将暉の親」としても有名になり、支持者も着実に増えている菅生氏。少なからぬ影響力を持つであろうことから、未受診での出産を礼賛するような記述についてだけは看過できない一冊だった。

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ヒポポ照子

東京で働くお母さんのひとり。大きなカバを見るのが好きです。

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