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石川佳純選手や高梨沙羅選手、女性アスリートをアイドルコンテンツ的に消費するメディアの問題点

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福原愛Twitterより

 少し前の話になるが、先月25日までドイツのブレーメンで行われていた卓球ドイツオープンの女子シングルスで石川佳純選手(25)が優勝を飾った。この大会は、世界を転戦しながら行われるITTFワールドツアーのうち、上位6大会となる「プラチナ」のひとつ。石川選手がワールドツアープラチナでシングルス優勝を果たすのは初めてのことであり、またひとつ卓球選手としてのキャリアの階段を昇ったといえる。

 そんななか、この吉報を伝えたニュースサイト「アサ芸プラス」の記事がいささか残念な話題を呼んでいる。その記事とは、「卓球・石川佳純がキレイになるも“高梨沙羅化”をファンが望まぬ理由」と題されたもの。先月の28日に配信されたものだ。

 記事ではまず、このシングルス優勝の報が届くとファンから〈驚きの声が上がった〉と始まる。それは、そうだ。ワールドツアープラチナでの初めてのシングルス優勝なのだから。そう思って読み進めると、その予想はどうやら筆者の勘違いだったようだ。「アサ芸プラス」の記者は、ファンから〈驚きの声が上がった〉理由について、このように書いている。

〈表彰台の上で笑顔の石川が、これまで以上に美しく輝いていたからである〉

 思わず「はぁ?」と声をあげてしまったが、「いやいや……。記者が〈これまで以上に美しく輝いていた〉と書いた理由として、これに続く文章では、今大会での石川選手の見事な戦いぶりが詳しく解説されているに違いない」、そのような期待を込めながら読み進めてみた。

 しかし、その期待も見事に裏切られる。記事はその後、〈石川は髪をアップにしておでこを出したスポーティーなヘアスタイル。服装はいつものジャージだ。だが、ファンからは「今まで以上にかわいく見える」「ちょっぴり大人っぽくなったかな」「充実してますって顔だな」と美しさとかわいらしさを絶賛する声が続いた〉と書かれていた。石川選手が表彰台に立ったときのファッションはよくわかったが、その大会で彼女がどんなプレーを見せたのかはさっぱりわからない。

「アサ芸プラス」は「卓球王国」(卓球王国)や「卓球レポート」(タマス)のような卓球専門のメディアでもないので、真面目なスポーツジャーナリズムを求めるのもどうかとは思うが、「石川選手の試合運びがどうだったか?」など、肝心の卓球に関する具体的な話がまったくないうえに、彼女のルックスのことばかりに焦点を当てるのはいかがなものか。

 そして記事は、〈石川がキレイになればなるほど、ファンは憂鬱になってくる面もあるという。何でも「スキージャンプの高梨沙羅のようにアカ抜けてほしくない」というのが偽らざる気持ちのようだ〉と、唐突な「高梨沙羅叩き」に移行していく。

 これにはさすがに疑問をもつ読者も多かったようで、インターネット掲示板にすら、〈女子スポーツはアイドルコンテンツなのかよ〉〈いや、知らねーよ。スポーツ選手なんだからいくら可愛くなろうがなるまいが関係ないでしょ〉といった意見が多数投稿されている。

 日本におけるスポーツ選手、特に女性アスリートに押し寄せるのが、この手の「化粧を覚えたりオシャレになった選手を叩く」傾向である。

 その標的として近年最もやり玉にあげられたのが、「アサ芸プラス」の記事にも登場した、ノルディックスキージャンプの高梨沙羅選手(21)だろう。15歳で日本女子として史上初となるワールドカップ優勝を果たした頃は、すっぴんで素朴だった高梨選手だが、大人になるにつれメイクは上達し、どんどんオシャレに。すると、ちょっとでも成績が悪くなっただけで「ファッションにうつつを抜かしている場合か」などというバッシングの声があがるようになった。

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