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妊娠・出産をいつまで「女性の話」にし続ける? 女性だけの問題ではなく労働問題

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Thinstock/Photo by fizkes

 毎日新聞に寄せられた投稿がきっかけで話題に上がるようになった、職場の妊娠順番ルール問題。「女性セブン」2018412日号(小学館)では特集ページでこの問題について『この度は妊娠してしまい、誠に申し訳ございません』と題した企画を組み、保育園のみならず日本の職場における「妊娠」の扱いについて実情分析と問題提起をしている。

 女性週刊誌の読者層がどの年代なのか不明だが、妊娠・出産はあくまで家庭内で解決するテーマだった専業主婦層、働いていたが妊娠を機に退職した層の女性も多いのではないか。妊娠や出産によって退職することや、職場に“迷惑”がかかることも当然であり、個人の事情を職場に持ち込むこと自体を「眉をひそめられても仕方のない自己中心的な行為」と見る向きもいまだにあり、現役でフルタイム労働をしていない女性たちの層にもこの問題を考えてもらうことは大きな意味を持つ。妊娠・出産を取り巻く労働問題は、当事者間だけでなく社会全体に関連している。

 同誌が実施した現役保育士200人への緊急アンケートでは、妊娠の順番を決めたルールについて、「保育士の2.1%が『ある』、13.4%が『似たようなルールはある』と回答」。しかも「『慢性的な保育士不足なので仕方がない』『一気に産休を取るのを防ぐため、仕方がない』との容認論も少なくなかった」という。

 同誌に登場する、名古屋市内の保育園に勤めていたという女性の話によると「妊娠は年功序列で、既婚者の先輩より先に妊娠してはダメ。加えて園長がすごく怒るから、デキ婚は絶対禁止」と指導されていたこと、結婚報告時は「『おめでとう』と言われた直後『まさかデキ婚じゃないわよね』と念を押された」こと、さらには「翌年度への引継ぎをスムーズにするために、3月の年度末から産休を取って5月に出産する」という暗黙のルールが存在しており、そのため「保育士は事実上、78月の期間限定での子づくり」を迫られ、「その時期に妊娠できなければ今年はムリだとあきらめて」いたともいう。職員のライフプランを左右する条件だらけだ。

 しかし女性は「決してパワハラではなく、園長は保育士不足のなかで園児の保育環境を維持するために必死だっただけ」であり、「本当の問題は、そこまでしないと回らない保育園の過酷な職場環境にあるんです」と、園長の思いを汲む。では保育士不足さえ解消できれば、この問題は解決に導かれるのだろうか。保育園に子どもを預ける母親の「本音を言えば、妊娠順番制はアリ」という声も紹介されており、保護者の言い分は「保育士という子供を預かる仕事に就いた以上、周囲を考慮して出産計画を立ててほしい」。すべて“子供のため”という理屈はわかるが、たとえ職場では妊娠が悪く言われないとしても、保護者から文句が出るような状況ではやはり保育士のライフプランニングが難しくなってしまう。保育士に限らず、学校教員なども“子供(生徒)はどうなるんだ”と保護者からクレームを受けることがあるだろう。

 保育士不足は深刻な社会問題であり、「女性セブン」は、保育士の退職が重なった結果、閉園せざるを得なくなった横浜市内の認可保育園の事例、なかなか改善しない保育士の給与・待遇の実態についても斬り込んでいる。しかし一方で、同誌はこの問題を、どうも“女性問題”に集約しようとしている。妊娠順番ルールは保育園のみならず女性の多い職場に存在し、女性が社会で生き抜くために必要不可欠な「忖度」であるようだ……と展開していくのだ。結局のところ、働く女性に向けて「妊娠する時はあれこれ気回ししてうまくやるのよ~」と暗に進言するにとどまってしまっている。

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

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母の友 2017年6月号 特集「父がうまれる」