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『リメンバー・ミー』『ブラックパンサー』〜大ヒットの秘密は“隠れ女性映画”と“アンチ文化盗用”

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『ブラックパンサー』は隠れ女性映画

 『ブラックパンサー』の勢いが止まらない。全米歴代映画ランキングでは現在第5位だが、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』『タイタニック』を抜き、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『アバター』に次ぐ第3位になると予測されている。全世界歴代ランキングでも、ついに10位に食い込んでしまった。ちなみに、トップ10からあえなく脱落したのは、あのメガ・ヒット作『アナと雪の女王』だ。

 日本でも現在公開中の『ブラックパンサー』は、マーベルのアメコミが原作のスーパーヒーローものだ。主人公はアフリカの小国ワカンダの新国王ティ・チャラ(ブラックパンサー)、つまり男だ。ティ・チャラを演じるチャドウィック・ボーズマンのセクシーさはそれだけで一見の価値があるのだが、この作品の見どころは、なんといっても女性たちにある。

 ティ・チャラの元恋人で、スパイとして活躍していたナキア(ルピタ・ニョンゴ)、ワカンダ王国の女性のみで構成された親衛隊の隊長オコエ(ダナイ・グリラ)、ティ・チャラの妹で弱冠16歳ながら科学の天才、ブラックパンサーの最新鋭武器を開発するシュリ。そして、ティ・チャラとシュリの母親で、ワカンダの女王であるラモンダ(アンジェラ・バセット)。

 まさに錚々たる顔ぶれなのだ。なかでもシェイブド・ヘッド(剃髪)の親衛隊長、オコエの強さ・かっこよさ・渋さ・クールさはもうめまいがするほどだ。戦闘シーンもシビれる。『ワンダーウーマン』のバトル・シーンを楽しめた人なら、必ずオコエ・ファンになるだろう。ちなみに、ネタバレになるので詳しくは書けないが、もしオコエが企業勤務で、いきなりの転勤を命じられ、それに対して恋人や夫がグダグダ言ったとすれば、さっさと荷物をまとめて単身赴任するタイプである。ナキアもそれに近いが、やや心が揺れてしまうタイプかもしれない。

 シュリはワカンダのお姫さまだが、ティーンエイジャーならではのチャーミングさがあり、おちゃめで可愛い。それでいて頭脳明晰かつ「やるときはやる」タイプだ。母のラモンダはクイーンとしての気品と威厳を保ち、夫である国王亡き後も一国の存亡をかけて冷静に振る舞い続ける。どのキャラクターも「え〜、どうしよう……」的うだうだ感がなく、観ていて実にスッキリ爽快なのである。

 4人の女性キャラクターは地位、職業、年齢の違いから、それぞれに異なるファッションで現れる。いずれもアフリカの色やデザインにインスパイアされたもので、これも見どころだ。ニューヨークの黒人地区ハーレムに住む筆者は、キュートなシュリのヘアスタイルを真似ている女性を時々見掛ける。

 いずれにせよ、国王ティ・チャラ=ブラックパンサーは、この4人の女性がいなければ宿敵との戦いに勝つことも、国を守ることもできない。ゆえに『ブラックパンサー』は、隠れ女性映画なのである。

おばあちゃんが大活躍の『リメンバー・ミー』

 こちらも日本でヒット中のディズニー/ピクサーの劇場アニメ『リメンバー・ミー』は、家族の絆を豊かな色彩と音楽で描いた傑作だ。主人公は12歳の少年ミゲル。しかし、物語の核をなしているのは、やはり女性たちだ。

 ミュージシャンになりたいミゲルは、メキシコの「死者の日」にひょんなことから「死者の国」へと迷い込んでしまう。死者の日は日本のお盆に似た祝祭で、亡くなった祖先たちが一年に一度、現世の子孫の元を訪れる日である。ガイコツとなった先祖の姿は生きている人間の目には見えないが、家族で集まり、先祖の写真を飾ってメキシコの伝統料理を囲むのである。

 ミゲルは死者の国で、下界を訪れる直前の先祖たちに出会う。その中にミゲルの高祖母、ママ・イメルダもいた。イメルダは生きている時は大変な美人だったが、男運が悪かった。イメルダは甲斐性のない夫にさっさと見切りを付け、幼い娘のココを育てるために無我夢中で自活の道を切り開き、一家を繁栄させる。

 あどけなかったココもやがて成長し、結婚して子を産む。その子がミゲルのおばあちゃん、エレナだ。エレナは今も一家を仕切り、年老いた母親ココの世話をしている。

 つまり、ミゲルはやり手の高祖母ママ・イメルダが亡くなった後に生まれ、大好きな曽祖母ココ、ガミガミ屋の祖母エレナ、まだ若くてやさしい母(ママ)を含む大家族の中で育ったのだった。だが死者の国で高祖母ママ・イメルダに出会い、人生甘くないことを知り尽くしているイメルダに、ビッシリと鍛えられるのである。

 ミュージシャンを目指すミゲルは死者の国で冴えない音楽家のヘクターとコンビを組み、憧れの大シンガー、デラクルスの邸宅に赴く。やがて男3人の間に、ある理由から複雑な葛藤が起こる。だが、3人の存在の背後には、上記の女性たちの人生が色濃く絡んでいるのである。『ブラックパンサー』と同じく、主人公は男性でも、女性なくしてはあり得ない物語なのである。

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堂本かおる

ニューヨーク在住のフリーランスライター。米国およびNYのブラックカルチャー、マイノリティ文化、移民、教育、犯罪など社会事情専門。

サイト:http://www.nybct.com/

ブログ:ハーレム・ジャーナル

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