それではもらった人がお返しをすれば解決する問題なのでしょうか。しかし私は「返さない人が悪い!」とは思えないのです。もらう立場からすると、自分が望んだわけではないのに「もらったから返さなければいけない」というプレッシャーと理不尽さを感じるはずです。いわゆる義理チョコだと返したほうがいいのかどうかわからず、特に日常的に会わない人にもらった場合、「返すためにわざわざ会うほどだろうか……」と考えるでしょう。私もチョコレートをくれた友人にその後しばらく会う機会がなく、なんとなく罪悪感を持ったままになることがありました。
また、そもそもホワイトデーはもらっていない人には無関係の行事ですから、その前後はもらわなかったことを意識してコンプレックスを刺激されます。男性からすると完全に受け身のイベントであり、自分ではコントロールできないのです。バレンタインデーは一方的に評価されるような感覚があるとも聞きます。
ホワイトデーが息苦しいというと、「それなら最初からバレンタインデーに参加しなければいい」「参加するなら見返りを求めるな」「もらっても返さなければいい」という意見もあり、すべてもっともです。しかしこれらのイベントを楽しみたい気持ちがあるのに参加できないのも悲しいですし、贈る側と受けとる側双方でいきなりホワイトデーに対する合意を取るのもむずかしい話です。また職場など義理チョコを贈らないといけない空気のあるコミュニティもあるでしょう。
私がバレンタインデーを好きなのは好意や感謝を伝えるきっかけになり、日本ではチョコレートを楽しめる日になっているからです。普段なかなかいえないことを「せっかくだから伝えよう」と意識できますし、勇気を出して告白してもいいでしょう。
チョコ菓子を手作りして人にあげる機会にもなり、市販でもおいしいチョコレートがたくさんそろうので、恋愛にかぎらず自分ひとりでご褒美チョコを楽しんだり、友人同士で友チョコを贈り合ったりもできます。私も高校時代は家がチョコ工場のようになり、友人とチョコレートを交換して楽しんでいました。
チョコレートが苦手な人にはつらい日になるかもしれませんが、チョコレート以外を選ぶことも増えてきました。男性から贈ることもめずらしくなくなっています。バレンタインデーの形は広がり変化してきています。
ウーマンリブと日本のバレンタインデー
今年は、有名チョコレートブランドGODIVAの「義理チョコをやめよう」という広告が話題になりました。義理チョコを配らなければいけないことに息苦しさを感じる女性も、もらったからにはホワイトデーに返す義務があることを面倒に思う男性も多いでしょう。
私はずっと義理チョコをあげていません。恋愛対象にしかあげていないという意味ではなく、義務感ではなくあげたいと思った人にだけプレゼントしているからです。ホワイトデーの苦しさとこの義理チョコ問題はつながっていると思っています。
そもそもバレンタインデーとはどんな記念日なのでしょうか。もともとはローマで若い兵士の結婚が禁止されていた時代、キリスト教のバレンタイン司祭がこっそり結婚式を行い、それが罪に問われて2月14日に処刑されたことから「愛の日」として記念日になりました。
海外でも国によって違いますが、プレゼントを贈り合う日になっていて、割合としては男性から女性のほうが多いようです。自由恋愛を推奨することになるなど、宗教上の理由によってバレンタインデーを禁止されているところもあります。
日本のバレンタインデーは、基本的に「女性から愛する男性へチョコレートを贈る日」として定着しています。1932年に、神戸モロゾフ洋菓子店が初めて「バレンタインデーにチョコレートを贈る」というスタイルを紹介したのが最初です。その後メリーチョコレートが1958年に東京・新宿の伊勢丹で始めた 「バレンタインには女性から男性へチョコレートを贈りましょう」というキャンペーンが広まり、日本独特のバレンタインデーの起源になったそうです。