また、芸能人がブログ等で発信する育児情報も、極端な意見が見受けられるという実例も。さらにメディアが煽るマタ旅※(宋先生曰く、インスタ界では妊婦・ビキニ・ハワイという組み合わせが鉄板だそう……!)なども危険な面があり、医師から見れば頭の痛い問題だそう。
※妊娠中の女性が旅行を楽しむこと。
どれも「見たことある」「聞いたことある」という実例のオンパレードで、会場のママや関係者の頭が一斉に「あるある」とばかりにうなずいているように見えてしまいました。
「この10年くらいで、急激にみなさんの情報源がネットになってきていることを実感する」と、森戸先生。情報の選択がユーザーに委ねられているのが現状である今、どうすれば? というのが今回のメインテーマです。
宋「情報をひとつひとつモグラ叩きのようにチェックしていくのも悪くないけど、やはり基礎知識が最大の武器となるでしょう。できれば高校で生物や化学を選択していただけるといいのですが」
森戸「情報を選ぶとき、誰かに指南してもらうのではなく『自分で調べたい』人の多さも感じていますが、知識がないまっさらな状態で調べると、結局は〈自分好みの情報〉を集めてしまうだけなんですよね。いわゆる〈感性に頼る〉という状態。ですから、〈基礎知識〉を身に着けるのは確かに重要です」
宋「例えば、生理ナプキンに含まれる高分子ポリマーが体に悪影響を与えるとか、布の生理ナプキンを股にあてただけで生理が整うとか、最低限の知識があれば〈おかしい〉と思えるはずなんです。ちなみに個人的には、医学生向けの教科書である〈病気が見えるシリーズ〉は、かなりオススメできます」
おかしな性教育が背景に
ではきちんと教育を受けていれば大丈夫なのか? と聞かれれば、そうとも言えないという困った現実も。
宋「文部科学省が、性教育の現場でも性交の話をさせないじゃないですか。それなのに家族計画や妊娠についての情報が、教科書に載っていたりする。もし性交の知識がまったくなければ、妊娠その他、何の話をしているのかぜんぜんわからない状態になるんですけどね。他にも怪しい情報を鵜呑みにしちゃダメなんてことも書いてありますけど、だったらまず、教科書に必要な情報をきちんと載せて欲しいですね」
ちなみに今すぐに正しい情報が欲しい!という方は、『専門家ママ・パパの本』シリーズだけでなく、ぜひ当サイトの森戸先生の記事「デマで溢れるインターネットにも、子育てに役立つサイトはあります」もチェックを!
その他、〈医師監修〉と謳われている記事でも単なる〈名前貸し〉であるケースもあり、内容チェックすらされていないケースも珍しくないそう。いかに今は情報を選ぶことが難しいかということを再認識。育児中の親としても情報の送り手としても、襟を正して聞くべき話が盛りだくさんでした。
参加者からの質問タイムには「体質で母乳が出ないことはあるのか」「WHO(世界保健機関)が2歳まで母乳をあげてと言っている理由と根拠」「信頼できるかかりつけ医の見つけ方」「寝かしつけについて」など、ママたちからお悩みの声が次々上がり、「正しい情報を知りたい」という気持ちの切実さが、伝わってきました。