社会

白人家庭に養子として迎え入れられた黒人の子 『THIS IS US』にみる養子・里子、そして人種

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 アメリカNBCのドラマ『THIS IS US 36歳、これから』(原題:This is Us)の第3シーズンが、本国アメリカでは今秋に始まると伝えられている。日本では昨秋、NHKで放映され、現在はアマゾンビデオ、ひかりTVなど15社が配信中だ。

 1980年の夏に三つ子を産み、子育てに苦闘する夫婦の葛藤と、家庭を築き上げる喜び。2016年に36歳となり、異なる人生を歩む三つ子それぞれの、よりよい人生への模索。1980年代のシーンが何度もフラッシュバックを繰り返し、三つ子の現在の人生の土台が露わになる。子供を何よりも大切なものとして育て上げた両親。だが夫婦間、親子間、きょうだい間には強い絆とともに、傷付け合い、牽制し合う緊張感もある。これらが複雑に絡み合った家族の機微が、観る者を強烈に惹き付けるのが『THIS IS US 36歳、これから』だ。

 他に類を見ないユニークな構成の本作は高い評価を得、2017年のプライムタイム・エミー賞ではドラマ部門10部門にノミネートされた。出演俳優の中では三つ子のひとり、ランダルを演じるスターリング・K・ブラウンの評価がとくに高く、昨年のプライムタイム・エミー賞の主演男優賞(ドラマ部門)に続き、2018年のゴールデングローブ賞でも主演男優賞(ドラマ部門)を受賞している。ちなみにブラウンは現在、記録的なヒットとなっている『ブラックパンサー』(『リメンバー・ミー』『ブラックパンサー』〜大ヒットの秘密は“隠れ女性映画”と“アンチ文化盗用”)にもブラックパンサー/ティ・チャラの叔父役で出演している。

 ドラマには一家5人、成人後の三つ子それぞれのパートナー、さらにその子供たちも登場し、物語は非常に複雑だ。本稿ではドラマの全体像ではなく、三つ子のひとりでありながら実は養子であるランダルというキャラクターを軸に、「養子と里子」のシーンについて記す。

(以下、ドラマのシーンを元に養子・里子を解説するため、完全ネタバレ要注意)

実子と養子、白人と黒人の三つ子

 3週間の早産の結果、三つ子のうち末子は死産となる。三つ子の誕生を心待ちにしていた両親、レベッカとジャックは大きく落胆するが、同じ日に生まれ、実父によって消防署に捨てられた黒人の赤ん坊を養子として迎え入れる決意をする。

 白人家庭に迎え入れられたランダルは成長にしたがい数々の人種問題を体験しながらもレベッカとジャックを両親として、実子のふたり、ケイトとケヴィンを三つ子のきょうだいとして心から愛する。だが、ひそかに実の親を探し求め続ける。

 36歳となり、社会的にも経済的にも成功し、妻、ふたりの娘とともに幸福な家庭を築いたランダルは、ついに実父と巡り合う。やがてランダルは自身の体験から養子を迎えることを決めるが、紆余曲折の結果、里子を引き取ることとなる。

新生児を消防署に置き去り

 ランダルの実父は生まれた赤ん坊を持て余し、消防署に連れて行く。アメリカには「セイフ・ヘイヴン法」という法律があり、新生児を育てられない(と思う)親は消防署、教会、警察署、病院など、赤ん坊の安全が確保できる場所であれば「置き去り」にできる(詳細は州により異なる)。氏名や住所を伝える必要もなく、罰せられることもない。子の生命を最優先させるための法であり、日本では熊本市にある慈恵病院のみが設置している「赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)」と同様の策だ。

 セイフ・ヘイヴン法が制定されたのは1999年だが、それ以前より消防署は赤ん坊を置き去りにする場所として使われることがあった。警察や病院などに比べて人の出入りが少なく、置き去りの瞬間を見られる可能性が低いからだと思われる。

 本作では消防署員がランダルを見つけて病院に運び、ランダルは新生児室に収容される。それを見たジャックは子を亡くして放心状態のレベッカを説得し、ランダルを三つ子のひとりとして育てることにする。

ソーシャルワーカーの家庭訪問

 養子を前提に子供を家庭に迎えても、家庭裁判所から養子の最終認定が降りるまでの数カ月間は「査定期間」だ。子供は行政の監視下にあり、養親候補者は子供を「預かっている」だけである。

 したがって家庭には定期的にソーシャルワーカーが訪れ、子供がきちんと育てられているか、家庭内が衛生的かつ安全かなどを確認する。時には抜き打ちでやってくることもある。不備な点があれば親はソーシャルワーカーから注意を受ける。「不備」のレベルが限度を超えているか、もしくは児童虐待が発覚すれば、養子認定は為されない。

 レベッカとジャックはソーシャルワーカーの心象を良くしようと健闘する。ソーシャルワーカーが訪れる日はふたりで家の中を大掃除するが、幼い三つ子がいる家庭では至難の技だ。もっとも、ソーシャルワーカーはプロであり、家庭の事情も理解している。多少散らかっていた、子供に甘いものを与えている、くらいで記録に残すことはしない。子供の健全な成長に実際に影響する部分だけを目敏くチェックするのである。

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堂本かおる

ニューヨーク在住のフリーランスライター。米国およびNYのブラックカルチャー、マイノリティ文化、移民、教育、犯罪など社会事情専門。

サイト:http://www.nybct.com/

ブログ:ハーレム・ジャーナル

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