ニューヨークは楽しい都市だ。ブロードウェイでミュージカルを観るもよし、五つ星レストランでグルメな食事を堪能するもよし、ヒップなブルックリンでショッピングするもよし。けれどニューヨークの真の魅力は、ニューヨーカーの多様性にある。
誇張ではなく、世界中からの移民がニューヨークという大都市の構成員だ。かつてニューヨーカーの代名詞とも思われた『セックス&ザ・シティ』のキャリーのような女性も実際に存在するが、ああいったタイプは実はごく少数。むしろマイノリティこそがニューヨークの主役なのである。
その証拠に市内で使われている言語は200種以上にのぼり、誰もが知る中国系コミュニティ=チャイナタウンだけでなく、ユダヤ系コミュニティ、ロシア系コミュニティ、アラブ系コミュニティ、メキシコ系コミュニティ、インド系コミュニティ、韓国系コミュニティ……など、さまざまなエスニック街がある。ニューヨーク市内をくまなく歩くだけで、いわば世界一周旅行ができてしまうのである。こんな都市は、あとにも先にもニューヨークだけだ。
NYC基礎情報
ニューヨーク市(NYC = New York City)はニューヨーク州最大の都市であるだけでなく、全米最大の都市だ。850万人を超える人口を持ち、人口全米第2位の都市ロサンジェルスの2倍以上、第3位のシカゴの3倍以上となっている。ただしニューヨーク州の州都はNYCではない。州都アルバニーはNYCから列車で3時間ほど北上した場所にある。
NYCはマンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタテンアイランドの5つの区から成る。マンハッタン、ブルックリンとクイーンズ、スタテンアイランドはそれぞれ島であり、アメリカ大陸に位置するのはブロンクスのみ。お互いにトンネル/橋でつながっており、地下鉄、バス、乗用車、またはフェリーで移動できる。
市内には公営の地下鉄とバスが走り、とくに地下鉄はNYCのシンボル、アイコンとも言える。車社会アメリカにあってNYCが非常にユニークな点のひとつだ。NYCから州内の他の市や郡への中距離列車メトロノースとロングアイランド鉄道も公営であり、私鉄はない。ただし全米を網羅する民間の長距離鉄道アムトラックの大型ターミナルは存在する。
マイノリティが多数派の都市
ニューヨーカーのうち白人の割合はわずか3人にひとりであり、人種的マイノリティが “多数派” だ。
白人:33%
ヒスパニック:28%
黒人:25%
アジア系:12%
ヒスパニック(ラティーノ)の定義はスペイン語圏出身者とその子孫(一般的には中南米カリブ海出身者とその子孫)であり、人種区分ではないが、文化的視点からアメリカでは「白人/黒人/ヒスパニック/アジア系」と分類することが多い。
アジア系には東アジア(日中韓)、東南アジア(フィリピンなど)、南アジア(インドなど)が含まれる。
3人に1人が移民
NYCの全人口のうち、37%にあたる300万人以上が外国生まれの移民だ。
移民は英語が上達しても同国人同士では母国語で話す。同国人カップルがNYCで子供を産むと、多くの場合、家庭内ではやはり母国語が使われる。小学校(5歳)からバイリンガル教育が始まるため、子供は英語と母国語のバイリンガルとなる。中にはやがて母国語が衰え、ほぼ英語のみとなるケースもある。逆に両親が異なる国の出身者の場合、英語も含めて3言語話者となる子供もいる。
いずれにせよ家庭内では英語以外を使うニューヨーカーが非常に多く、「家庭で英語のみを使う」51%、「家庭で英語以外を使う」49%と、市民の半数が家庭では他言語を使っているのである。
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