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『正義のセ』吉高由里子のヒロインが正義感振りかざしてキャンキャン…殺人事件もライトすぎてお仕事ドラマとしての魅力薄

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『正義のセ』吉高由里子のヒロイン像に魅力を感じられない理由の画像1

安田顕Instagramより

 日本テレビの鉄板枠といえる水曜22時の女性主人公ドラマ枠。4月から放送スタートしたのは吉高由里子が主演の『正義のセ』だ。原作は阿川佐和子の小説で、「まっすぐなヒロインが、仕事に恋に悪戦苦闘!」「見た人がきっと元気になれる痛快お仕事ドラマ」という触れ込み。舞台は横浜地方検察庁港南支部で、吉高由里子が演じるのは2年めの新人検事・竹村凜々子。港南支部のメンバーとして、支部長の梅宮(寺脇康文)、デキる先輩検事の大塚(三浦翔平)、妻子持ちの優しげな検事・徳永(塚地武雅)。そして凜々子とバディを組むのはベテラン担当事務官の相原(安田顕)。お仕事ドラマのセオリーに沿って、まだイマイチ仕事は出来ないが、真面目で一生懸命に取り組むヒロインの奮闘と成長が描かれる。

 吉高由里子は昨年同枠で放送した『東京タラレバ娘』に続く主演。『正義のセ』のInstagramは、タラレバ娘のアカウントをそのまま引き継いでいるようだ。脚本演出も『東京タラレバ娘』と同じで、テーマこそ全く違うものの、薄めの味付けでカラッと軽く揚げたから揚げみたいなタイプのドラマという点は共通している。これを「ちょうどいい味わい」と取るか、「旨みに欠ける」と取るかは好みの分かれるところだろう。筆者は竹村凜々子のキャラクターが、よく言えばまっすぐで一生懸命、悪く言えば猪突猛進型でだいぶデリカシーに欠ける人物像である点が好みではなく、また被疑者の自白があっさりしすぎている点なども物足りなさがあって後者の感想を抱いたが……第二話の模様を振り返ってみたい。

 殺人か、傷害致死か、検事が判断しなければいけないというシリアスなテーマの第二話。初の殺人事件担当を任されて凜々子は身震いしつつやる気に燃える。今回の主要人物は、夫(大澄賢也)を殺害した容疑で逮捕された妻(財前直見)。被疑者は夫を凶器で殴ったことは認めているものの、殺害の意図はなかったと主張する。

 凜々子は東京墨田区で豆腐屋を営む庶民的な実家で家族と暮らしているが、家族とのやりとりがそのまま視聴者への解説として機能する。家族が業界素人として視聴者への解説を促し専門用語を含め事件をわかりやすく解説させる役回りだ。「殺人事件は亡くなった被害者から話を聞くことは出来ないから、被疑者の取調べがとても大事」という凜々子に、母(宮崎美子)は「殺すつもりがあってもなくても死んじゃったら一緒じゃないの?」と素朴な質問をする。殺人事件と傷害致死事件では刑期が大きく異なり、「だからみんな『殺すつもりはありませんでした』と言うの」と凜々子は説明。というわけで、被疑者の主張が事実なのか、殺害現場でその時何が起こっていたのかを解明していく。

 被疑者は、夫の暴力から身を守るために誤って殺してしまったという主婦・町田かれん。被疑者は一発殴ってからは記憶がない、日常的に暴力をふるう夫ではなかった、結婚して25年円満だったと話し、「うちはうまくいってたんです。もうすぐ、銀婚式だったのに、こんなことになってしまって」と涙を流す。素直に信じ込み「気の毒ですね。25年も連れ添った旦那さんを間違って殺してしまうなんて」と同情する凜々子、単純である。しかし町田夫妻の19歳の娘が高校卒業してすぐ家を出ており、居場所がわからないということから、相原は「なんだかおかしい」とかれんの証言を疑う。

 その後、被疑者が40代とみられる男性と頻繁に会っていたという複数の目撃証言や防犯カメラの映像から「町田かれんには“男”がいたかも」との情報を警察が提供。すると凜々子は「不倫は許せないです!」と息巻く。事件現場へ行き、冷蔵庫や寝室チェックの上、ご近所さんの井戸端会議に勢いよく首を突っ込み、町田家が出したであろうゴミに離婚届の紙が入っていたことを知った凜々子は、 「夫と別れようとしていたと考えると辻褄が合う、やっぱり不倫してたのかな」と疑いを強めていく。

 司法解剖でも被害者は側頭部に数回にわたる殴打痕が重なっていることから少なくとも5回は殴打されていると判明し、「殺意があった、傷害致死ではなく殺人の可能性が高い」との疑いが強まる。一連の事実を持って凜々子は鼻息荒く被疑者を問い詰め、供述との矛盾の説明を求めるが、あっさりかわされた上、言い負かされてしまう。悔しさのあまり、トイレで「ダメだダメだ負けた~~~!!!!」と大声で叫び頭をガンガン壁に打ち付ける行動に出る凜々子。毎度のことらしい。

 そうこうしているうちに、警察は着々と調べを進め、町田かれんが会っていた男の身元が判明。不倫の相手ではなく、中高年向けに就職を斡旋する会社の社長だった。被疑者は結婚から25年、専業主婦だったが、事件前に就職先を決めていたのだ。彼女は住宅補助制度がある職場を希望しており、離婚して一人で生きようとしていた様子だ。このことを受けて凜々子は「私、町田かれんのことがわからなくなってきました。どうすれば彼女のことがもっとわかれるのか……」と混乱する。

 さらに警察は、被疑者のスマホデータも提供。電話帳のアドレス登録はわずか21件で、通話記録やメールも就職に関するものだけ。SNSにもアカウント登録はしているものの、投稿はゼロ。ただし1つだけフォローしているアカウントがあった。それは、家を飛び出して行方の分からなくなっている一人娘のアカウントだった。被疑者は母だと名乗らず他人のふりをしてコメントのやりとりをしていたのだ。凜々子は「娘さんに会いましょう。会えば、町田かれんが本当はどんな人間なのかわかる気がします」と、娘の働く漁協へ急行。そこで働く町田まりあは、被疑者の娘だけれど殺された被害者の娘でもあるわけだが、「被疑者の娘」としての姿しか描かれない。母親が父親を殺した容疑をかけられている状況、って、もうちょっと複雑な心境でも良さそうなものだが、軽すぎである。父親の葬儀とか親戚とのやりとりとかもなくていいんだろうか。

 曰く、殺された父親はかねてより暴力夫で、被疑者は散々、殴る蹴るの暴行を受けてきた。娘のためにと我慢してきたが、娘としてはそのこと自体が耐えられず、家を出た。しかしSNSにいつも「いいね」や温かいコメントをくれているのが母だということを凜々子から教えられた娘はあっという間に母を許し、手紙まで書いて「罪を償ったら一緒に暮らそう」と呼びかける。娘の手紙をもらった被疑者はあっさり完落ちして「殺すしかない、そう思って夫を殺しました」と殺意を告白し、罪を償うという。全てが簡単に一件落着しすぎ! 難関ポイントが完全にゼロ! 凜々子ら検察が頭を働かせたところが一切なく、警察の情報提供ですんなり事件解決! これ、面白いんでしょうか……?

 これ以上ないほど単純明快すぎるストーリーで、殺された被害者が「悪」。事件の被疑者の感情や「本当はどんな人間なのか」にスポットを当て、家庭環境を掘り下げる。つまり、「ドラマのための事件」でしかなく、凜々子の成長のためにお膳立てされたものにしか見えない。しかも凜々子は最後まで被疑者に同情的だ。これが「お仕事ドラマ」と言われても、簡単そうなお仕事だなあとしか思えないし、ヒロインにもストーリーにもまるで魅力がない。ちなみに凜々子の実家の後継問題も揉めていたのだが、父親の心の動きが描かれるわけでもなく終盤であっさり解決。あっさりしすぎでは。ただ、ここまでウルトラライトなドラマの方が、見ていて楽しいという視聴者層も少なからずいるのだろう。

(清水美早紀)

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