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映画『ママレード・ボーイ』吉沢亮はなぜ金髪? トレンディ学園ドラマも駆け足すぎて不発

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映画『ママレード・ボーイ』オリジナル・サウンドトラック

映画『ママレード・ボーイ』オリジナル・サウンドトラック

 427日より公開中の映画『ママレード・ボーイ』(廣木隆一監督)。興行ランキングは『名探偵コナン ゼロの執行人』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『レディ・プレイヤー1』など人気作・大作が上位に君臨し、初週8位とふるわぬスタートだった。今から2326年前に連載された人気少女マンガを原作とした本作、原作ファンは子育て世代となり子供向け映画にシフト、メイン俳優たちのファン層でこうした学園恋愛ドラマに胸をときめかせる1020代の客層は原作を知らず……というターゲット不在感も大きいかもしれない。原作マンガの連載当時に毎月楽しませてもらっていた筆者は子育て世代だが、ひとり劇場観賞をしてきた。公開から間もない日だったが、劇場は空席が目立ち、自由に席を選ぶことができた。

 二組の中年夫婦が離婚、パートナーを交換して再婚、さらにはそれぞれの子供を含めて6人で同居(シェアハウス)することとなり、双方の娘と息子が恋に落ちる。なかなか複雑なストーリーだが、原作は吉住渉による少女漫画で、19921995年にかけて少女漫画誌『りぼん』(集英社)で連載され、1994年にはアニメ放送が始まるなど大ヒットした。およそ四半世紀を経て実写映画化が実現したことになるものの、2013年より『Cocohana(ココハナ)』(集英社)で続編『ママレード・ボーイlittle』が連載中で現在進行形の物語の原点でもある。ただし、20年以上も前のヒットマンガを現代に置き換え、しかもわずか2時間の尺におさめるのは少々無理があったように思う。

 まず今回の実写映画の配役と簡単なあらすじを紹介しておきたい。

・小石川光希(みき):いわゆる普通の女子高生/桜井日奈子(21
・松浦遊(ゆう):イケメンでミステリアスな男子高校生/吉沢亮(24
・秋月茗子:光希の親友で大人びた女子高生/優希美青(19
・須王銀太:光希の男友達/EXILEの佐藤大樹(23
・小石川仁:光希の父、銀行マン/筒井道隆(47
・松浦(小石川)留美:光希の母で遊の継母、化粧品メーカー勤務/檀れい(46
・松浦要士:遊の父、商社勤務/谷原章介(45
・小石川(松浦)千弥子:遊の母で光希の継母、洋酒メーカー勤務/中山美穂(48

 

<※以下、ネタバレあり>

 

 小石川夫妻と松浦夫妻はもともと大学時代の仲間だが子供たちにはそれを隠し、旅先で知り合いパートナーを交換して再婚(よくよく考えればそれはスワッピング……?)することになったと説明。90年代の少女漫画で、両親共働きでしかもバリキャリ設定というのも珍しかったが(ちなみに母親が漫画家・小説家・脚本家という設定はよくあった)、とことんトレンディな作風だったので「都会ってこんな感じなのか」と当時は納得していた。

 キャスティング発表の時点で衝撃的だったのは、遊を演じる吉沢亮が金髪になっていたことだ。確かに遊の髪色は原作でもアニメでも明るいが、あれらを金髪だと解釈したことは、少なくとも私はなかった。観終わってからも正直、遊の髪をなぜ金髪する必要があったのかわからない。原作は原作、映画は映画、だから原作と映画は別物、という大前提はあり、廣木監督も主要キャストの面々に原作にとらわれすぎないように伝えていたというが、ならば尚のこと、髪色を明るくしなくても良かったのでは。

 ストーリーも原作に忠実で、主役の二人の恋愛模様を軸にしている(脇役陣の恋愛模様はほぼ割愛)。ただ映画の尺では駆け足にならざるを得ず、原作では光希と遊が高1の春に親の都合で一緒に暮らしはじめ、徐々に互いの距離を縮めていき、遊が光希に秘密(自分は要士の子ではない)を打ち明けるのは高2の秋、ふたりが恋人同士になるのは高2のクリスマス前と「くっつく」までにそれなりの時間を要している。対して実写映画は高3からのスタートであり、両親の交換結婚に伴う6人同居開始からほどなくして遊は光希に秘密を打ち明け、両親Sが正式に再婚して新婚旅行に行っている間にふたりは両想いになる。ところが遊は両親Sの若かりし頃の写真を見つけ、自分の父親は仁であり自分と光希は血のつながった兄妹だと思い込み苦悩。この間には、茗子と教師の恋愛(淫行)や、銀太から光希への恋愛感情などもあり、まさにトレンディドラマのごとくジェットコースター的であった。それが良い方に作用すればいいのだが、残念ながら、まるで総集編を観ているようだった。

 とりわけ物足りなさを感じるのは、遊の心理描写が丁寧とは言えない点である。原作では、光希と自分は兄妹だと思い込んだ遊が「気持ちが冷めた」と嘘を言って光希に別れを告げ、何も知らない光希が泣き崩れる場面が読者のせつなさを煽り、根底に両親Sや光希への思いやりがあるとはいえ勝手に行動してしまう遊がもどかしいキャラクターであった。さんざんヤキモキする描写が続いた後だけに、恋人同士の最後の思い出として出かけた北九州旅行の最後の夜、遊が光希に「結婚しよう」と告げ、常識やモラルを飛び越えてこの愛を貫くと覚悟を決めるシーンの感動はひとしおになるわけである。だが、遊の葛藤や光希の戸惑いが映画の要として十分に描かれていたとは言いがたい。映像はとても美しいのだが、それだけに最後までアッサリ進みすぎてしまったのが残念だ。

 唯一、役者として初めて演技を観たEXILE佐藤大樹が良かった。佐藤が演じた銀太は爽やかで底抜けに明るくて……原作の銀太のキャラクターとぴったり重なるわけではないのだが、むしろ原作以上に銀太の明るさ・一途さ・ストレートさが弾け出ており、観ていて気持ちの良い存在感があった。演技指導も役者なりのキャラ造形も見事にかみ合っていたのだろう。銀太はテニス部のエースという設定なのだが、そんな銀太を演じるにあたって佐藤は美しいフォームが出せるよう練習を重ねたそうで、遊とダブルスを組んで挑む試合のシーンでは、競技経験がなかったとは思えない迫力があった。20代の役者ばかりで高校生を演じる学園ドラマが量産されてはいるが、ただ制服を着こなしてそこそこ幼く見えればいいというものではない。パフォーマーとしてではなく役者としての佐藤の魅力を発見できたことはひとつ収穫だった。

中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

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