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「家庭は治外法権」と論じた武田鉄矢、男性代表を気取る「男は~」の無責任

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武田鉄矢 公式HPより

武田鉄矢 公式HPより

 56日放送の『ワイドナショー』で、武田鉄矢(69)が展開した「家庭論」そして「男性論」が、驚くべきものだった。武田は“男にとっての家庭”について論じたのだが、中高年世代ではありがちと言えばありがちな意見ではあるものの、しかし見過ごせない内容で、共演女性陣は唖然としていた。

 この日の放送ではTOKIO山口達也の起こした事件とその影響についてなど出演者が議論したが、最後に取り上げたテーマは「フラリーマン」。フラリーマンとは、仕事が終わった後まっすぐ家に帰らない人たちを指す造語で、働き方改革によってノー残業になったものの自宅に直帰する気になれず街をフラフラして時間を潰す人(主に男性サラリーマン)がいるとして、昨年9月に『おはよう日本』(NHK系)でクローズアップされ、話題になった。

 MCの東野幸治(50)が「なかなか家に帰りたくないものですか?」と武田鉄矢に投げると、武田はこう答えた。

「男はそうでしょう。やっぱり寄り道しないと家のありがたみもわかりませんしね」
「(仕事が早めに終わったのに『まだ終わっていない』と)嘘をつくときがありますね。で、やっぱりね、薄暗い路地に入って行って、そのへんのおっさん達に混じって一杯飲んでるって、あれいい気なもんですよ。気持ちいいもんですよ。それでもう一回、木枯らしかなんか吹いてきて『おお、寒い寒い、今帰ったよ』ってのが一番じゃないですか」
「ギアでいうところのニュートラルがないと。ニュートラルってのが公園のひとり飲みだったり、自販機相手の独り言の一杯飲みだったりするんじゃないですかね」

 男にはフラリーマンになる時間が必要なのだ、と武田は考えているようだ。武田の意見に、松本人志(54)も賛同する。

「哀愁があって素敵な話やなと思いましたよ。フラフラしてるって言い方がよくない。大事なんですよ、男にとってフラフラ感は。グレーゾーンというか。仕事と家庭の間のグレーの部分がないと男はね、そんなすぐに早着替えみたいなことはできない」

 一方で、女性陣は「男だけじゃないだろう」と反論。小島瑠璃子(24)は「それ(まっすぐ帰らずふらつく時間)を女の人は許されてないから」と言い、また小学三年生と保育園年長の二児を育てながら働いている佐々木恭子アナウンサー(45)は「『私だってたまにはフラリーマンしたいわよ』と、その選択すら女の人にはないじゃないですか、というところで怒りを……」と疑問を呈した。確かに、人にフラフラする時間が必要なのは「男だから」ではないはずだろう。

 しかし武田鉄矢が小島や佐々木アナの疑問に耳を傾けようとする様子はない。番組のエンドロールでも、武田はこのように述べて「男だから」を強調していた。

「一番最後の問題『フラリーマン』は、一番重大なニュースじゃないですか。私の考えってわけじゃないですけど、男ってちょっとフラフラしてないとダメところがある。女性より、はるかに生きるエネルギーが落ちるんです」
「だって、これから家に帰って何をやるか。これが一番大事なお父さんの仕事ですが、嘘をつくんです。嘘をつくためには考える時間が必要なんです」
「家庭っていうのは唯一、法律に縛られない空間じゃないですか。これ名言だと思いますが、飯食って黙って出て行って警察に通報されないのは家庭だけですから。何と一泊してお金要らないんですから。そういう法を逃れた場所としての家庭の意味を、皆さんもう一回考えましょう!」

 共演者の多くは笑っていたが、小島だけは引いた表情だったのが印象的だった。

 武田鉄矢の持論では、「男はそうでしょう」「男ってちょっとフラフラしてないとダメところがある。女性より、はるかに生きるエネルギーが落ちる」など、いちいち男女を区別している。武田は男性代表ではなく、また「女性の生きるエネルギー」を知る術も持たないであろうことから、こうした論調は誤りだ。それどころか、男女という大きすぎる括りで傾向を捉えることは、人々を無闇に分断してしまう。同調した松本人志も「男はね」と性別に依拠した論を唱えたが、松本もまた男性代表ではない。

 しかしそれ以上に驚かされたのが、武田鉄矢が家庭を「法律に縛られない空間」「法を逃れた場所」と捉えていることだ。「飯食って黙って出て行って警察に通報されないのは家庭だけ」「一泊してお金要らない」と言うが、家族相手に暴力や暴言を働けば刑事罰の対象になる。かつては“痴話喧嘩”“しつけ”などと寛容視されてきた家庭内での暴力は、DV(ドメスティック・バイオレンス)や虐待として第三者が介入できるようになった。家庭内は治外法権ではない。あまりにも無責任な発言だろう。

 また、武田の捉え方をそのまま解釈すれば、男が外で働き女が家事をする役割分担の徹底された家庭においては、男は食事や寝具や衣服の用意といったサービスを無料で受けられる(女は無償で提供する)のが当然ということになる。家庭内での無償労働についてはそれぞれで、「法律的な縛り」はないが、こちらも無神経が過ぎる。男が大黒柱となり女が専業主婦となるのが当たり前の家族構成だった世代としては当然の神経なのだろうか。

 武田鉄矢といえばドラマ『3B組金八先生』シリーズ(TBS系)の熱血な中学教師役で有名な役者であり歌手。武田自身も福岡教育大学教育学部に進学・中退、2008年には長年の『金八先生』シリーズ出演が評価され、同大学から名誉学士号が授与されており、彼に“コメンテーター”として物申すことを求める人もいるのだろう。しかし世間に向けての「先生」扱いは甚だ疑問である。

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