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香川真司も参加する慈善活動団体「Common Goal」に見る「フィランソロピー」

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香川真司公式Twitterアカウント(@S_Kagawa0317)より

 2017年に、マンチェスター・ユナイテッドのスペイン代表MFフアン・マタが慈善活動団体Common Goal(コモンゴール)」 を設立した。10月には香川真司が「Common Goal」への参加を表明し、日本でも話題になった。アスリートたちによるチャリティー活動の輪はどのような広がりを見せているのだろうか。

サッカー界全体の収入の1%を寄付

 まずは「Common Goal」の概要を見ていこう。「Common Goal」は、賛同したサッカー選手が自身の給料の1%を活動に寄付し、この資金を世界中のサッカーチャリティーに配分する仕組みとなっている。香川選手以外には、マッツ・フンメルス(バイエルン)、ジョルジョ・キエッリーニ(ユヴェントス)などが賛同した。もちろん、女子サッカーの選手も、アメリカ代表のミーガン・ラピノーやアレックス・モーガン、スペイン代表のオルガ・ガルシアなどが参加している。

 「Common Goal」は、ベルリンに拠点をもつNGO「ストリートフットボールワールド」が運営している。「Common Goal」によって選手から受け取った寄付はサッカーを通じて、世界中の慈善活動をしている団体に分配される。フアン・マタは当初、「スターティング・イレブン」となる選手を募っていたが、現在の参加者は40名を超えている。最終的には、サッカー界全体における収入の1%を目標として掲げているようだ。

 香川真司は「Common Goal」に参加した経緯を、公式ブログで綴っている。ある日、フアン・マタから、このようなメールが届いた。『一緒に世界の人々の為に共に活動をしないか?真司が興味を持ってもらえるなら詳しく話がしたい!』。香川真司は、「何か一緒にやらせてくれって!」と即答したそうだ。

なぜスーパースターたちは慈善活動に熱心なのか

 これまでにも、サッカー選手による慈善活動は行われてきた。スポーツメディア「Sportskeeda」が2016年に、「チャリティー活動に貢献したサッカー選手のベストイレブン」を発表している。「Sportskeeda」のベストイレブンには、前述した3人の他に、ディディエ・ドログバ(コートジボワール)、ルイス・スアレス(ウルグアイ)、メスト・エジル(ドイツ)などの名前が並んでいる。

 クリスティアーノ・ロナウドは、2016年、レアル・マドリードがチャンピオンズリーグ優勝した際には、獲得したボーナスを全額寄付したことで話題になった。また、2013年、国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」のグローバル親善大使に就任している。

 デビッド・ベッカムは、マラリア予防キャンペーン「Malaria No More UK」のアンバサダーや、アフガニスタン帰還兵への支援などを行ってきた。また、ユニセフ親善大使をつとめ、2015年にはユニセフの基金「7 ファンド」を立ち上げている。

 リオネル・メッシは2007年に「レオ・メッシ財団」を設立。「レオ・メッシ財団」は、世界中の恵まれない子どもたちに教育や医療などを提供する活動を行っている。 2015年に催された、母国アルゼンチンでのユニセフ慈善イベントでは、約6000万円の寄付をした。

 有名なアスリートが慈善活動に参加すると、その様子が大々的に報じられる。慈善団体がイベントやキャンペーンを成功するためには、どのような活動を行っているのかを周知させる必要がある。いわゆる広告塔だ。素晴らしい活動であっても、多くの人に知られなくては活動の和が広がっていかない。ユニセフなどが、影響力をもつ有名人を起用するのはこういった理由がある。

「フィランソロピー」が意味するもの

 慈善活動に参加するアスリートたちにはメリットがあるのか? これに対しては欧米のメディアでよく使用される「フィランソロピー」という言葉がしっくりくる。「フィランソロピー」は、最近の日本語では、ボランティア活動や社会貢献と訳されることが多い。社会的に成功して、莫大な富を得た者は自分を育ててくれた社会に感謝の念を込めて恩返しをする。そんな行為を当たり前に実行する下地が欧米の先進国にはあり、生まれ育った国は違えど、そこに集う一流のサッカー選手たちにも同じ考えが宿っているのだろう。

 「フィランソロピー」は、古代ギリシャ語の「フィロス(愛)」と「アントロポス(人類)」が組み合わさった言葉だ。つまり、元々は「人類愛」といった意味合いが含まれていて、キリスト教的な文化の素地がない日本ではなじみのない概念だった。しかし、「フィランソロピー」は、日本サッカー界でも少しずつ定着しつつある。具体的な例を挙げる。

 20174月、約100名以上のJ1選手が賛同した、NPO団体「SPOON FOUNDATION(スプーンファンデーション)」 https://spoon.gives/ の発足を発表した。「SPOON FOUNDATION」は選手からの寄付やファンからの募金、オリジナル商品の購入などによって得た資金で、国連世界食糧計画(WFP)を支援している。同年、8月には、バングラデシュの子どもを支援する「SPOON学校給食支援プログラム」を立ち上げた。web上からでも簡単に寄付することが可能だ。

 ただ、明るい話ばかりではない。「SPOON学校給食支援プログラム」は、公式サイト上だけではなく、クラウドファンディング・サービス「Makuake(マクアケ)」を利用して、キャンペーンを展開していた。すでに、「Makuake」でのプロジェクトは終了済みだ。結果としては目標金額 500万円に届かず、約360万円の金額が集まった。賛同したサポーターは100人弱。この数字だけを見れば、少々、残念な結果となった。もちろん、この時点で結論を出すのは早すぎる。チャリティー活動に限らず、何事も継続していくことが大切だろう。

 香川真司は公式ブログにこのようなことも書いていた。『サッカー選手である以上ピッチの上でプレーする事も大事ですが、その他の時間においてもやれる事はあると思います』。慈善事業に参加しているアスリートたちは皆、同じような思いを抱いているはずだ。

 目立った出来事があれば、すぐに報道されるが、どのように尊い運動であっても新しいニュースによって過去へと消えていく。チャリティー活動の輪を止めないようにするのは、サッカー選手やアスリートたちだけの力ではない。一般社会に「フィランソロピー」の意識が定着してこそ、活発化していく。FIFAワールドカップの開催年である今年は、こうした活動にも注目を集めることができるチャンスの年でもあるだろう。

あっしゅ

フリーライター。京都生まれの京都育ちで京都から離れられない♂。音楽と言葉が大好物。憧れの人物はアインシュタインとエルキュール・ポアロとアンディ・ウォーホル。パンダも好き。

twitter:@吉川 敦(ash)

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