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日大アメフト事件で「コミュニケーション不足ゆえの誤解」と弁解する日本大学は、説明責任を果たす気がない?

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日本大学公式webサイトより

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 日本大学のアメリカンフットボール部の選手が関西学院大学との伝統試合中に反則行為を繰り返した事件は、日を追うごとに騒動が拡大している。56日に開かれた日大と関学大のアメリカンフットボール部の定期戦で、日大の選手が悪質な反則タックルに及んだ。このプレー動画はネットであっという間に拡散し、日大の内田正人監督およびコーチ陣、そして日大上層部に対して説明責任を求める声は日に日に大きくなっている。

 この事件について、関西学院大学は12日と17日にそれぞれ会見。17日の会見では日大から届いた回答書の内容を公開した。日大は反則行為について「意図的な乱暴行為を行うこと等を選手へ教えることは全くございません」「今回、指導者による指導と選手の受け取り方に乖離が起きていたことが問題の本質と認識しており、指導方法に関し、深く反省しております」と、あくまで選手と指導者との間に誤解が生じたことが理由だと弁明。監督による意図的なラフ・プレーの指示はなかったとしているものの、しかし具体的な経緯の説明はなく、到底納得できる内容ではなかった。

 大怪我を負った関学大クォーターバック選手の父親も会見を開き、傷害事件であるとして警察に被害届を提出したことを公表。それでもなお日大側は沈黙を貫き、そして522日、悪質なプレーをした日大選手が単独でマスコミ記者会見を敢行するに至った。選手は日大の回答書にあったような「監督・コーチの指示と自分の理解に齟齬があった」との説明は行わず、ラフ・プレーをした理由を説明した。いつ、どのような言葉をコーチから(監督の指示として)掛けられたかをひとつずつ明らかにしたのである。

 本来であればこの経緯説明は、日大が組織として調査のうえ、おこなうべきだった。しかし同日、日大が公表した声明は非常にお粗末なものだった。<コーチから「1プレー目で(相手の)QBをつぶせ」という言葉があったことは事実>と認めつつも、<ただ、これは本学フットボール部においてゲーム前によく使う言葉で、「最初のプレーから思い切って当たれ」という意味です。誤解を招いたとすれば、言葉足らずであったと心苦しく思います><(選手と監督・コーチの)コミュニケーションが不足していたことにつきまして、反省いたしております>との弁解に終始。もし本当に誤解が引き起こした悲劇だというのであれば、なぜ誤解を招いてしまったのか、究明すべきであろう。そこには間違いなく構造的な問題があるはずだ。

 たとえば、選手の記者会見で明らかになったように、監督の指示はコーチを通じて部員に伝えられる。ただでさえ誤解が生じて当然の“またぎき”状態になるのだから、言葉を尽くさなければならないことは大前提だ。さらに部員は、監督はおろかコーチに発言の真意を問うことが許されない。自ら良し悪しを判断することは認められず、従う以外の道がない。コーチと監督の関係も同じようなものだろう。体育会系の部活動で至極当然と捉えられてきたことなのだとしても、合理性を欠いた指導法だとしか言いようがないのではないか。そのようにして頂点に君臨する監督の指導は絶対的な権力を持ち、コミュニティ内でのパワーハラスメントが常態化していく。大学という教育機関においてそのようなあり方で良いのか、少なくとも調査し検討する必要があるはずだ。しかし日大の声明は、あまりに簡素だった。<コミュニケーション不足>の一言でこの問題がおさまるとはとても思えない。内田監督が辞任したにせよ、まったく幕引きにはなっていないのだ。

 今回の反則行為があってはならないことだというのは、今現在、日大側も認識を共有しているはずだ。にもかかわらず、当初からの責任の押し付け合いが未だ続いている印象を受ける。少なくとも内田監督と日大学長で即日会見を開き、関学大への公式な謝罪と調査計画の予定を述べるくらいのことはすべきであった。なぜそれをせず放置してしまったのか、問題の軽視と危機意識の欠如としか言いようがない。

 22日に単独で会見を開いた日大選手の代理人弁護士は、質疑応答の終了後に「本人にとって、この会見は、本件に幕を引くためのものではなく、今後、さまざまな責任を果たしていく出発点となります」と述べている。日大側はどう責任を果すのだろう。少なくとも、明らかに調査が不十分であるのに、<誤解><コミュニケーション不足>でまとめあげた声明に、誰が納得するだろうか。しかも件の声明は、日大広報部によるものだ。まさか広報部の声明をもってこの事件を終了とし、問題の核心に一切手をつけないつもりだろうか。

(清水美早紀)

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