ゴールデンウィーク直前という、“最良”のタイミング
一方で、“反ジャニーズ”の立場を貫く「週刊女性」(主婦と生活社)は、今回の山口達也の事件については、特筆すべきような大きなスクープを放つことはなかった。同誌2018年5月22日号では、『TOKIO山口達也 強制わいせつ騒動のすべて』と題して、巻頭5ページにわたる特集を組んでいるが、独自情報はほとんど見当たらない。
その理由は、今回の事件の“タイミング”にある。NHKによって事件が最初に報じられたのは、4月25日。毎週火曜発売の「週刊女性」は、その前日である4月24日火曜に合併号が発売されたあと、ゴールデンウイークで1号の休みをはさみ、次に発売されたのは5月8日の火曜。要は、事件発覚から2週間近くを経てからやっと、同誌はこの事件を扱うことなった。つまり、“反ジャニーズ”媒体としていかに山口達也をバッシングするような記事を出そうとしても、すでに他メディアが報じ尽くしているような状態だったのだ。
しかし、ゴールデンウィークをはさんだのは何も「週刊女性」だけではなく、ほかの週刊誌も似たような状況。にもかかわらず、さすが“文春砲”の面目躍如となったのが、ご存じ「週刊文春」である。同誌もまた、事件発覚からちょど2週間後となる5月9日発売の2018年5月17日号で、やっとこさ初めてこの事件を扱うこととなった。ここで同誌は、『TOKIO山口達也に女子高生を“献上” NHKの大罪』と題し、被害者に山口達也と連絡先を交換するようにうながしていたのが、なんとNHKのスタッフであったとの疑惑を報じ、事件に対するNHKの責任を追及してみせたのだ。
さらに「週刊文春」は同号で、『「TOKIO育ての親」ジュリー副社長は“ほっかむり姫”』なる記事を掲載。今回の事件の収拾を図っていたのが、ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子副社長であったことを報じている。次期社長と目されるジュリー氏だが、同誌は今回の事件が彼女の“新体制”に深刻なダメージを与えかねないと指摘、この事件をジャニーズ事務所内の世代交代と絡めのは、「週刊文春」独自の切り口であった。
前述した通り、多くの週刊誌はゴールデンウイーク前に合併号を発売し、2週間ほどあけて連休終了後に次の号を発売するという販売スケジュールを取っている。今回取り上げた「女性セブン」「週刊女性」「週刊文春」の3誌もまさにそのスケジュールで発売されており、いずれも連休終了後に山口達也の事件を取り扱うこととなった。裏を返せば取材期間はたっぷりあったともいえるが、残念ながら、おいしいネタはスポーツ紙やテレビのワイドショーにほとんどを持っていかれてしまったというのが偽らざる結果であろう。
まさに、週刊誌にとっては最悪のタイミングで発覚してしまった今回の事件。そうした困難な状況の中で独自ネタを投入できた「女性セブン」と「週刊文春」は、その取材力の高さをしっかりと見せつけることができたといえるだろう。
逆にいえば、ゴールデンウイークの合併号休みにぶつかる形となったという点で、ジャニーズ事務所にとっては“最良”のタイミングで報じられたという言い方も可能かもしれない。それは、自局の番組が“事件の舞台”となってしまったNHKにとっても同様であろう。紙媒体、特に毎日刊行されるわけではない雑誌媒体においては、事件の起こった「タイミング」というのは、その報道において大きな意味を持つのである。
(横川リョウ)
【「山口達也事件」報道の流れ】
■4月25日夕方
NHK「TOKIO 山口達也メンバー 強制わいせつ容疑で書類送検」
■5月8日
主婦と生活社「週刊女性」(2018年5月22日号)
『TOKIO山口達也 強制わいせつ騒動のすべて』
■5月9日
文藝春秋「週刊文春」(2018年5月17日号)
『TOKIO山口達也に女子高生を“献上” NHKの大罪』
『「TOKIO育ての親」ジュリー副社長は“ほっかむり姫”』
■5月10日
小学館「女性セブン」(2018年5月24日号)
『山口達也[極秘]入院撮! 躁鬱苦で心身崩壊の7年メモ』
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