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立ちションする女たちと、「男らしさ」「女らしさ」

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トランス男子のフェミな日常/遠藤まめた

 ワケあって先日人生ではじめて立ちションをする機会があった。はじめてのおつかい、はじめてのチュウ、ならぬ、はじめての立ちション。あんまり可愛らしい響きではない。感想としては「ふう、漏れずに済んだ」という安堵が真っ先であった。トランス男子、31歳。ビミョーなお年頃である。

 コトの経緯は、知人の会社がトランス男子向けのグッズ開発に興味を持ったことにある。グッズ開発のために製品のモニターをやることになり、今回のミッションが「立ちショングッズ」を数日間、何度か試してアンケートに答えることだった。自宅に届いた段ボールをあけると、男性器そっくりのエピテーゼが入っていてビビった。息子といっても息をしていないし、見たこともない顔つきなので「おまえ、だれだよ」と思わずつぶやきながら説明書を見る。

 扱いを間違えると漏れる。排尿の勢いがよすぎても逆流してしまう。試行錯誤し、一週間ほどのホームステイを経た後に、そいつはクロネコヤマトで旅立っていった。買えば初期投資4万円、年間16万円ほどする商品だが(ちなみに1カ月ほどのリース)、一部にはニーズもあるのだろうか。トランス男子の仲間では立ちショングッズを使いこなしている人の話はあまり聞かない。案の定、このモニターの話を友人たちにしたら「そこまでするか?」という反応が多かった。

 男だから立ちションして女だから座ってするということも無いだろう。そもそも立ちションはあとの掃除が大変だから、自分の子どもには座ってするよう教えている親たちも友人にはいる。男子トイレの個室が埋まっているときは「立ちションできたら」と思うが、個室を増やせばいいだけだろうし……。こう考えると、ますます立ちションへの意欲は低下し「別にいいや」という結論にいたるのだが、このモニターにより偶然にも知ってしまったのが「女性で立ちションしたい人たち」の存在だった。

 アメリカで女性用のアウトドアグッズとして製造されている立ちショングッズはその名も「GO GIRL」。汚いところでしゃがみたくないとか、単にそのほうが手軽とかの理由で発売されているらしいこの商品はamazonでも1000円前後から入手できて「人生、座ったままでいるなよ」みたいなキャッチコピーが効いている。似たような商品はたくさん売られていて、調べて見ると女性たちがほのぼのと立ちションをしている写真や、並んで楽しそうに用を足している写真などがバンバン出てくる。正直いって、頭がくらくらした。男がなんで立ちションしなきゃいけないんだ、とごにょごにょ思っている極東アジアのトランス男子がいる一方で、今日も壮大なアルプスやロッキー山脈のどこかで女子たちはあははうふふと立ちションしているかもしれないのだ。

 掃除や漏れの心配がなく、男だから女だからという縛りもなかったとしたら自分は立ちションをしたいと思うのだろうか。モニターを終えた後になって、ぼんやりとトイレに行きながら考える。もしも社会の当たり前がなくなったとしたら……みなさんはどうだろうか?

遠藤まめた

1987年生まれ、横浜育ち。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をもとに10代後半よりLGBT(セクシュアルマイノリィ)をテーマに啓発活動をはじめる。主にLGBTの若者支援や自殺予防に関わる。著書に「先生と親のためのLGBTガイド 〜もしあなたがカミングアウトされたなら」(合同出版)ほか。

twitter:@mameta227

サイト:バラバラに、ともに。遠藤まめたのホームページ

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先生と親のための LGBTガイド: もしあなたがカミングアウトされたなら