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男性保育士の高いストレス度、保育現場の改善は急務

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Thinstock/Photo by monkeybusinessimages

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 株式会社情報基盤開発は、業種別・職種別に高ストレス者の割合や総合健康リスクなどの平均値を発表。その結果、男性保育士の高ストレス者の割合が約110だったのに対し、女性保育士の割合は約95と大きな開きがあり、男性保育士の方が仕事に対して、高いストレスを感じていることがわかった。

 ちなみに、厚生労働省が行った調査によると、平成25年の保育士登録者数は約1,186,000人。そのうち男性保育士の割合は50,000で、全体のわずか4%しかいない。これらの結果から、「保育士」は男性がなりやすい・働き続けやすい職業とは言えないだろう。

 男性保育士が高いストレスを感じてしまうのは、「怖そうで不安」「おむつを替えてほしくない」といった保護者の厳しい視線が要因のひとつに挙げられる。

 男性保育士に拒否感を覚える人たちに対して昨年、千葉市の熊谷俊人市長はツイッターで、「娘を男性保育士に着替えさせたくないと言う人は、同様に息子を女性保育士に着替えさせるべきではないわけですが、そんな人は見たことがありません。社会が考慮するに足る理由無しに性による区別をすることは差別です。女性活躍を進める中だからこそ、真剣に日本社会が議論し、乗り越えるべき課題です」と投稿した。

 熊谷市長の発言は最もだが、実際に男性保育士による事件も起きていることから、保護者の警戒心を責めることも出来ない。たとえば20136月、山口県の保育所で働いていた嘱託保育士の男が、レジャー施設で男性用個室トイレに5歳女児を誘い込み、監禁するという事件が起きた。今年5月にも宮城県で、勤務先の保育園で女児の裸の動画を撮影し、パソコンに保存したとして、児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で25歳の男性保育士が逮捕された。

 もちろんこうした事件を起こす男性保育士はごく一部であり、多くの男性保育士は立派に働いているが、こういったニュースを目にすれば、男性保育士に対してネガティブなイメージを持ってしまう保護者が出るのも無理はない。ただ、こうした事件の影響があるとしても、保育の現場から男性を閉め出すことは、「女性ならお茶を入れろ」「女性は出産を機に辞めがちだから採用したくない」といった“性差別”と同じになってしまう。

 現在叫ばれている働き方改革では、“女性の働きやすさ”が注目されがちだが、女性の職場とされてきた業種における“男性の働きやすさ”もあらためて再考する必要があるだろう。

 また、同調査では「職場環境によるストレス」や「活気」など、仕事上「どのようなことにストレスを感じるのか?」を質問している。その結果、平均値は0なのに対して、保育士の「心理的な仕事の負担(質)」は約ー0.6、「自覚的な身体的負担」は約ー1.25と、男女ともに大きく下回った。他の職業に比べ、保育士は心身ともに疲弊していることが伺える。

 保育園では、子どもの世話だけでなく、誕生日会や運動会などの行事の準備が毎月あり、息つく暇もないとは現場からよく聞こえる叫びだ。サービス残業が常態化している保育園も多く、身体的疲労が高いのも頷ける。さらに、モンスターペアレンツや騒音被害を訴える近隣住民などへの対応も個々の保育士に任されてしまえば、神経をすり減らし、精神的に追い込まれるのは自然な流れだ。

 ただ、涙ぐましいことに「働きがい」は約0.75、「活気」は約0.6と平均値を上回っており、多くの保育士は仕事にやりがいや楽しさを見出している。であればこそ、運営側は労働者に甘えて“やりがい搾取”せず、労働環境を改善しなければならない。

 このような労働環境や低賃金もあり、保育士不足はとても深刻だ。厚生労働省が行った調査によると、2016年の保育士の求人倍率は全国で2.34、東京に限れば5.68と高い数値をマークした。保育士不足のため保育園に子どもを預けられず、働くことを断念する保護者の“待機児童問題”は、人手不足が深刻化している日本にとっては、喫緊の解消課題のはず。この歯がゆい状況を脱するためにも、保育士の待遇改善が急務であることは自明だ。

(宮西瀬名)

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