開幕中のFIFAワールドカップ ロシア大会が盛り上がりを見せている。日本代表チームは初戦で格上のコロンビア代表を下すと、第二戦のセネガル戦を2-2で引き分け勝ち点4に。決勝トーナメント進出に王手をかけた。開幕前は、直前での監督解任などドタバタ続きの印象が強くあった日本代表だが、西野朗監督は短期間でどのようにチームをまとめ上げたのか。6月24日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)では、元サッカー日本代表の前園真聖が、日本代表の躍進を支える西野監督の姿勢を次のように解説した。
前園真聖は「(大会開催の)2カ月前に就任したので、1番監督がやったのは、選手の意見をまず聞いたってことです。多分自分のやりたいサッカーを落とし込みたかったんですけど時間がないので、選手の意見を聞いて……選手ファーストでやったのが今のチームワークになった」と解説。西野監督が選手の意見に耳を傾け、選手が望むプレーの形を追求したことが良い結果に繋がったと讃えた。
日本代表キャプテンの長谷部誠は、「フットボールチャンネル」の取材で「監督は選手の考え方を聞いて、取り入れてくれて、実際ミーティングでもいろんな話し合いが出ている」とコメントし、各選手からの違う意見を監督が汲み取り、「じゃあそうやってやろう」と促していることを明かした。西野監督の選手ファーストの指導方法に手応えを感じているようだった。
スポーツチームだけではなく、職場でも「選手ファースト」で個々の意見を傾聴する指導方法は有効かもしれない。日本能率協会が今年4月、2018年入社の新入社員を対象にした理想の上司・先輩の意識調査を発表したところによると、「部下の意見・要望を傾聴する」(33.5%)ことが理想の上司・先輩の条件のトップであった。2014年に実施した前回調査では9位だった「部下の意見・要望に対し動いてくれる」(29%)も3位に上昇。部下の声に耳を傾け、異なる意見であっても尊重できるマネージャーが求められている。
さらにいえば、プレイヤーを第一に考える“社員ファースト”で結果を出している企業は少なくない。
たとえば焼鳥チェーンを展開する株式会社鳥貴族では、入社1カ月前後の新入社員が勤務する店舗に面接官が訪問し、不満なく働けているかをチェック。直属の上司には言えない不満も聞き出し、働きやすい環境を追求している。鳥貴族は定着率が低い飲食業界において、2015年に定着率92.8%を記録、店舗数も着々と増やし、躍進を続けている。
株式会社サイボウズは、社員ファーストでもっとも有名な企業のひとつであろう。介護休暇や育児休暇、リモートワークや副業推進などの制度を充実させ、事情の異なる社員一人ひとりが働きやすい環境を整備。その結果、社員のパフォーマンスが上がり、先月発表された4月度の月次業績では、前年同月比23%増の9.37億円の連結売上高となった。
6月19日に東証マザーズへ新規上場した株式会社メルカリも、副業は自由で休暇制度も充実、社員の家族を含め手厚いサポートを整えている。育児・介護・看護といったプライベートの事情に応じる柔軟な仕組みがあり、社員ファーストと呼べるだろう。しかし一方で、これらの企業は単に、従業員を甘やかしているわけではない。過剰なストレスにさらされることなく、ベストのパフォーマンスを発揮してもらうための環境を整備しているに過ぎないということは、忘れてはならないだろう。