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トランプの家族離散政策〜アメリカ人の妻と子供をのこして、強制送還

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(写真:AFP/アフロ)

 トランプ政権が4月に打ち出したビザ無し移民(*)への「ゼロ寛容」政策。中米諸国の苛烈な暴力から逃れるためにアメリカ合衆国にやってきた移民の親子が引き離され、阿鼻叫喚の悲劇となった。

参考:授乳中の母親から赤ん坊を引き剥がす~トランプの「ゼロ寛容」不法移民政策

 収容所内部の「ケージ」に押し込められた移民たちの写真、親を求めて泣く子供たちの録音音声が公開されて国内外から激しい非難が巻き起こった。トランプは「ゼロ寛容」政策を緩めざるを得なくなったが、憤ったトランプは24日に以下のツイートをおこなっている。

「我々はああした人々(ビザ無し移民)に我が国を侵略させるわけにいかない。誰かがやってきたら、直ちに、判事も裁判もなく、元来た場所に連れ戻さなければならない」

(*)近年、アメリカではビザを持たずに滞在する移民の一般的な呼称が、かつてのillegal immigrant(不法滞在者)からundocumented immigrant(書類を持たない移民)に変更されている。document(書類)は実際にはビザを指すため、本項では「ビザ無し移民」と表記

政府による、ビザ無し移民狩り

 親子分離と同時進行で、実はもうひとつの「ビザ無し移民狩り」が起こっている。ビザを持たない移民がアメリカ人との結婚によるグリーンカード(米国永住権)取得のための面接に出掛けると、その場でいきなり逮捕され、祖国への強制送還が言い渡される件が全米で相次いでいるのだ。

 トランプ政権以前より、ビザを持たずに米国に滞在していることが発覚すると、原則は出身国への送還となっていた。ただし米国市民と結婚した場合は例外となり、厳しい審査を経たのち、永住権が取得可能となっている。トランプはそのルールを破り、ここでも家族の離散が起きている。以下の3件は、過去2カ月間にニューヨーク市内で起こった案件だ。

●アントニオ・デ・ヘスース・マルティネス

 マルティネス(35)は2003年にエルサルバドルよりビザ無しで渡米。直後に現在の妻(米国生まれ)と知り合い、のちに結婚して二児(2歳、4カ月)をもうける。職業は冷暖房空調業。

 妻をスポンサー(後述)にグリーンカードを申請し、今年4月27日に移民局にて夫婦で面接。その面接時にICE(*)に逮捕されてニューヨークに隣接するニュージャージー州の移民収容所に連行され、強制送還が言い渡された。

*ICE(アイス):ビザ無し移民を捜索、逮捕、送還するユニット

●ショウ・チン・ユウ

 ユウ(39)は2000年に中国よりビザ無しで渡米。のちに中国籍の移民である妻と結婚。妻が2015年に米国市民権(米国籍)を取得した直後、妻をスポンサーにグリーンカードを申請。現在は妻とともにネイルサロンを経営し、二人の子供(6歳、4歳)を育てている。

 ユウと妻は5月23日にグリーンカード面接に呼ばれ、面接は通常の段取りで行われたが、面接終了後にユウは逮捕。そのままニュージャージー州の移民収容所に連行され、強制送還が決まった。

 ユウは祖国で当時の恋人が婚前妊娠したため、政府によって中絶を強要されている。当初、それを理由に米国に亡命申請をおこなったが却下されている。

●パブロ・ヴィラヴィセンチオ・カルデロン

 カルデロン(35)は2008年にエクアドルよりビザ無しで渡米。5年前に妻(コロンビアからの移民で、現在は米国市民)と結婚し、2児(4歳、3歳)をもうける。

 カルデロンは今年2月に妻をスポンサーにグリーンカードを申請し、移民局からの応答待ちだった。

 現在はピザ・レストランの配達をしており、6月1日に米軍基地に配達した際、身分証明書としてNY市発行のIDを出したために逮捕され(後述)、やはりニュージャージー州の移民収容所に収監、強制送還が決まった。

 カルデロンは祖国でLGBT活動家であったために脅迫を受け、当初、それを理由に米国への亡命申請をおこなったが、却下されている。

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堂本かおる

ニューヨーク在住のフリーランスライター。米国およびNYのブラックカルチャー、マイノリティ文化、移民、教育、犯罪など社会事情専門。

サイト:http://www.nybct.com/

ブログ:ハーレム・ジャーナル

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アメリカ大統領の権限とその限界