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性加害と依存症の問題から浮き彫りになった、対話ができない男性の脆弱さ

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Thinstock/Photo by AntonioGuillem/Photodisc

 グラビア女優の石川優実です。自身の#Metooの告白をきっかけに、性暴力や男女平等などの問題について勉強中です。

 前篇から引きつづき、性暴力をしてしまう側、加害者の心理について、話題の『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)の著者であり、大森榎本クリニック精神保健福祉部長でもある斉藤章佳さんにお話をうかがいます。

 加害行為をくり返す人の根底には「怖い」という感情があるそうです。自分のパワーを確認するため、自分の弱さに向き合わず、そこから逃れるための加害行為。そんな勝手な心理で傷つけられる人が増えるなんて、許せません。

▼前篇:かつて受けた数々のセクハラ。私に加害してきた人は、どんな心境だったのか?

 後篇では、どうしたら加害行為をやめることができるのかをお聞きしました。

*   *   *

ーーたとえば前篇でお話した、性加害をくり返している映画監督が告発されて斉藤さんのクリニックに来られたら、ある意味、幸運なのでしょうか? きっと受診しないと治せないんですよね?

斉藤章佳さん(以下、斉藤):来ない人の方が多いですからね。性暴力は暗数が圧倒的に多く、被害者が泣き寝入りして告発しないケースがほとんどですから。多くの人は逮捕されないかぎり、自分から来ることはないんですよ。

ーー薬物依存症の人が「逮捕されてよかった」というのをときどき聞きますが、痴漢など性犯罪を犯した人も同じことをいうそうですね。

斉藤:少ないですけどいますね。常習化して、満員電車を見ただけで衝動が制御できなくなるなど、生活レベルで支障が出てくる人がいます。でも、またくり返しちゃう。やめたい、でもやめられないという気持ちのあいだを、心のなかで一日中いったりきたりします。それが逮捕という形で止まるわけです。そのときに感じた安堵感、安心感が、痴漢しているときのエクスタシーに似ているといった人がいました。被害者からするととんでもない話ですが、彼らの正直な体験談です。自己中心的で非常に身勝手ですね。

ーー加害者を擁護するわけでは決してありませんが、依存症だった経験がある私はやめられない気持ちがわからなくもありません。そのように依存症にならないために、日々気をつけられることはあるのでしょうか。

斉藤:そこに加害行為が含まれるかどうかはひとまず脇に置いてお話しますが、約20年間依存症治療に携わってきた立場として、依存症そのものは一概に悪いものとはいえません。人間誰でも、人生において耐えがたいことに直面したり大きな喪失体験を味わいますが、そんなときに自殺を考えることや鬱になることがあります。これは、体の健康な反応です。そうなったとき、身近に酒があった薬があったギャンブルがあった。その人たちにとってのそれらを選ぶということは、そのときをサバイブするためのひとつの戦略的手段なんですよね。臨床の場では、「それらがなかったら自死していた」「死なないためにそれらに耽溺した」という解釈をすることもあるのです。

依存症は生きるための手段

斉藤:なので依存症にならないほうが絶対的にいいのかというと、私にはよくわからないところがあります。依存症になったことで、すごく人生が豊かになった、価値観が大きく変わったという方にも出会います。

そうはいってもほとんどの人は、依存症になりたくないですよね。まして、痴漢などの性犯罪、DVは被害者が存在します。そうならないためには、「ストレス対処法をどれだけ持っているか」がヒントになります。それから、人とのつながり。「アディクション(依存)の対義語はコネクション(つながり)」という言葉があります。日々のつながりや依存先を大切にして、つながりのなかで生きている実感があるかどうかが鍵です。

ーー依存症にならないようにするには、元から自己受容できている状態でいることが望ましいのでしょうか。自己受容とはやはり大切な要素ですか?

斉藤:自己受容とは、いまの自分に「OK」を出している状態です。依存症のまっただ中にいる人は、酒やギャンブルが止まらない自分を否定している人が多いんですよ。でも同じ問題をもった仲間に「そんな自分も、やっぱり自分なんだ」と受け入れられたとき、酒が徐々に止まったりします。必要なのはベッドや薬ではなく、ありのままの自分が受け入れられる場所や仲間です。非常に逆説的なのですが、何としてもやめたいんだという気持ちが強ければ強いほどやめられない人は多いですよ。

ただこれは、ギャンブルやアルコールへの依存の話で、加害行為がある依存症はもちろん別です。痴漢や性加害の問題は、通常の依存症モデルだけで捉えるのは危険です。

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石川優実

1987年1月1日生まれのグラビア女優。
18歳より芸能活動開始。イメージDVD30本リリース。2014年にふみふみこ原作映画「女の穴」にて初主演、同時に写真集発売、2015年には高樹澪主演「誘惑は嵐の夜に」にて準主演。
以前から男女の性の認識の違いについて疑問を持っており、ブログで性やセックスについて積極的に発信していた。2017年末に自身が受けた芸能活動での性暴力を#metooとして告白し話題に。以降、性暴力や人権・男女平等などについて勉強中。本当の意味で「男女」という違いをより理解し、みんなが幸せに生きられるように活動している。

twitter:@ishikawa_yumi

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現代思想 2018年7月号 特集 性暴力=セクハラ ―フェミニズムとMeToo―