皇帝プルシェンコの息子サーシャが史上最年少で登場
5月25日から7月1日にかけて全国5箇所で開催されたアイスショー「Fantasy on Ice 2018」。皇帝エフゲニー・プルシェンコの息子サーシャが、その神戸公演に出演するため、父と共に来日した。今年の出演者はプルシェンコ親子以外に、羽生結弦、織田信成、安藤美姫、鈴木明子、ハビエル・フェルナンデス、ミーシャ・ジー、エフゲニア・メドベージェワ、カロリーナ・コストナー、ステファン・ランビエール、ジョニー・ウィアー、ジェフリー・バトルなどなど。「Fantasy on Ice」はオリンピックや世界選手権で活躍した、新旧の有名フィギュアスケーターたちが集まるエンターテインメントショーだ。
サーシャは愛称である。本名はアレクサンダー・プルシェンコ。2013年1月生まれの現在5歳。昨年から、父プルシェンコがモスクワ市内に開校したスケートスクール「エンジェルズ・オブ・プルシェンコ」に通っている。また、モデルとしても活動しているというから驚きだ。サーシャが「Fantasy on Ice 2018」で演じたナンバーは「マイケルジャクソンメドレー」。場内のアナウンスで「Fantasy on Ice史上、最年少のスケーターが登場します。親ゆずりのブロンドヘアをなびかせる、その滑りにご注目ください」と紹介されると、一流のスケーターたちに負けない歓声と拍手が送られた。
髪型といえば、幼い頃の羽生結弦が皇帝プルシェンコに憧れて、プルシェンコのヘアスタイルをマネしていた時期があった。羽生結弦は「ゆづシェンコ」と呼ばれていたらしい。11歳当時の映像が残っている。インタビューに目標を尋ねられた羽生結弦は「目指せ、オリンピック金メダルです」と答えている。具体的に「バンクーバーの次(ソチ)です」と。羽生結弦は11歳に公言していた目標を叶えるだけでなく、憧れのプルシェンコが成し得なかったオリンピック2連覇を達成した。
羽生結弦に憧れるサーシャ、次代のスーパースターの予感?
サーシャは来日中の6月16日、自身のインスタグラムに1枚の写真をアップした。羽生結弦との2ショットだ。そこに添えられた文章は「ぼくのヒーローといっしょに。世界一のスケーター」。サーシャは「マイケルジャクソンメドレー」の演技中にも、羽生結弦がソチ五輪のSPで見せた「へ」の字のように足を広げる「ランジ」を取り入れていた。また、アイスショー中に羽生結弦と「ランジ」の共演も果たしている。この動画はプルシェンコのインスタグラムにアップされ、世界中に拡散された。
つまりは、サーシャの憧れは羽生結弦だ。幼い頃、羽生結弦がプルシェンコに抱いていた思いと似た気持ちで、サーシャは羽生結弦の存在を見つめている。将来、サーシャは羽生結弦の後継者になるのだろうか? おそらく、今回来日したサーシャの姿を見て、多くのフィギュアスケートファンがそんな期待をしたことだろう。
サーシャと羽生結弦がスケートを始めたのは同じ4歳
サーシャが「エンジェルズ・オブ・プルシェンコ」に通いだしたのは4歳の頃であり、スケート歴は1年ほど。まだ、将来の話は早すぎるかもしれない。ただ、プルシェンコはスクールを開校した際に「金メダリストを育てるのが目標である」と宣言している。サーシャに関しても「10年後(14歳)のジュニア世界選手権で優勝できる」ことを望んでいると語っていた。
ちなみに、羽生結弦がフィギュアスケートを始めたのも、4歳であった。目的は、持病の喘息を克服することであったらしい。そして、2004年、小学4年生でノービスBクラス(9歳以上10歳以下)の全国大会で初優勝する。また、中学1年時には、ノービス選手にもかかわらず、全日本ジュニア選手権で3位に輝いた。ノービスクラスの選手が全日本ジュニア選手権の表彰台に上がるのは日本男子として史上初の快挙だった。翌年には、全日本ジュニア選手権で優勝。その翌年には、世界ジュニア選手権のチャンピオンにまで登りつめた。
2030年、羽生結弦の後継者は現れるのか?
アスリートである以前に、ひとりの人間としてフィギュアスケート選手たちに温かい視線を送るプルシェンコという父親がいる以上、サーシャの将来を心配するのは杞憂かもしれない。プルシェンコには4人の息子がいるが、サーシャ以外の息子たちはフィギュアスケートよりもサッカーやゴルフなどに夢中らしい。息子たちの未来を語るプルシェンコの言葉はいつも優しさにあふれている。何よりも、「Fantasy on Ice 2018」で見せてくれたサーシャの演技からは、彼自身がとてもフィギュアスケートを楽しんでいるように感じる。
2022年の冬季オリンピックは北京で開催される。2大会連続、アジアでの開催だ。その次は2026年。もちろん、まだ、どこで行われるかは決まっていない。そのとき、サーシャは13歳。フィギュアスケートでは、オリンピック前年の6月30日までに15歳を満たしていない選手のオリンピック出場は禁じられている。もし、この規約が変わっていなければ、サーシャがオリンピックに出られるのは、その次の2030年である。
サーシャがどのようなフィギュアスケーターに? その答えが出るのは約10年後の話だ。サーシャが羽生結弦の後継者になるのか、それとも別の道へ進むのかは、先々の楽しみとして置いておこう。フィギュアスケートファンとしては想像するだけでもワクワクしてくることかもしれないが、焦る気持ちをぐっと抑えて、サーシャの成長をゆっくりと見守っていきたいところである。