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「生理は病気じゃない。走りなさい」 生理痛や陣痛を精神論で乗り越えろと強要する人たち

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Thinstock/Photo by champja

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 高校時代、体育の教師に生理痛を訴えたにも関わらず、3キロも走らされた経験をもつくうさんが描いた漫画が、多くの女性たちの共感を集めている。

 くうさんは、もともと生理痛が重く、倒れて保健室に運ばれてしまったこともあったという。その日も生理痛がひどく、体育の時間に女性教師にその旨伝えたのだが、「生理は病気じゃない。走りなさい」 と言われ、休むことを許されなかった。

 漫画では、くうさんの心の声として「こいつ本当に女!? てゆうか保健体育教える資格持つ人!!?」とある。

 実は女性同士の方が理解し合えないのが、生理にまつわる辛さである。生理については、初経年齢から始まり、その期間、周期、経血量、そして生理痛やPMSや更年期障害の有無や軽重、閉経時期など、個人差が大きい。

 自分の生理痛が軽いと、生理痛の重い女性の辛さが理解できず、なかには仮病ではないかと疑う人までいる。

生理痛で苦しんでいる自分の娘に、「生理痛は陣痛の練習よ」などと見当違いなことを言う母親は、鬼ではなく、ただ単に個人差があるということを理解できていないのだろう。

 同様に男性も、自分の彼女や妻など身近な女性の生理痛が軽いと、他の女性も同じだと思い込んだり、逆に身近な女性の生理痛が重いと、女性はみな生理痛に苦しんでいると思いがちである。

 最近では、男性向けメディアが、生理痛やPMSに対する理解が必要だということを発信するようになってきたが、「生理痛はこんなに辛い」「女性が生理前にイライラするのはしかたがない」といった内容に偏っている点は、非常に危うい。

 生理中や生理前の不調を安易に強調することは、女性差別につながるからである。生理痛やPMSの有無や軽重には個人差があり、鎮痛剤や低用量ピルでコントロール可能であるということも、同時に伝えてほしい。

 くうさんの経験では、生理痛の辛さを理解しようとしない主が、体育教師であるという点において余計にタチが悪い。保健体育の教師こそが、生理にまつわる個人差を伝えるべき立場にあるからだ。

 私の中学時代の男性体育教師は、「生理なんて大したことないって、うちのかあちゃんが言ってた」とのたまい、プールの授業も休むことを許さなかった。それでもほとんどの女子が生理のときは見学していたが、なかには教師に逆らえず、血を流しながら泳いでいる生徒もいた。

 生理や経血に対する考え方は、人それぞれなので、教師は生理中の水泳を強制すべきではない。私個人は、経血をプールで垂れ流すことは、ルール違反だと考えている。

 こうした生理に関する最低限の知識やルールといったものは、本来、初経教育の際にきちんと伝えられるべきだが、現状、小学校で行われる初経教育の内容は、学校ごとに異なり、十分でないところも多い。

 ところで、「生理は病気じゃない」というセリフは、「お産は病気じゃない」といって妊産婦にあらゆる忍従を強いる発想と似ている。生理もお産も、病気ではなくても辛い場面は多々ある。精神論ですべてが乗り越えられるほど、世の中単純ではない。

田中ひかる

1970年東京生まれ。著書に『月経と犯罪 女性犯罪論の真偽を問う』(批評社)、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)、『生理用品の社会史 タブーから一大ビジネスへ』(ミネルヴァ書房)、『「毒婦」 和歌山カレー事件20年目の真実』(ビジネス社)など。

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